炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

スーパー特撮大戦200X:第4話/シーン5

「くそッ、離せ! 俺をどうしようってんだ!?」

 マスクを剥ぎ取られ、正体を明らかにされてしまった滝は、戦闘員らによって手術室へと連れ込まれていた。

「ハッハッハッ……ショッカーに忠誠を誓う改造人間にしてやる!」

 白衣に身を包んだショッカー科学班員が血走った眼光でメスを煌かせる。

「なんだと!? ふざけるな! 改造人間になどなるものか!」
「お前は未だ自分の立場が解かっていないようだな? FBIの犬としてはそれなりかもしれんが、この男に比べれば平々凡々なスペックのお前など、どうせ囮になって消される身よ!」

 科学班員の視線の先、手術台には一人の男が横たわっていた。その腰には、本郷……仮面ライダーと同じベルトが備わっていた。彼がゾル大佐が言っていた一文字だろうか?

「この男の脳改造が終わったら、今度は貴様だ! 十二分にかわいがってやる……」

 含み笑いを浮かべ、科学班員が男の額にメスをかざす。

「<一文字隼人>……スポーツ万能のフリーカメラマン。中でも柔道6段・空手5段の強者……この男を我がショッカーにふさわしい改造人間に造り変え、仮面ライダー・本郷猛と戦わせるのだ!」
「よ、よせっ! 改造人間になんかさせてたまるか!」
「フフフ……もう遅い! こいつの肉体改造は既に完了しているのだ! 脳改造を施し、ショッカーの忠実なる僕となるのが、こいつにとって最良なのだよ!!」

 と、科学班員の高らかな哂い声に、一文字が目を覚ます。強化改造された視界に、科学班員の歪んだ表情とぎらつくメスの切っ先が飛び込み、事情を飲み込みきれない一文字は恐慌した。

「うわっ……や、やめてくれ~っ!!」

 一文字の必死な叫び。しかしそれで停まるメスと科学陣ではない。迫る切っ先に一文字が思わず目を瞑った刹那、力強い声が科学班員の動きを止めた。

「待てッ!!!」

 開きかける自動ドアを蹴りで破壊し、仮面ライダーが飛び込んできたのだ。

「ライダー!? くっ……今だ!」

 突然の闖入者に滝を拘束していた戦闘員の力が緩み、その隙を突き、滝が戒めを振りほどく。そのままの勢いで科学班員に体当たりを食らわせ、メスが宙を舞った。

「滝!? 大丈夫か!」
「俺は大丈夫だ。この基地にはルシファードたちも来ているしな! それより、彼を助けるんだ!」
「彼?」

 滝が手術台を指す。意識を取り戻したばかりで未だ状況を把握できていないらしい一文字が目を白黒させていた。

「一足遅かった……。彼はもう、改造手術を受けている。だが! まだ脳改造まではされちゃいない!」
「なんだって?」

 ライダーが手術台の一文字を見る。彼の機械の眼が、すでにその肉体が人ならざるものであると見抜いた。

「くそ~っ……おい、ゾル大佐に報告しろッ!」

 激昂した科学班員と、その指示に応えた戦闘員を殴り飛ばし、本郷は一文字を再び視界に納めた。


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「あんたが……仮面ライダー……本郷猛?」

 意識を完全に取り戻し、身体を貼り付けていた戒めを自らのパワーで引きちぎった一文字が、仮面ライダーをじっと見た。

「さぁ、早く逃げるんだ。滝、彼を頼む!」
「……待ってくれ!」

 肩を貸そうとする滝を制し、一文字は、ライダーの赤い複眼に視線を合わせる。

「改造人間にされちまったこの身体のことは、もう諦めてるつもりだ……。あんたを、仮面ライダーを倒すために改造されたこの俺が、そのライダーに助けられるとは……ショッカーの連中も、当てが外れたってとこだろうよ!」

 急激に変わった身体能力の変化に、生身の脳が追いつかずよろよろと立ち上がりながら、それでも歯を食いしばって、一文字が叫ぶ。

「俺も戦うぜ、“1号”ライダー。俺は一文字隼人!」
「1号? 俺が?」
「ああ、あんたが1号さ。そして……俺はこう名乗る!」

 仮面ライダー“2号”!

