炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

スーパー特撮大戦200X:第4話/シーン4

 滝を追って基地に潜入を果たしたタクマとサキは、一度変身を解いた。融機鋼殻をまとったままの姿は流石に悪目立ちが過ぎるのだ。

「さて……潜入したはいいが、滝にしてもゾル大佐にしても何処にいるんだか……サキ」
「了解。滝さんの生体反応を検索します」

 サキに探索を頼みつつ、基地の奥へと歩を進める。と、進行方向の先から足音が聞こえ、タクマが足を止めた。息を殺し、相手が顔を出すのを待つ。

「……!」

 死角を生み出していた曲がり角から現れたフルフェイスマスクの戦闘員の姿を見るや否や、タクマは一息に肉薄し、ハイキックを見舞う。

「ひ……っ!?」

 戦闘員が裏返ったような声を上げる。しゃがみ込んだことで強烈な足撃は命中には至らない。

「ちょっ、まっ……!」
「悪いが、眠ってもらうぜ!」
「タクマ、その人……!」

 ぴたり。と、タクマの拳が止まる。その僅か数十ミリ先で、冷や汗まみれの滝の顔が引きつった笑みを浮かべていた。

「……滝さんです」
「……見ればわかる」
「……ハ、ハハハ、ハハ……」

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「目には目を、変装には変装をってことでな……いや、しかし肝が冷えたぜ……」
「その、なんだ……すまん」

 味方である事を示すために脱ぎ捨てたマスクを拾い、滝が再び戦闘員に成りすます。

「ま、万一については心強いボディーガードさんだな。お二人さんも着替えとくか?」

 差し出された、汗臭そうな戦闘員のコスチュームを丁重に断り、彼の目的を尋ねる。

「とりあえずは作戦室だな。恐らくはゾル大佐もそこにいる。あわよくばそこでダイラカツヨシとやらの真相に迫ろうって魂胆さ」
「なるほど。それじゃあ片っ端から探すと……」
「いやいや、そいつはさすがに効率が悪いぜ。せっかく仲間入りしてくれたんなら、ここは手分けして探すとしようや」

 滝の提案に、なるほどと頷く。

「俺だってFBI捜査官の端くれだ。そうそうやられたりはしないさ」
「信じるぜ?」

 おう。と頷いた滝と別れ、タクマたちは基地内の探索を再開した。


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ゾル大佐の生体反応は掴めそうか、サキ?」
「少々困難ですね……。似たような反応がいくつか見られます。恐らくは、ゾル大佐も改造人間と思われます」
「まぁ、改造人間の世界を造ろうって組織の幹部が、生身の人間だとも思えんな」

 基地に潜入してから数分、二人は地下階を奥へ下へと進む。頭上ではライダーやヴォルテックスたちが、戦闘員相手に大立ち回りを続けているはずだ。割と堂々と基地内を歩き回っているにもかかわらず、戦闘員たちはほぼ全てが出払ってしまっているのか全く遭遇しなかった。

「……うん?」

 と、タクマがある部屋の前で足を止める。改造人間の肉片と思しきものがあたりに散らばったその部屋は、ただでさえ奇怪な雰囲気をさらに鬱々とさせた。

「! サキ、これを見ろ!」

 その部屋の中に、タクマは見覚えのある機械を見つけた。
 
「これは……細胞増殖クローニング装置?」
「ああ、それにこの溶液だ……解析を頼む」
「了解……ええ、あなたの推測どおりですね、タクマ」

 サキとタクマが巨大な機械を見やる。

「<戦闘船団国家ナガー>……奴らのマシンが何故ここに? まさか……」
「タクマ!」

 結論に至ろうとしたタクマの思考を、サキがさえぎる。彼女のセンサーが、この床の下にゾル大佐の反応をキャッチしたらしい。

「まさかすぐ下が作戦室だったとはな……」
「音声、拾います」

 音声を集めたサキが、自分たちの耳にもしっかりと届くように増幅を開始した。


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『<一文字隼人>の改造手術は未だ終わらんのかッ!?』
『はッ! 肉体改造を終了し、脳改造手術の準備を開始したところです』
『急げ! <ダイラカツヨシ作戦計画>には、改造人間一文字隼人は不可欠なのだ!』

