閑静な住宅街に、黒山の人だかりが出現する。
しかし、行きかうものたちは誰も彼も、ヒトの姿を成してはいない。
「ダスタードに……ゾディアーツまで。よくもコレだけの数が集まったものだ」
一人だけ、同じく黒衣ながら佇まいを意にする者が群れを一瞥し、呟く。
“彼”の言う<ゾディアーツ>……星座を象った怪人たちが、一斉に視線を向ける。その双眸に、光の代わりに宿すものは、目の前の存在への、限りない害意。
最初に飛び出したのは、忍装束……星屑の尖兵たちだ。刀を振りかざし、数体の<ダスタード>が斬りかかる。
「ホアチャァッ!」
喉から迸る怪鳥音。後ろ回し蹴りの軌跡が、ひと薙ぎに雑兵を払いのけた。
次いで飛び込むゾディアーツ。赤い体躯に三ツ星が煌く、オリオンを模した巨漢が突き出す拳を、しかし男は苦もなく躱し、懐に飛び込むと、静かに拳を打つ。いわゆる“ワン・イン・パンチ”で強烈な寸勁を叩き込むと、オリオン・ゾディアーツの巨体は遥か後ろへと吹っ飛ばされた。
「なるほど。確かに“異変”だな」
男が呟く間にも、ダスタードもゾディアーツも休み無く襲い掛かる。それら全てを咆哮とともに功夫を以っていなす彼の、おろしたての黒いスーツは僅かにも乱れてはいない。
「日本でもこれだけのゾディアーツを相手にしたことは無かったが……」
スッ――と、彼の手に“天球”が握られる。
「まずはその原因、突き止めさせてもらおう。……お前たちを倒してなッ!」
天球を腰に当てると、それは固定され、“ベルト”となった。
-METEOR READY?-
ベルトの起動レバーを入れた瞬間、軽快な電子音声と、ガイダンスメロディが響く。
「<M-BUS>、変身認証」
男の声に、遥か上空……宇宙空間に存在する銀色の人工衛星が変形し、その先端を男へと向けた。
その下で男は、静かな呼吸とともに腕を回し――その様は大輪の花が如く――構える。
「変身!」
振り下ろした右手がもう一つのレバーに叩き込まれた刹那、天球が輝きを増す。人工衛星の“砲口”が神秘のエネルギーを照射し、男は二つの輝きに照らされる中――その“姿”を“変”えるのだ。
星の怪人どもが狼狽する。今度は彼が連中を“仮面”越しに睨み付けた。
「仮面ライダーメテオ――」
親指で鼻を擦り、男は……否、<仮面ライダーメテオ>は高らかに宣言する。
「お前の運命-さだめ-は、俺が決める」
ベルトに備え付けられた“スイッチ”が、星座の輝きをかき消すように、陽光に煌いた。
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――Space.
The world of a mystery where the infinite COSMIC_ENERGY was hidden.
Young men open the door with a ASTRO_SWITCH, and make the future.
“Space on your hand”
Hold the Space by the hand!
仮面ライダーフォーゼ・スピンオフ
仮面ライダーメテオ/KAMEN_RIDER_METEOR -星の心は大輪の如く-
特撮・非公式スピンオフシリーズ(世間的にはそれをスピンアウトと言うらしいが)・第2弾!
というわけで、今回は仮面ライダーフォーゼより、メテオこと朔田流星をフィーチャー。
テレビシリーズ終了後(一応小説版「天・高・卒・業」も踏まえたうえで)~「MOVIE大戦アルティメイタム・フォーゼ編」の間のエピソードとなっております。
さて、今回のサブタイトル「星の心は大輪の如く」
今回はフォーゼのサブタイルールに基づくことはあえて止めてみました。
フォーマットに従うと「星・心・大・輪」になるんでしょうけどねぇ。これでも十分イケそうな気はするんですが、僕の中ではフォーゼのサブタイのつけ方はフォーゼ即ち「如月弦太朗の物語」であることを示してるんじゃないかなと。
なので、今回の主役である流星にはこのフォーマットは似合わないと判断し、廃しました。
OPナレーションを英語にしているのもその一環ですね。
フォーゼじゃないよ、メテオの、流星の物語だよというアピールみたいなもんです。
じゃあなんで闇照スピンオフはそのままかと申しますと……うーん、うまく説明しづらい(汗
まぁそれに関しては次回の「ZEN」更新時にでも。
本作の設定は、次回以降にちょこちょこと語らせていただきますので、本編ともども、どうぞお楽しみに。