炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【フォーゼSS】仮面ライダーメテオ/シーン1【スピンオフ】

 ――これが、これまでの「仮面ライダーメテオ」――


 仮面ライダーメテオ=<朔田流星>は、かつて<反ゾディアーツ同盟>とよばれる組織に属していたエージェントであった。

 その正体は誰にも知られてはならず、そして流星自身の目的もあり、同じくゾディアーツと戦う<仮面ライダー部>の面々との間には、しばしば衝突もあった。

 しかし、ある一人の男が、頑なであった流星の心を解きほぐした。

 新たな友人となった彼……仮面ライダーフォーゼこと<如月弦太朗>。そして、その友人たち……流星自身も含んだ……<仮面ライダー部>ともに、流星は青春と戦いを駆け抜けていく。

 そして、高校を卒業し、それぞれの道を歩む仲間たち同様に、彼もまた、次の道へと向かう。

 International Criminal Police Organization……通称ICPO、インターポールとも呼ばれる、国際刑事警察機構の捜査員。それが、今の彼の肩書きである。

 ゾディアーツとの戦いのみならず、地球全土を震撼させた「宇宙鉄人事件」を解決に導いた立役者としてその能力を見初められ、弦太朗ともどもスカウトを受けたのだ。

 結局、弦太朗は教師への道を選んだので、並び立って戦うということは出来なくなってしまったのだが。

 彼の任務は、フォーゼやメテオ、ゾディアーツの使うスイッチの力の源である、<コズミックエナジー>を初めとした、超エネルギーにまつわる事件の調査などが主だったものだ。戦闘などは考慮されてはいない。彼が仮面ライダーであることは、インターポールも知らない重要機密なのだ。

 そんな彼の捜査官としての拠点は、インターポール本部を擁するフランスのとあるラボにあった――

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「どうだ、健吾?」
『ああ、マテリアライズまでは完璧に成功しているな。ただ……』
「そうなんだ。起動までには至らない」

 手の中のスイッチを遊ばせながら、流星がため息混じりに呟く。モニター越しの青年……<歌星健吾>は、送られてきたデータを解析しつつ、見解を述べた。

『調整にも問題は無い。恐らく、起動に至るまでのコズミックエナジー不足だな』
「やはりそうか……」

 事の発端は、M-BUSから発見された、新たなアストロスイッチの設計図である。
 M-BUSとは、Meteor Back Up Satelliteの略称であり、メテオのシステム全体の根幹を成す人工衛星である。
 メテオの変身に必要な変身認証やコズミックエナジーの照射を主に担う他、反ゾディアーツ同盟のリーダー・タチバナこと<江本州輝>の秘密基地も兼ねていた。

タチバナ……いや、江本さんの遺産だ。なんとか形にしたいんだがな……』
「やはりフランスの<ザ・ホール>では限界があるか……」

 コズミックエナジーは絶えず宇宙から降り注いでいるが、その全てが地球全土降り注ぐわけではない。特定の場所に存在する穴のような一種のパワースポット……即ち<ザ・ホール>からのみ、その恩恵を得られることが出来るのだ。
 日本においては、健吾たちが通っていた天ノ川学園都市上空がそうであり、今流星がいるフランスのザ・ホールの降下地点には、専用の研究機関が設けられ、彼はその一室を借りて研究をしている。しかし、フランスのザ・ホールは日本のそれに比べ遥かに規模が小さく、日本と同様の研究が出来るとまではいかない。
 健吾の所属している宇宙京都大学も、かつてはザ・ホールの下にあったが、とある事件がきっかけで京都のザ・ホールが消失してからは、コズミックエナジーを要する研究のため、健吾はしばしば天高へと赴いていた。

『いや、それが原因でもないだろう。仮に、M-BUSからのコズミックエナジーの直接照射でも恐らく足りないぞ』
「本当か?」
『ああ、このスイッチ、キャパシティがとんでもない。それだけに高いポテンシャルを秘めているのは想像がつくんだが……』

 今度日本に持ってくることを提案し、それを受け入れた流星に、ふと健吾が話題を変える。

『ところで、最近……野座間へのメールの返信がおざなりらしいな?』

 わざわざ俺に愚痴ってきたぞ。と苦笑交じりにそう言うと、流星も苦い笑みを浮かべて誤魔化す。

「おざなりって……これでも考えて送ってるつもりだぞ?」
『文字数が少なくてそっけないとさ。まぁ、俺もユウキへのメールがそんな感じだから、あまり人のことは言えないんだがな』