 自動ドアの音が、科学班員らしき人物の退出を知らせた。

『では、これより……<ダイラカツヨシ作戦計画>の説明を始める!』

 ゾル大佐の声が凛と響く。

「ダイラカツヨシ作戦計画?」
「あの戦闘員のダイイングメッセージですね?」

 重要なキーワードが形を成し、タクマたちは頷き合って続きを待った。

『まず、一文字隼人に改造手術を施し……改造人間<仮面ライダー>にする。そして、本郷猛と戦わせるのだ!』

 仮面ライダーを造る。
 予測はできていたものの、いざそれが事実として敵側の口から出たことで、息を呑むタクマ。

『一文字隼人に倒された本郷猛は、我がショッカーで脳改造手術を受け、完全に我々のモノとなる。邪魔者・本郷猛が居なくなれば、日本は我がショッカーのものとなる!』

 これが、ダイラカツヨシ作戦計画である。とゾル大佐が重々しくしめくくった。

『しかし、本郷猛には仲間が居ます。そしてもし、一文字隼人が倒された場合はどうなさるのです?』

 おもむろにゾル大佐に質問をする声に、二人は聞き覚えがあった。

「滝さん!」
「いくら戦闘員に化けているとはいえ、大胆なヤツだな……」

 心配になりつつも、戦闘員に扮した滝の質問の返答を待つ。

『フフフ……我がショッカーの科学グループは優秀だ! そのようなことには……む?』

 不意にゾル大佐の得意げな声が途切れる。

『おい貴様! 戦闘員なのに何故作戦部に居る?』

 沈黙がゾル大佐のいる作戦室と、その真上のタクマたちを支配する。ややあって、滝の口から苦し紛れの一言が漏れた。

『……服を着間違えちゃって……』

「いくらなんでも無理があるだろうその言い訳はッ!」
「タクマ! 声が大きいです!」

 タクマが思わず突っ込み、すかさずサキが押し留める。

『何~っ!? たるんどるぞ貴様! たるみは許さんと言ったはずだッ!!』

 ゾル大佐の憤りが、電撃鞭の唸りと変わり、戦闘員のマスクを飛ばす。
 その下に現れたのは、彼も知る人物であった。

『くそッ……パート、パートで服まで変えてるとは気が付かなかったぜ!』
『貴様、滝!? ぬぅ……FBIの犬めッ!』

 捕らえろ! の怒号に集まった戦闘員が、滝を羽交い絞めにする。

『ううッ……くそ、離せッ!!』

 捕らわれの滝に、ゾル大佐の冷酷な殺人指示が飛ぶ。

「いかん! サキ、助けに行くぞ!」
「はい!」

 部屋を飛び出しかけた二人だったが、その前に戦闘員が数体立ちはだかる。

「イ~ッ!! 侵入者め、死ねぃっ!」
「くそっ、こんなときに……!」

 マスク姿の戦闘員を睨みつけ、タクマが歯噛みした。


   -つづく-




 基地への潜入するのを、バイオ系コンビではなく、メタル系コンビにしたのにはいくつか理由があって、そのうちの一つに「本郷と最初に遭遇していない」というのがありまして。

 メタル編もバイオ編も、1話で本郷と運命の出会いを果たすんですが、今作では両コンビが同時に出演することとなっているため、1話はバイオ系に譲った形になっているので。
 まぁその辺は小説の1話と2話を読んでもらうとして。

 まぁ、仮にメタル系1話をノベライズの参考にしても、今回潜入するのもメタルコンビになったろうなぁ。
 バイオ組だと潜入に向かない。主にランが(ひでえ

 さてさて。
 原典においては戦闘員に扮した滝がゾル大佐から<ダイラカツヨシ作戦計画>の内容を聞き出すのに成功したものの、捕まってしまい……という、まぁゲームプレイ時間からすればかなり短いです。
 それが主人公二人突っ込んだだけで2000文字オーバーするというw

 ホントは脳改造直前の一文字と本郷が遭遇するシーンまで書きたかったんですが、流石に長引きそうになったので一旦ストップ。

 そろそろ新ライスピの1・2巻読み込んどかんとな……