炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【なのは】NOVELS大戦VIVIDNESS/プロローグ:2【ウィザード】

 ――時は少しさかのぼる。 

 アンティークショップ<面影堂>に、いつもの仲間たちが集い、談笑に興じていた。 

「おーい、新しいの出来たぞ~」 

 奥の工房からのんびりとした声が転がり、面影堂の店主にして指輪職人の輪島が姿を現した。

「お、どれどれ……」 

 輪島から指輪を受け取る青年が、それをみて怪訝に眉根をひそめた。 

「おっちゃん、これ<コネクト>のリングじゃん」 

 そう言って青年……<操真 晴人>が自分のポケットから指輪……<ウィザードリング>を取り出してみた。 

「んー……あ、ほんとだ。そっくりですよコレ」 

 晴人に同調してうなづくのは、彼の自称“助手”である<奈良 瞬平>だ。一見すると、同じ指輪が二つ並んでいる。 

「いやいや、よく見てくれよ……ほらここ、微妙にカッティングが違うだろう?」 

 そう言いながら、輪島が小指でリングのふちを指し示す。なるほど言われてみれば晴人の所持しているコネクトのリングと違う部分ではあるが。 

「いやいやいや、これ誤差の範疇じゃない? 別にいいじゃない。同じ指輪があったって困るもんじゃないし」 

 指輪の差異を覗き込んで観察していた女性……刑事である<大門 凜子>がお茶をずず……とすすりながら言う。 
 事実、凜子と瞬平の指に光るリングは同じ<エンゲージ>のウィザードリングだ。 

「……私は、違うと……思う、かな?」 

 と、ここで輪島の味方が現われる。晴人と同じく面影堂の居候である少女<コヨミ>だ。 

「おお、わかるか。そうだろうそうだろう」 
「なにか……いやな感じが、するし」 

 少々特異な体質である彼女。いつぞやの<フレイムドラゴン>のリングの一件の際にも同じようなことを言われたことがあるのを思い出し、晴人はおっかなびっくり、“もうひとつのコネクトリング”をつまみ上げた。 

「まぁ、同じかどうかは使ってみればわかるだろう。ほれ」 

 そんなコヨミと晴人の心情を知ってか知らずか、輪島が軽い口調で促す。 

「だな。まぁこないだみたいなことにはそうそうならないと思うし……」 

 晴人も賛成し、リングを右手の中指に収め、掌の形を模したベルトのバックルにかざした。 


  -CONEECT PLEASE- 

 魔力を帯びた音声が、リングという名のフィルターを通した、晴人の魔法を名づける。 

 春人が宙に掌をかかげると、リングを中心に赤い魔法陣が浮かびあがった。 

「やっぱ、完全にコネクトのリングだな……っと」 

 ひょい、と魔法陣の“中”に自分の手を突っ込む。 

 元来<コネクト>の魔法は、魔法陣を介し、別の空間を“つなぐ”ものである。 
 遠く離れた場所においてある物などを取り出す時に活用しているのだ。 

「……ん?」 
「どうしたんですか?」 

 と、晴人の顔に疑問の色が宿る。 

「いや、そこのドーナツ取ろうと思ったんだけどな?」 

 視線を向ける先には、テーブルの上におかれたドーナツの紙袋。空間をつなぐ先は、使用者である晴人の意思で自在に変えることができるはずである。 

「っかしいな……」 

 物は試し、ともともと持っていたコネクトのリングを嵌め直し、バックルにかざす。現われた魔法陣に手を突っ込むと、今度はちゃんとテーブルのそばにも魔方陣が現われ、春人の手が紙袋をしっかりとつかんでいた。 

「う~ん……。おっちゃん、これ不良品なんじゃない?」 
「失敬な。俺が作ったものに不良品なんぞないっ」 

 晴人の物言いに、輪島が憮然と腕組みをした。 

「……ふむ」 

  -CONNECT PLEASE- 

 もういちど“もうひとつのコネクトリング”を発動させ、眼前に魔法陣を呼び出す。 

「晴人……何する気?」 
「ん、“向こう側”をちょっと見てみるわ」 

 しれっと言う晴人に、面影堂の空気が凍りつく。 

「ちょ、危なくないんですか!? 何があるかわからないでしょう!?」 
「だーいじょーぶだよ。手ェ突っ込んだって何もなかったんだ。頭突っ込んだからっていきなり死にはしないさ」 
「それはそうかもしれないけど……」 

 心配そうな面持ちの面々に、晴人は努めて明るく笑って見せる。 

「ちょっと確認するだけだって。危ないと思ったらとっとと引っ込むさ」 

 そう言って、晴人はおもむろに頭を魔法陣に突っ込んだ。 

「……ものすごいシュールな光景ね、コレ」 

 首から上が魔法陣に飲み込まれ、ややへっぴり腰になってる晴人の姿にそうつぶやく凜子。 
 即座にその場にいた全員がうなづいた。 

「……!」 

 と、急に晴人の身体がビクン、と痙攣し、やがて動かなくなった。 

「何!?」 
「ちょっ、晴人さ~ん!!!」 

 突如降ってわいた修羅場に、にわかにあわただしくなる面影堂であった。 



   -つづく- 




 

 プロローグ1と2のラストシーンがほぼ同時間軸ですよー、という言い訳(ぇ 

 「マジレンジャー」とのコラボの場合は「スーパーヒーロー大戦」のこともあって同世界観でできるんですが、「なのは」はそうもいかんので(そも「なのはVIVID」の舞台ミッドチルダやし)、理由付けにオリジナルウィザードリング唐突に登場。 

 その正体は終盤くらいでテキトーに解説します(マテ 

※2013年4月19日mixi日記初出