 しっかりと足を踏みしめ、一文字が、そう高らかに宣言した。

「本郷!」
「おう、遅かったなお二人さん!」

 駆けつけたタクマたちに、滝が軽口交じりに声をかける。

「すまん、ちょっと立て込んでいてな」
「基地からゾル大佐の反応が消えました。基地を放棄して逃走した模様です。私たちも脱出しましょう!」

 そう言って、サキが手元のスイッチを押し込んだ。ややあって、基地のそこかしこから爆音が轟く。

「こんなこともあろうかと、探索中に小型爆弾をいくつか設置しておきました。こんな場所は、いつまでもあってはならないものです!」
「……綺麗な顔してスゴいことするねぇ……?」
「さぁ、連中も混乱している。今のうちに脱出だ!」

 崩れだす基地内を駆け抜け、戦士たちが敵の根城を脱した。


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 基地を飛び出したライダーたちの前に、軍服の男……ゾル大佐が立ちはだかる。

「この仕返しは必ずする。このゾル大佐が居る限り、日本全土がショッカーの支配に置かれるのも時間の問題よ!」

 さそり男をけしかけ、ゾル大佐が退散する。

「待てッ!」

 そのゾル大佐を、タクマとサキが融機鋼殻を着装して追う。残された1号ライダー……本郷と、一文字がさそり男を睨みつけた。

「……一文字、身体の調子はどうだ?」
「ようやくまともに動かせるようになったってとこかね? まだ慣れないけどな」

 ぐるぐると腕を回してみせる。風を切る音は、常人では出せないレベルのものだ。

「変身はできるか? バイクはないようだが……」
「ああ、問題ない。伊達にあんたよりあとに改造されて無いらしくてな……こういうことができるのさ」

 お見せしよう。

 そう言って、一文字が構えた。両の腕をぐるりと真上に掲げ、一息に胸元に下ろす。そして――叫ぶ。

「――変身ッ!」

 一定のポーズがスイッチになり、起動したベルトの風車が高速回転する。さらにジャンプした一文字が、自ら大気の流れを、風を生み出し、それは全て風車が受け止め、力と成すのだ。
 そしてその力は……一文字の姿を変えるにいたる。大自然の、飛蝗(バッタ)の力を秘めた改造人間。文明の破壊者に完全と戦いを挑む、その名は……

仮面ライダー……2号ッ!」

 突如現れた、本郷と瓜二つの姿に、さそり男は目に見えて狼狽した。

「な、なんだと!? 仮面ライダーが二人? ぬぅ……かかれッ!」

 戦闘員に指示を飛ばし、自らもとびかかる。戦闘員の猛攻をものともせず、ダブルライダーは次々に雑兵を撃破していく。巨大な爪で突きを喰らわせるさそり男には一文字が相対し、その腕をとり一息に投げ飛ばす。一歩背負いが見事に決まり、受身を取りそこなったさそり男は全身にかかる衝撃に悶絶した。

「ようし、今だ! いくぞ、一文字!」
「おう、本郷!」

 同型の改造人間だからこそ解かる、タイミングの妙。
 二人の足が同時に地を蹴り、同時に身体が宙を舞う。彼らの周りの大気が渦をなし、男たちの力と変わる。

「ライダー……」
「ダブルッ」

   キィィィィィィィィック!!!

