炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【フォーゼSS】仮面ライダーメテオ/シーン4【スピンオフ】

 拳が、蹴りが、互いにぶつかり合う。

 星心大輪拳らしきジークンドーを繰り出す黒いメテオのシルエットは、腰のドライバーを含め、その全てが流星の変身したメテオとは左右対称であった。

「まるで……合わせ鏡ね」

 その体裁きすら流星と鏡写しで、インガは人知れずそう呟く。流星の動きをもれなくトレースでもしているかのように漆黒のメテオ……便宜上、仮に<メテオ・Я(リバース)>としよう……は流星の攻撃を的確に阻み、決定打を与えさせない。

(……やりづらい)

 まるで自分自身と戦っているようだ、と流星が感じる。星心大輪拳の使い手と戦うこと自体は組み手を含め珍しいことではないが、ここまで手の内を読まれる相手は始めてであった。

(だが……)

 もしも相手が自分の動きを模しているなら、付け入る隙はある。

「ホチャアッ!」

 自分の突きに合わせ拳を向けるЯに、その拳を逸らし、フリッカージャブのように別方向からの拳を飛ばす。ようやくまともに拳が命中し、メテオ・Яが軽くよろめいた。

  -MARS READY?-
  -jupiter ready?-

 間合いが開いた隙に、メテオギャラクシーを起動する。メテオ・Яも、別のレバーをアクティブにした。

  -O.K.MARS!-
  -o.k.jupiter!-

 火星の熱撃と木星の大槌が重なり、コズミックエナジーの爆発が起こる。爆風にあおられ、二人のメテオがさらにその間合いを広げた。

「……互角、か」

 メテオシステムのスペックは勿論、身体能力もほぼ同等といえた。あとはスタミナの問題か……と思考する流星の前で、メテオ・Яは構えを解き、低く哂った。

「確かに互角だ……だけど、そうなら……ボクの方が、強いよ」

 すっ……とメテオ・Яの右手が一つの“スイッチ”を取り出す。

「それは……!」

 その形状には見覚えがあった。今まさに、流星本人がポケットの中に忍ばせている未完成のスイッチと同じものだ。
 驚く流星を尻目に、メテオ・Яがドライバーのスイッチスロットにそれを装填し、スイッチをオンにする。


  -meteor_shade/meteor on ready?-



 闇色のコズミックエナジーが靄を生み出し、メテオ・Яの身体を包む。それを左手で振り払った刹那、さらに濃くなった黒色の体躯を得て、メテオ・Яの姿がさらに凶悪なものへと変貌した。

仮面ライダー……メテオシェイド。キミの運命-さだめ-は、ボクの影に消える」

 言の葉をつむいだ刹那、メテオ・Я……否、<メテオシェイド>が肉迫する。

「!?」

 疾い!? そう思考する間もなく拳の連打がメテオを襲い、打ちのめす。

「ぐっ……この!」

 弾き飛ばされながらも、メテオギャラクシーを起動し、土星の輪の斬撃を見舞う。

「遅い……!」

  -leo ready?-

 メテオシェイド同様に形状が変化したメテオギャラクシーのレバーを起動する。聞きなれない電子音声の単語に流星が戸惑う間に、指紋認証でロックを解除し、メテオシェイドが新たな力を流星に示した。

  -o.k.leo!-

 メテオシェイドの頭上と足元に無数のコズミックエナジーによる極小サイズのエネルギー球体が出現し、獲物に喰らいつく獅子の牙の如く輪の刃を噛み砕く。

「レオだと……? ホロスコープスの力を持っているのか、こいつは!?」
「次はキミを“噛み砕く”!」

 メテオシェイドが今一度獅子座の力を放つ。牙の如く迫るコズミックエナジーの流星群……言うなれば<レオ・メテオシャワー>が再び、今度はメテオめがけて口を開く。

「くっ……だが、どんな攻撃だろうとコズミックエナジーならッ!」

 流星の手にメテオストームスイッチが握られる。即座にメテオドライバーに装填し、スイッチをオンにすると、コズミックエナジーの“嵐”がメテオの全身を包む。

  -METEOR_STORM!/METEOR ON READY?-

 メテオストームに転じた流星は、スイッチに備わった風車・ストームトッパーを回す。これで襲い掛かるコズミックエナジーの牙を吸収するはずであった。

「無駄だ」
「何……ぐわあっ!?」

 発動させたはずのストームトッパーのコズミックエナジー吸収効果は、しかし不発に終わり、阻むもののない獅子の顎門(あぎと)がメテオストームの全身を噛み砕いた。メテオの姿を維持していたコズミックエナジーのマテリアライズが解け、流星の苦痛にゆがんだ素顔があらわになる。

