炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

スーパー特撮大戦200X:第3.5話/シーン2

 夜の街に、物々しい雰囲気が漂う。迷彩服を纏った男たちと、グレーの制服のウルトラ警備隊が合流し、ただでさえ涼しげな空気がさらに張り詰める。
 警備班は、キタクラ以下カツベ、ヒラタ、オオムラ、ヤナギヤの計5名で構成されている。ウルトラ警備隊の面々を合わせると総勢10名だ。少なくも思えるが、警備班もウルトラ警備隊も苛烈な訓練を乗り切ったエキスパートたちである。少数精鋭だな、とフルハシがにんまりと笑った。

「よし、あれを見てくれ。今回の演習の目的地となる研究所だ」

 演習の音頭を執ることとなったキリヤマが指し示した方角に、高層ビル街の中にあってすこし低めの建物が見える。

「我々は速やかに目的地へ到達、研究所を制圧し、友里源三郎博士を救出するのだ!」

 “友里”という苗字に反応したのは、同じ名を持つアンヌだ。

「お祖父様がいらっしゃるのですか?」
「うむ……私情を挟んではいけないと思って直前まで黙っていたんだがな……」

 今回の演習には、友里博士の協力も得てのことなのだという。救出作戦の演習にはこれ以上ない人選であろう。

「友里博士といえば、宇宙航空学の権威で、生物化学でも特別博士号を持っているお方だ!」

 演習でも気は抜けない、とさっきまでの態度は何処へやら、フルハシが俄然張り切りだし、相棒のソガも、警備班には負けられないと奮起する。

「どうか、お手柔らかにお願いしますよ、フルハシ隊員、ソガ隊員?」

 キタクラがクスっ、と笑いながら言った。


   ――イーッ!

「!?」

 不意に、奇声が夜の街を劈(つんざ)く。研究所の周辺に、赤いタイツに身を包んだ男たちが現れたのだ。

「ほ~っ……ありゃ、前に俺たちが戦ったショッカーの戦闘員だ。そっくりだなぁ……なぁ、ソガ隊員?」
「ええ……演習にしてはすごい演出ですね。 なかなか本格的じゃないですか? キリヤマ隊長」

 ソガの問いかけに、キリヤマは首をかしげる

「おかしいな? こんな話は聞いていないんだが……?」

 と、比較的近くにいたショッカー戦闘員が、警備班員のカツベに飛び掛る。ナイフの先端が届こうとした刹那、咄嗟に持っていた機関銃の銃床で殴り飛ばし、事なきを得た。

「キタクラ隊長、様子が変ですよ? これはまさか……」
「本当の、敵?」

 キタクラが絶句し、アンヌは祖父の安否を思い絶叫する。

「うろたえるな諸君! 想定外の事態ではあるが、我々がやることは変わらない。総員、直ちに研究所の制圧、及び友里博士の奪還。ならびにショッカー戦闘員の排除にかかれ!」

 浮き足立つ心境を根性で押さえ込み、正義の志士たちが了解の二文字を叫んだ。


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「戦闘員の連中は改造人間だが、倒せない敵じゃない! どんどん撃て!」

 このメンツの中で、唯一戦闘員との交戦経験があるフルハシとソガが率先して戦端を開く。銃の名手であるソガがウルトラガンを連射し、飛び掛る戦闘員を泡に変えれば、ウルトラ警備隊随一の怪力の持ち主のフルハシは、強靭な腕力を以ってソガが撃ちもらした敵を打ちのめしていく。

 夜の街に、ウルトラガンによるレーザー光と、機関銃のマズルフラッシュが閃き、戦闘員が次々に倒れていった。

「ようし、今だ。警備班の諸君、研究所に突撃を!」
「了解! 警備班、突撃!」

 キリヤマの号令に、キタクラが部下と共に敵陣に突っ込む。施設内には殆ど戦闘員は残っていなかったらしく、程なく友里博士を保護したと、キタクラからの無線通信がとどいた。

「よかった……お祖父様……」

 アンヌが安堵のため息を漏らす。

「気持ちはわかるが、まだ作戦中だ。気を抜くには早いぞ、アンヌ隊員?」

 キリヤマに窘められ、アンヌが慌てて姿勢を正した。

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「大丈夫ですか、お祖父様?」
「ああ、私は大丈夫だ。心配をかけてすまなかったね、アンヌ」

