炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【オリジナル】BULLETS-バレッツ-(前編)【HEROES ASSEMBLE!】

 上下合わせて6車線の幅広い道路を埋め尽くすように、爆音を喚き散らしながら、二輪車の群れがひしめき合う。 

 近年では“珍走団”とも揶揄される若者たち……いわゆる“暴走族”が、その内に鬱屈した何かを吐き出すかのようにエンジンに負けじと吼え猛る。 

「おーおー、集まってる集まってる」 
「無線情報じゃ、関東一円の“マルソウ”が大集結って話だが……まぁ、あながち誤報でもなさそうだ」 

 目を血走らせる暴走族の群れに、立ちはだかるようにして二人の男が佇む。 

「狙いは……まぁ間違いなく」 
「ここ、だわな」 

 そう呟いて二人が背後に視線を向ける。聳え立つのは、日本の法の番人、警察庁を擁する中央合同庁舎第2号館である。 
 彼らが身にまとうのは、その警察であることを示す制服である。 

「……ふむ?」 

 と、片割れのオールバックの男が視線の先に違和感をとらえた。心身ともにヒートアップしてきたのか、やおら特攻服を脱ぎ棄てる暴走族たちの腕に、まがまがしい模様のタトゥが浮かんでいた。 

「ビンゴだな。<デモンズ・タトゥ>だ」 
「あー、そういや今日日曜だっけか……」 

 “相棒”の指摘に、もう一人の男が苦い顔をした。 


 ――デモンズ・タトゥ。 

 ここ最近、アンダーグラウンドを中心に若者の間で流行っているとされるファッションタトゥだ。 
 曰く、身体能力の向上や、強烈なまでの高揚感を得られるなどという触れ込みがネット内で散見されるが、実際にそのタトゥを入れたという人物の声が一切聞かれないことから、一種の都市伝説のような扱いになっていて、マスコミも話題に出すことは少ない。 

 しかし、事実としてそれは存在する。 
 割と……いや、かなり厄介な事案として。 

 そのタトゥを入れたものは、日曜日になると途端に狂暴化する。その現場を目の当たりにした目撃者は「まるで重度の薬物常用者のような眼をしていた」とのちに語っている。 

 警察は“日曜日”という共通項から、昨今巷を騒がせる謎の組織<Messenger From Sunday>の関与を疑い、捜査に取り掛かっていた。 

「……で、しっぽをつかまれそうになったからあわてて警察にカチコミと。短絡的と言うかなんというか」 
「まぁ、おかげでMFSとの関連性に関しては限りなくクロに近いってのはわかったがな」 

 となれば。とオールバックが呟き、懐のガンベルトからすっと黒光りする塊を取り出す。短髪もそれに倣い、右手に力を込めた。 

「さて、そんじゃまぁ……始めましょうか」 

 短髪の男が握るは、S&Wが生んだ名銃・M29。 
 オールバックの手の中には、IMIの傑作・デザートイーグル。 


   ――Fire. 


 二人が口の中で小さくつぶやき、トリガーを引く。 


 刹那、雷管に撃鉄が叩き込まれ、強烈な破裂音が手の中で爆ぜる。 
 火薬に点火した炎は、一気に燃え盛り、先端の弾丸を勢いよく射出させる。 

 しかし、解き放たれた弾丸の行く先……銃口は、二人の持つ銃には存在しない。 


   -awakening- 


 発射時の反動と、銃身内を突き抜ける弾丸のエネルギーが飽和し、吹き上がる。二人が身に着けている制服の下にある、特殊なインナースーツが、その衝撃を感知し、システムを起動させる。行き場を失ったはずのエネルギーが、インナースーツに結びついた瞬間、それは形を変え、二人の姿を“変える”。 


「「さぁ――」」 


 「ヒーロータイムだ!」 
 「おしおきタイムだ……」 


 二人の声が、中途半端に重なり、ズレた。  





     BULLETS-バレッツ- 







 オリジナルヒーローものでひとつ。 

 いつもだと変身させて終わるんですが、今回はちゃんと戦闘描写もやりたかったので前後編に。 


 モチーフは、以前mixiボイス及びツイッターでボヤいてた「一発の弾丸」。 
 今回のヤラレ役(ひでえ)は、主人公サイドが警官ということもあって暴走族のみなさん。 

 ただそれだけだとヒーローの存在に理由が付かないので<デモンズ・タトゥ>なる小道具を執筆中に不意に思いついてねじ込む。 
 まぁ元ネタあるんですがね。「ライオン丸G」に出てきた“スカルアイ”って特殊なコンタクトレンズがそれ。