 そう呟く健吾の視線の先には、宇宙服のヘルメットを抱えて笑う少女の写真があった。仮面ライダー部2代目部長にして、健吾の友人……いや、今は“恋人”である<城島ユウキ>は、宇宙飛行士を目指すべく、遠くNASAにて訓練の最中にいた。
 一方、彼の口に上った名前……<野座間友子>も、同じく仮面ライダー部の一員である。一学年下の彼女は、弦太朗たちが卒業後は3代目の部長として仲間を率いてきた。
 彼女と流星は、厳密には交際しているとも言いがたい関係ではあったが、互いに憎からず思っているのは自他共に認めるところである。
 健吾と友子。共に想い人が海を隔てた先にいると言う共通点を持つ二人は、そういった情報を共有することも多くなっているようだ。

「……そういえば、弦太朗は最近どうだ? 連絡のつかなさで言えば、今はあいつの方がそうだろう?」

 露骨に話題を転換させた流星に、再び苦笑する健吾である。

『時々頭から煙吹いてる。まぁ、あの成績でいきなり教師目指そうって言うんだから、しかたないだろうがな』

 当人たちに言わせれば“奇跡的に”、健吾と同じ宇宙京大に受かった弦太朗は、卒業式当日に掴んだ夢……教師を目指し、勉強に邁進している……はずである。卒業直後こそちょくちょく連絡を取り合っていたが、ここ1年くらいは音沙汰なしだ。便りが無いのは良い便り、という言葉こそあるが、やはり親友のことである。健吾も流星も心配は心配なのだ。

『たまに大学から姿を消すんだが、多分園田先生のところで勉強を教えてもらってるんだろう。ずいぶんと仲良くなったもんだ』
「ふうん……弦太朗にも遅い春かな?」

 ただ、移動手段にフォーゼ・コズミックステイツのワープドライブを利用するのは勘弁してほしい。と健吾が渋面を浮かべ、流星が吹き出した。

「まぁ、元気にしてるならそれでいいさ。……っと」

 不意に、ラボの電話がベルを鳴らす。健吾に断りを入れて受話器をとると、流星の表情はすぐさまエージェントのそれへと変わった。

「……Oui, monsieur」

 幾度かのやり取りの後、了解の意を告げると、流星は受話器を下ろした。

『任務か?』
「ああ。新型スイッチの製作の続きはまた今度だな」
 その新型スイッチを懐に滑り込ませ、流星が手早く支度を整える。
『どこへ行くん……ああいや、機密だったな』
「いや、構わないさ」

 本部には健吾のことを、コズミックエナジー関連のブレーンとして報告している。協力者であれば、ある程度は機密も緩むのだ。

「……アリシア連邦。そこで、<ザ・ホール>の不自然な活性化が観測されたらしい」
『なんだって?』
「勿論、コズミックエナジーの急激な流入もだ。外的な要因である可能性が高い」

 厄介な事件になりそうだな。

 そう呟いて、流星はラボを後にする。
 残されたモニタ越しの健吾が、『アリシア連邦……確か……』と、かつての事件を思い出しながら通信を切った。


   -つづく-




 一応、時系列としては卒業から1年ちょい。友子とJKが卒業して少し後くらいを想定しています。

 でも言及があるのは基本同級生組。友子だけ例外。

 ところで宇宙京大に教育学部ってあるんですかね?
 恐らく元ネタであろう京都大学には、教育学部があるので恐らくは、とも思うのですが。多分宇宙研究に特化したのは後々になってからで、それ以前からある学部とかもちゃんとあるよ、とか。

 まぁ、ゲンちゃんの場合、健吾とユウキと一緒に受けてるので、同じ宇宙学部(宇宙物理学部?)を受験してると思うんですが……まあいいか。細かいことだ(マテ

 さてさてさて。
 前回のシーンからいきなり場面転換していますが、コレは自分が多用する展開の一つ「ことの起こりは数日前」的なアトモスフィアです(何

 ただ、闇照スピンオフ「ZEN」でもコレつかってるので、流石に連続するのはマズ……いとまでは言わんにしても、なんか悔しいので手法を変えてみようと思い立ったのが、

 「テレビシリーズのアバンタイトルナレーション」風。

 プロローグにいたるまでのあらすじをシーン1を使って(厳密にはプロローグ冒頭のシーンに行き着くまでにあと1シーン使いますが)、といった体です。

 うまくいったればご喝采ってね。

 さて次回。アリシア連邦に到着した流星を待つものとは……? 青春スイッチ・オン!