魔獣に冒されたホラー・ドーパントが吼える。
「っち……!」
荒れ狂う具現化した暴力に、懐に近づけず、荘吉が歯噛みする。
手にしたスカルマグナムのトリガーを引けば、ヴィジョンは一時的に動きを止めるが、矢継ぎ早に繰り出される猛攻の前には気休めにもならない。
「このままじゃジリ貧か……」
跳び上がってヴィジョンの攻撃を避けるスカル。が、着地した刹那を狙い生臭い息を撒き散らしながら怪物のヴィジョンが飛び込んできた。
「っ!」
すぐに回避行動が取れず、スカルの身体が一瞬硬直する。
「探偵、これを使え!」
と、背後から声と共に銀色の軌跡が空を裂いた。鈍い音がヴィジョンの頭を貫き、消し飛ばす。
「はあっ!」
突き抜けて壁に刺さったそれ……魔戒剣を手に取る。一瞬重みを感じたが、すぐにそれはなくなり、手に吸い付くようになじんだのをスカルは理解する。
裂帛の気合とともに振るうと、わらわらと群がるヴィジョンが文字通り一層された。
『思ったとおりだな。あのヴィジョンはホラーの力で実体を得ている。魔戒剣なら十二分に対処可能だ』
カチカチと歯を鳴らして、ザルバが得意げに口を開いた。
「いい剣だな」
「だろう?」
助かった、と魔戒剣を返すスカル。いいのか? と問いかける大河に、スカルはベルトから自分のガイアメモリを引き抜いて見せる。
「俺にはこれがあるからな」
視線を改めてドーパントに向ける。スカルの胸部、肋骨を模したブレードが展開し、そこから髑髏型のエネルギーの塊が発生する。
「……喰らいつけ」
「……!」
これでどうだ、と気を緩めたドーパント。
が、次の瞬間一斉にヴィジョンが消え去る。
「!?」
予期せず戻った視界が最後に捉えたのは……
-SKULL MAXIMUM=DRIVE-
「これで決まりだ」
スカルトリガーを撃ち放つ髑髏の仮面ライダーと、銃撃に押し出されこちらに向かう髑髏の顔であった。
*
「さて……」
倒れた怪人からガイアメモリが輩出され、砕け散る。
男は気を失っているものの、命に別状はないようだった。
(向こうのガイアメモリも改良されているってことか……)
それがいいことなのか悪いことなのか、とっさには判断できず、スカル……荘吉は小さくため息をついた。
「ともかく、こいつを警察に……」
『おい探偵、そこから早く離れろ!』
男を抱えたとたん、声が飛ぶ。と、背後から妙な寒気を感じる。
振り返ると、砕けたはずのガイアメモリが元の姿を取り戻していた。
「なんだ? メモリブレイクはしたはずだぞ……?」
眼前で砕けたのを確認している荘吉は怪訝に眉根を寄せる。
と、ガイアメモリから急激なエネルギーの奔流が噴出し、スカルの身体を押し出した。
「っむ!?」
抱え上げた男を取り落とさないようにしながら、後ろに飛びのいて衝撃を逸らす。
驚愕に目を見開く荘吉の目の前で、ガイアメモリが徐々に変貌していく……
「これは……」
「……ホラーが、その正体を顕したようだな」
いつの間にか傍らにいた大河が、魔戒剣を抜き、切っ先をガイアメモリに突きつける。
「ホラー? ガイアメモリのことか?」
『違う違う。ホラーってのは、そのガイアメモリとやらに取り付いた魔獣のことさ』
訂正するザルバの声に、荘吉はようやく声の主が指輪であることに気がついた。
『なるほど……。大河、こいつは<バグロディア>だ。人間の使うモノに好んで憑依して、飼い犬が手を噛む如く人間を喰らう悪趣味なヤツだな』
おそらくはガイアメモリという特異なモノに取り付いたがゆえに、逆に取り込まれてしまったのだろう。それがメモリブレイクされたことで、ホラーが解き放たれた……といったところか。
ザルバの解説を聞きながら、大河が一歩前に出る。
「何を……」
「ここから先は俺の……<魔戒騎士>の仕事だ」
魔戒剣を天に突き上げ、円く振るう。
頭上に環状の軌跡が描かれた次の瞬間、それが閃き、スカルの視界を奪う。
「……!」
明るさに慣れた荘吉が、次に目にしたのは――
夜の闇をものともせず煌く、狼を模した金色の鎧であった。
-つづく-
20時くらいから頭痛がひどくなって、ニコ生でも醜態晒す始末(シムテックさんごめんなさい
こりゃ今日は無理かな……と思ってたんですが、晩飯後に飲んだ頭痛薬がようやく効いてきたのでこれ幸いと執筆開始。
実質執筆に1時間かかってないんですがw
集中したらこうも違うのか俺はwww
この集中力をもっと活かせればなあ……と思わないでもない。
さて、前回で大河無双始まるよーと予告した気がしますが、スカル無双が先でしたね(滝汗
今度こそ次回で大河無双です。
コレ、このまま完結まで書けそうな気がしてきた。 気がするだけだがな!