炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

スーパー特撮大戦200X:第3.5話/シーン1


 日本にありながら、誰もその所在を知らない場所がある。

 日本を……否、世界を、地球を守る者たち。地球防衛軍・TDF……その極東支部
 それは、富士山麓地下の秘密基地にあった。

「お呼びですか? 長官!」
「おお、キリヤマ隊長……。こんな時間に突然呼び出したりして、すまなかったね」

 恰幅のいい中年男性……TDF長官・ヤマオカの前に、直立・敬礼をする男はキリヤマ。極東支部・司令部直轄の実働部隊……通称<ウルトラ警備隊>の隊長を務めている。

「いえ……それよりも、何か事件ですか?」
「うむ。キリヤマ隊長、よく聞いてくれたまえ」

 キリヤマの問いに応えたのは、ウルトラ警備隊の参謀を務めるマナベだ。

「実は、ウルトラ警備隊の諸君には、新たな任務に就いてもらいたいのだ」
「新たな任務……ですか?」

 鸚鵡返しのキリヤマに、今度はマナベと同じく参謀職にあるヤナガワが頷く。

「そうだ。先日のショッカーとかいう組織に加え、最近では新人類帝国なるものたちが暗躍し始めたそうじゃないか……」
「困るんだよ……そんな連中をのさばらせていては!」

 ヤナガワに続いてカタコト交じりに苦言を呈するのは、ワシントン支部から出向してきたボガード参謀である。

「はぁ……。しかし、我々は地球外生命体であるということが確認されない限り……」

 そう。本来TDFは地球外生命体による侵略から地球圏を守ることを目的に結成された組織である。だからこそ、改造人間であろうがミュータントロボットであろうが、地球生まれの生命体であるショッカー、新人類帝国へは不可侵である。これは以前、本郷との対談の際に、キリヤマが彼ら長官・参謀たちから聞き及んだことなのだ。

「いや、そうも言ってられんのだよ……」

 重々しく呟いたのは、マナベと同じくウルトラ警備隊を担当するタケナカ参謀だ。曰く、各地の研究所や工場、発電所が次々にショッカー、新人類帝国に占拠されているのだと言う。
 防衛会議の結果、侵略の危機にある地域の重要施設をTDFの手で専守防衛することとなり、その任を任されることになったのが、ウルトラ警備隊の面々となったのだ。

「やってくれるかな、キリヤマ隊長?」
「はッ! キリヤマ以下、ウルトラ警備隊……ただちに、関連施設の警備にあたります!」

 参謀たちの言葉に、キリヤマが改めて敬礼をし、任務を拝命した。


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「はぁ……えんしゅう?」

 極東支部内、ウルトラ警備隊の作戦室で素っ頓狂な声がこだまする。先日蝙蝠男の意識コントロールヴィールスに感染しあやつられたフルハシ隊員だ。相棒のソガともども既に全快し、任務に戻っていた。

「こんな時間にですか?」

 問いかけるウルトラ警備隊の紅一点、友里アンヌ隊員が腕時計を見る。もう夜中と言って差し支えない時間帯だ。

「うむ……こんな時間だからできるんだ」
「そうか……真っ昼間じゃ、街中ではドンパチできませんものねえ?」

 のんびりと呟くソガに、アンヌが「夜だって寝ている人が大勢いるわ」と指摘する。

「そ、そうですよ! 演習はまた今度にしましょう。ね、隊長!」
「いや、そうはいかん。実は……」

 上層部からの決定を伝えようと、キリヤマが口を開いたところで、作戦室の自動ドアが訪問者の存在を告げた。

 靴の足音も凛々しく、作戦室に入ってきたのは、迷彩服に身を包んだ若い女性であった。

「キリヤマ隊長、遅くなりました」

 艶やかな長い黒髪が翻り、綺麗な敬礼を見せる彼女に、キリヤマ隊長が頷く。

「ちょうど良かった、紹介しよう。彼女は、地球防衛軍警備班の班長を務める、キタクラ・マヤさんだ!」
「キタクラです。地球防衛軍から、本日の演習に参加するよう指示されて来ました」

 その言葉に、フルハシが再び目を丸くした。

「なんだって!? 演習に参加? 俺たちと一緒に?」
「そうだ。我々ウルトラ警備隊は、特別任務を受けたとはいえ、地球外生命体の侵略の際には真っ先に行動しなければならない」

 TDFの本来の目的が地球外生命体からの地球防衛である以上、優先順位はおのずとそう設定せざるを得ない。そんな時、彼らに代わり関連施設の警護にあたるチームが、上層部によって新たに組織された。それが、彼女ら警備班というわけである。

「アンヌです。よろしく、キタクラさん」

 同じく女性であるアンヌが、キタクラに握手を求め、彼女もそれに応えた。と、作戦室に通信が入る。受け取ったアマギ隊員が、その内容を伝えた。

「隊長、警備班から通信です。『現在、演習予定地区に到着。指示があるまで待機中』とのことです」
「よし、我々も出動しよう。ただし……敵のいない演習だからと言って、気を抜かないように!」

 キリヤマの檄が飛び、隊員が一斉に了解の意を示した。



   -つづく-




 ゲーム中で重要なファクターである「工場」「研究所」「発電所
 これらはマップ開始時点では原則占拠状態にあり、これをウルトラ警備隊や科学特捜隊、そしてゲームオリジナルの警備班という、通称「緑ユニット(ゲーム中で緑色のアイコンで表示されるため)」がそれぞれ到達することで「制圧」することになり、以降、それぞれの施設が使用可能になる、という流れになっています。

 これが、一体何の役に立つのかといいますと、ゲーム中に登場する強化パーツや、戦闘機・戦車ユニットの研究開発・生産は、これらの施設を使わないと手に入らないので、これを使わないと最悪ゲームが詰みます(ぇ
 一応、インターミッション画面でもこれらの作業はできますが、一定ターン数を要するのでマップ上で生産したほうがお得なのです。

 このシナリオは、緑ユニットの初登場話であり、彼らの運用のチュートリアルもかねたマップとなっております。

 さてさて。
 その緑ユニットのオリジナル勢である「警備班」のリーダー・キタクラ。
 この名前に見覚えがある方は、とりあえず覚えて置いてください。見覚えがない方は、プロローグ読み直していただけるとティン!と来るやも。

 彼女も物語の重要なファクターの一人、ということで、今後の彼女の活躍にもご注目いただければ。