【クロスオーバー】ダブル×牙狼
「うー、寒ぃ……」 上着の襟を立てて、翔太郎が肩を震わせる。 「コートくらい着込むべきだったね翔太郎。少しは僕を見習い給えよ」 「……いや、それはさすがに着込みすぎだろ。雪だるまみてーだぞフィリップ……」 まん丸と着膨れしたフィリップをジト汗滲ませ…
雲が晴れ、丸い月が顔を出す。 廃ビルを出て、沈みかける月明かりが照らす街の中を、二つの影が歩いていた。 『やぁれやれ、厄介なホラーだったぜ』 ため息混じりに呟くのは、大河の相棒たる指輪。 「確かにな。荘吉の協力がなければ危なかったかも知れん。…
「……」 金色の鎧。その美しさと力強さに、声を失う荘吉。 それを尻目に、鎧……<牙狼>の鎧を身にまとった大河は、手にした牙狼剣を振るい、構える。 左手に添えられた刀身に、魔道輪ザルバが噛み付き、火花が走った。 「……っ!」 一息に跳ぶ。 振り下ろした…
魔獣に冒されたホラー・ドーパントが吼える。 ドーパントの周辺の空気が歪み、古今東西のバケモノと呼ばれる異形のヴィジョンが飛び出し、スカルを襲う。 「っち……!」 荒れ狂う具現化した暴力に、懐に近づけず、荘吉が歯噛みする。 手にしたスカルマグナム…
月すらも霞む曇り夜空の中。 果たして大河とザルバは、例の廃ビルの前にやって来ていた。 『間違いないぜ。邪悪な気配を感じる』 「うむ……」 ザルバのいう魔獣の気配とは別に、人の気配を感じ、大河は怪訝に眉をひそめる。 ホラーが<餌>に捕まえているのだ…
「いい感じの事務所だな。愛着を持っているのが伝わってくる」 「そいつはどうも」 自らを<冴島大河>と名乗った男は、荘吉が淹れたコーヒーを一口啜ったのち、重々しく口を開いた。 「ガイアメモリというものを知っているか」 その単語に、荘吉は軽く眩暈…
「確かに<ホラー>のメモリだったのね?」 翌日。 探偵事務所に併設されたガレージで作業をしているマスクとサングラスで顔を隠した女……<シュラウド>と名乗る……に事情を説明した荘吉は、ガイアメモリの専門家たる彼女の意見を伺った。 「それなら、私が手…
それは、冬にしては妙に生暖かな……否、生ぬるい風の吹く日であった。 白スーツの男が一人、取り壊しの決まったとある廃ビルの中を歩く。 綺麗に磨かれた革靴から響く足音のみがこだまする中、男は自分以外に<誰か>が居ることを察し、不意に足を止めた。 「…
年の瀬。 冬の風舞うある街も、残り数刻に迫った<今年>という時間に追われながら、人々が忙しく駆け回っていた。 それは、こちらの探偵事務所も例外ではないようで―― ・ ・ ・ 「ぶぇっくしょいっっ!!」 盛大なくしゃみが響き、床を這っていた埃が舞う。…