 オオムラ、ヤナギヤの両班員に支えられた老紳士……友里博士が孫娘に微笑む。アンヌはかぶりを振って「お祖父様がご無事で何よりです」と目尻をぬぐった。

「ところで、キタクラ隊長は?」
「はい。まだ制圧は完了していないと、ヒラタ班員、カツベ班員と一緒に研究所に残っています」

 彼らの言によれば、研究所内は異様な量の蜘蛛の巣が張ってあったという。

「蜘蛛の巣……? 確か、本郷君が初めて戦ったショッカーの怪人が蜘蛛の改造人間だと聞いていたが……」

 いや、まさかなとキリヤマが思考を遮る。彼の報告によれば、蜘蛛男は完全に破壊されたはずだ。
 しかし、妙な胸騒ぎがキリヤマを苛む。そして、その厭な予感は、飛び込んできた無線が現実として教えてくれた。

「こっ、こちら警備班・ヒラタ! 蜘蛛の姿をした怪人が……応援を……ッ!」

 スピーカー越しに必死の声と、連続する銃声が数度響いた後、通信が途絶える。キリヤマがフルハシとソガに応援を要請しようとした刹那、研究所の窓ガラスが盛大に音を立てて砕けた。

「ウゥーッ! 見つけたぞ友里源三郎! おとなしくその頭脳を我がショッカーのために捧げるのだ……ホァッ!」

 夜の街に躍り出た蜘蛛男が、少しずつ友里博士らに近づく。オオムラとヤナギヤが友里博士とアンヌを庇うように立ちはだかり、機関銃を撃ち放った。

「ホァッ、ホアッ、ホアッ……無駄だ!」

 しかし突き刺さる銃弾は蜘蛛男の肉体をえぐるには至らず、潰れた弾丸がぽろぽろと体表から零れ落ちた。

「邪魔をする者は……全て生かしておかん!」
「待てッ!」

 腕を振り上げた蜘蛛男の顔面に、強烈な光が浴びせられる。キリヤマたちが光の出所へと視線を向けると、一台のバイクが、獲物を見つけた野獣の如くエンジンの唸りをあげていた。それにまたがる一人の青年の顔に、キリヤマは見覚えがあった。

「本郷君!?」
「トオッ!」

 タイヤの空転音がアスファルトを切り裂き、バイクが飛び上がる。風を切り裂き、その前輪が蜘蛛男を叩き転がした。

 次の瞬間、キリヤマたちの前に、スーパーバイクサイクロン号にまたがった仮面の戦士が躍り出る。

「仮面……ライダー!」

 アンヌが呼ぶその名を背中に受けて、本郷猛……仮面ライダーが戦いの構えをとった。


   -つづく-




 前回で本郷さんが出てなかった理由がこれだよ!(ぇ

 いやまあ。

 実際、「恐怖の新人類」シナリオ中では本郷さんエンドデモでしか関わってないんです(ノベライズ版でも出番があるのは終盤のみですし)。
 エンドデモ直前のマップ(攻略本上では「Act3」)では、イツツバンバラの登場後に研究所周辺に蜘蛛男が戦闘員とともに出現し、その直後に本郷も増援として登場する形になっています。
 たぶん別件でパトロールしてたんでしょうね。
 (このとき、復活した蜘蛛男に対する言及はない)

 今回のノベライズシナリオとしては、この「Act3」と、「Act2」を合成した形になっていて、実際の「Act2」のマップでは制圧演習時に現れるのはショッカー戦闘員ではなくファントム兵士となっています。ライダーを動かすのに対戦相手がミュータントロボットだとなんかアレですしねぇ。これが新人類帝国が出てせめて1話後ならクロスオーバーとしてもよかったんでしょうが、オリジン的にはイナズマン1話ですからしゃーない。

 さてさて。警備班について。
 彼らは、見もフタもない言い方すると、一種のモブに近いので、名前はあってもこれといってアイデンティティが薄く、デモやマップ中でも殆どセリフがありません。戦闘デモ中である程度のセリフはありますが、ほぼ共通と言っていいでしょう。一応、キャラクター辞典にはそれぞれに記述はありますが、パラメータによる違いを記述している程度なのであまり参考になりませんw(ひでえ

 今回登場しているカツベ、ヒラタ、オオムラ、ヤナギヤ。
 メタル編では彼らではなく、マナカ、アマモト、ウシオ、アンドウになっています。

 警備班として登場しなかった側は、後に別チームとして登場する形になります。

 ちなみに、全員名前の元ネタが特撮作品に出てくる俳優さんの名前をそのまま採用しているとのことなので、気づいた方はかなりニヤニヤできるんじゃないでしょうかw