 ライダーの代名詞。必殺の一撃が2倍の、否、それ以上の威力をもってさそり男の肉体を砕く。

「お、の、れぇぇぇ~っ!!」

 この借りは必ず返す! と呪詛を撒き散らしながら、悪意を秘めた異形が四散した。


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「お~い、みんな! 無事かあ?」
「あれ、立花さん!」

 戦いが終わった戦場に、立花がやって来た。途中で合流したらしいタクマたちも一緒だ。

ゾル大佐には逃げられてしまいました……」

 恐縮するサキに「まぁ、またの機会がありますよ」と立花が慰める。

「それで、猛は?」
「もうひとりの仮面ライダーと行ってしまいましたよ。まぁ、同じ身体になった者同士。積もる話もあるんでしょう」

 五郎がそう言って、二人が去っていった先を眺めた。

「でも、偉いなぁ二人とも。自分の命を捨ててまで、人の為に戦ってるんだもん」

 感慨深げにランが呟くと、立花はうんうんと頷く。

「自分のことばかり考えていちゃ、本当に平和で幸せな世の中にはならんからな。ワシらは、そしてお前さんたちも、そのために戦っているんだ」
「俺たちは居候の身なんだし……人一倍頑張んなきゃだな。なぁ、みんな?」

 タクマの言葉に、仲間たちは思い思いに応えた。

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 ゾル大佐の計略は失敗に終わり、仮面ライダー2号・一文字隼人が新たに仲間に加わった。
 しかし、ヒーローたちに安らぎはない。
 既に新しい悪の萌芽が、彼らの知らないところで目覚めようとしていた。

 ……否、その目覚めを、彼らだけが気づいていた。

「……あのマシン、間違いなく<ナガー>によってもたらされたものだ。……まさか、もう“ヤツら”が地球に来ているというのか……?」
「タクマ……」
「サキ、指揮衛星の感を密にしろ! それと……“ヤツら”が現れたら……」

 その言葉の先は、サキも聞かずと解かる。しかし、それを承諾するには、相手が悪すぎた。

「ですが、タクマ……」
「いいな! あいつらには……“仲間”には、迷惑はかけられん……」

 頑ななパートナーに、サキは心配そうな面持ちで彼を見て、やがて小さく首肯した。



   -次回に続く-





 ちょいと長引きましたが無事に第4話エンドマークと。

 ……うん、ゴメン。ぜんぜん参考にできなかったわ新ライスピorz

 まぁ、たぶんやったらやったでそれは「新仮面ライダーSPIRITS」の再現シナリオであって、テレビ映画「仮面ライダー」の再現シナリオじゃないよね?ってことになるから、それはそれで。

 タクマたちがナガーの存在を察知して……といったところで終わり、いよいよ本格的にナガーが……といいたいところですが。

 原作においてナガーが本格的に物語に関わってくるのは、メタル編シナリオでいう8話。
 さらにその直前の7話でギャバンが参戦することになるので実質7話からなんですが……

 そう。つまり2話ほど挟むというお預けっぷり。

 まぁ、実のところ片方はライダーメインのシナリオ(ついでに言えばゾル大佐退場イベント)なので、オリジナル勢が関わらないんですっ飛ばす予定ですw(ひでえ

 問題はこの直後。5話の「少年とロボ」。つまりジャイアントロボ登場回なんですが……

 これも相手が巨大ロボと巨大怪獣ということがあって主人公勢が全く絡めないorz

 いや、ここで絡めるのがノベライズの醍醐味なのかも知れんですが、ちょい無理w

 というわけで、今回はここもパス。
 というか、このエピ、ジャイアントロボのオリジンシナリオじゃないんですよね。
 まぁ、何かしらのカタチで絡めようとは思います。仮にも参戦作品の一つですし。

 というわけで、次回!

 新たな侵略者の出現。<宇宙犯罪組織マクー>の前に、白銀のコンバットスーツを纏う、宇宙刑事が現れる。
 しかし、彼……宇宙刑事ギャバンは、ヒーローたちとともに戦うルシファードを見るなり叫ぶのだ。
 
 「そいつは敵だ!」と。

 その言葉の真意は?そして、ルシファードは本当に敵なのか?

 次回「スーパー特撮大戦200X」
 
 第5話「チェイス宇宙刑事ギャバン」に、蒸着せよ!