「流星っ!?」
「邪魔はさせないよ……」

 駆けつけようとするインガの足元が抉り取られる。射手座の名を冠したレバーを起動させた<サジタリウス・メテオシャワー>が撃ち放たれていたのだ。

「ぐぅ……っ」
「へえ、立ち上がるんだ。流石にタフだね。でも……」

 次でキミの運命-さだめ-が決まる。と呟き、メテオシェイドが必殺のスイッチをオンにする。

  -o.k.sagittarius!/rimit_break!-

 弓矢を射るしぐさを真似るメテオシェイドの指先に生み出されたコズミックエナジーの鏃が、鋭くその先端を流星に向ける。

 万事休すか。
 南無三! と心の中で呟く流星。鏃の黒い輝きが頂点に達した刹那、その鏃が横から飛び込んできた閃光に触れ、爆ぜた。

「なッ……!?」
「流星!」

 突然のアクシデントに戸惑うメテオシェイドの隙を突き、インガが流星を回収する。

「二人とも、こっちだ!」

 不意に耳朶に飛び込む声に、インガが振り向くと、背広姿の男がこちらへ手招きしていた。その手には大きなブラスターガンが抱えられている。先ほどの援護射撃は彼によるものだろうか。

「貴方は……?」
「話は後だ、ともかくここを離脱するよ!」

 二人の下に駆け寄り、男が流星とインガに肩を貸す。彼が乗ってきたらしい黒いバンに二人を押し込むと、男はすばやく運転席に滑り込み、一息にアクセルを踏みつけた。

 タイヤの焦げる匂いを残し、戦場を離脱する車に、メテオシェイドは無感動にサジタリウスの鏃を向ける。が、ふっとその腕を下ろし、変身を解いた――否、解けた。

「……エネルギー切れ、か」

 沈黙した黒いメテオドライバーを外し、仮面の男がバンの走り去った方向を見やる。

「次に見(まみ)えるときが、キミの最期だ。リュウセイ・サクタ……」

 かつて流星が聞きなれたタチバナの声で、しかし彼よりはるかに冷たく、仮面の男が独りごちた。


   -つづく-




 メテオギャラクシーによる技とリミットブレイクの重ねがけとか、リミットブレイクでもないのにメテオストームスイッチにコズミックエナジー吸収をさせてみたりとか、原典でもやってないネタをちょこちょこ入れてますが、作劇優先です。公式でもよくあることです(マテ

 「リバース」に“R”ではなく“Я”(キリル文字の“ヤー”)を充てたのは、アリシア連邦をロシア方面のイメージでやっているからです。けっしてヴァンガった結果ではないです。ええないですとも(棒

 さて。
 今回登場のオリ敵、メテオ・Яならびにメテオシェイドについて。

 ○仮面ライダーメテオ・Я(リバース)
 タチバナの仮面を被った謎の男が変身した姿。「リバース」の名は文中で便宜上つけられているものであるため、劇中での呼称は流星が変身するものと同様「メテオ」であり、主に「黒いメテオ」などと呼ばれる。
 「リバース」の名の如く、そのシルエットはメテオドライバーを含め全身が鏡写しになったかのように左右反転しており、またオリジナルと異なり、肩部分の<メテオインジェクションテイル>や頭部のマスクブロック<スターフェイス>までもが黒色となっているほか、ボディに描かれている星や軌跡を表現しているラインなどもグレー系になっており、全体的にオリジナルより黒い印象をあたえる。
 見た目に反してそのスペックはオリジナルと完全に同一であり、また変身者の身体能力も流星にほぼ匹敵するものだったため、その戦闘能力は拮抗している。

 ○仮面ライダーメテオシェイド
 メテオ・Яが<メテオシェイドスイッチ>によって強化変身した形態。
 膨大なまでのエネルギー量を誇るが、リミットブレイク時の消費エネルギーも多いため、かなり燃費が悪い模様。
 メテオギャラクシーは、レバー部分が惑星から星座のマークに変化した<メテオシェイドギャラクシー>に変化し、また両腕に装備されている。
 メテオシェイドギャラクシーによる獅子座の牙<レオ・メテオシャワー>、射手座の鏃<サジタリウス・メテオシャワー>などの技を持つ。

 一応、設定上は全12星座すべての<メテオシャワー>が使用可能ですが……

 全部設定なんかしてられるかーい!(ブン投げ

 ちなみに、メテオ・Я(及びメテオシェイド)とオリジナルのメテオで電子音声の表記を変えているのは、見分けを着けやすくするのと同時に、音声の声質も違いますよーというアピール。
 まぁ、前者の理由の方がメインですけどねw

 さてさてさて。
 流星たちの危機を救った男は何者? そして、メテオを名乗る仮面の男の正体は……
 尽きぬ謎を秘めたまま、物語は加速する。とにかく待て次回ってことで!

 青春スイッチ・オン!