炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

スーパー特撮大戦200X:第5話/シーン1

「あ、この間の事件が記事になってるね。特集だってさ」

 携帯のニュースサイトを眺めていたランが声を上げる。どれどれとエイジがのぞきこむと、以前に共闘した防衛組織<ユニコーン機関>の巨大ロボのことを伝えるものであった。

「んー、でも本郷さんたちのことは載ってないなぁ……みんなもがんばったのにねぇ」

 ぶぅ、と不満げに呟くラン。

 先日、サッカーTDF杯の試合の真っ最中に出現した巨大怪獣によって、スタジアムの選手と観客が一瞬にしてさらわれ、人質にされてしまったのだ。
 巨大怪獣を操っていたのは、地球を狙う宇宙人・ギロチン帝王率いる<BF団>。4万に及ぶ人質を盾に要求してきたものは、ユニコーン機関の虎の子たる巨大ロボ<ジャイアントロボ>の出撃凍結と、日本全土そのものであった。
 事情を察知した本郷たちは手分けして人質の捜索を開始。それを邪魔するかのように表れたショッカーと新人類帝国を相手取っている中、空を飛ぶ少年が現われたのだ。
 少年の名は<草間大作>。ユニコーン機関のエージェント・U7にして、ジャイアントロボに指令を与えることのできる唯一の人物なのだ。
 彼との連携で、人質を発見した本郷たちは捕まった人々を無事に救出。現れた電流怪獣スパーキィも、人質を救出したことで出撃可能となったジャイアントロボと大作少年のコンビネーションが見事撃破した。

「まぁ、俺たちは別に有名になろうとして戦っているわけじゃあないしなぁ……」

 ランのぼやきに苦笑しながらエイジが応えると、五郎も頷く。

「それに、俺たちは普通の人間じゃあない。俺たちの存在が明るみに出れば、パニックだって起こり得るだろう」
「そっか……それもそうだね」
「でもまぁ、ちょっとは悲しいかなとは思うけどさ」

 ふと口をついて出たエイジの言葉に、ランが首をかしげると、エイジが彼女の携帯を操作する。ジャイアントロボの特集記事の下に貼ってあったリンクを呼び出して、新たな記事を表示させた。

「“またも専門分野の博士誘拐!? 問われる危機管理!”“暗躍する悪の組織! 無防備な日本!”だってさ。……派手にロボットで活躍してるユニコーン機関とかは歓迎されてるけど、俺たちはたたかれる一方……ってね」
「俺たちは存在自体が公のものじゃあないからな。仕方ないさ」

 一応、エイジたちも地球を守る一員として、TDFの別働隊として末席に名を連ねている。
 しかし、仮面ライダーこと本郷をはじめ、その出自が特異な者が多く、その存在は機密とされている。アミーゴのカウンターでたむろする若者たちの正体を、市井の人々は知らないのだ。

「まぁ……人も知らず世も知らず、影となりて悪を討つ、ってのもオツなもんじゃないか?」
「……それじゃヒーローっていうより忍者ですよタクマさん……」

 冗談めかしてニヤリと笑ってみせるタクマに、なんとも言えない表情をせざるをえないエイジである。

「――TDFから緊急連絡!」

 と、呑気な空気が、飛び込んできたサキの張りつめた声に消し飛ぶ。

「新宿にて謎の武装集団が出現、破壊行動を行っているとのこと! 出撃要請が出ています!」
「謎の武装集団だと?」

 謎、ということは、すでに存在が判明しているショッカーでも、新人類でも、ましてやBF団でもないということだ。

「新たな敵の出現ってわけか……よし、とにかく行ってみよう!」
「どうした、何があった?」

 すぐさま出発しようとした五郎の目の前でアミーゴの扉が開き、機械油にまみれた本郷と一文字、そして立花の三人が顔を出した。詳細を伝えると、三人は即座に表情を緊張させた。

「なるほど……よし、俺たちも行くぞ」
「えっ、でも……本郷さんたち、サイクロンの改造中なんじゃ?」
「そうですよ。これからのショッカーとの戦いに備えて、サイクロンの強化は不可欠だ、って」

 ライダーたちの愛機である高性能バイク・サイクロン号。本郷たちは激化の一途をたどる戦いにそなえ、自らの手足となる“相棒”を、立花が近日オープン予定のバイクショップ<立花オートコーナー>のガレージを借りて強化改造の真っ最中であるはずだった。

「ああ、それならたった今終わったところさ」
おやっさんのコーヒーで一息つこうと思ってたんだけどなぁ……ったく、どこのどいつだ。思い知らせてやるぜ!」

 一文字が鼻を鳴らして憤った。

「まぁ、ちょうどいいタイミングだったとも言えるだろう。ショッカー戦の前に、強化改造したサイクロンの試運転だ!」

 本郷が提案し、一文字がおう、と応える。
 TDFから仔細情報を受け取ったサキの案内で、戦士たち……通称<アミーゴ隊>が出撃した。 


  -つづく-




 劇中で言及しているジャイアントロボの一件が、本来なら5話に相当する「少年とロボ」の一幕。
 これでもかというくらい辛みが薄かったのと、原典1話エピではなかったのを理由に端折りました。
 このノベライズ版に出すとすれば、今後登場するレッドバロン初登場エピの時くらいでしょうか。

 一方、等身大ヒーローを叩く記事に関しては、ゲーム版第19話「ブレイン暴走」のシナリオ内で登場したものを先行流用。
 今のところ劇中でさらわれた(厳密にはさらわれかけた)のは友里博士くらいですけどね(汗
 こちらも、これまた端折った6話「猛攻!ショッカー日本支部」に登場する太田黒博士の助手がさらわれたのが追加ですが、博士じゃなくて助手だしなあ(汗

 まぁ、物語の裏で何回かそういうことがありましたよってことでどうか。

 さてさて。
 今回話題に上っている、改造サイクロン。
 原作ゲーム上では、本郷のみが大学の研究所を借りて改造作業中ということで、マクーの襲撃に対し、彼を呼び戻すか否かの選択を迫られます。
 呼び戻せば、マップ内での戦闘に参加(選択出撃)できますが、改造サイクロンが入手できなくなり、呼ばなければ、そのマップには参戦できませんが、改造サイクロンが入手できる……といったカラクリになっております。

 まぁ、登場人物を削る理由もないので、今回は半ば無理矢理に改造を終わらせて登場させていますが。
 原作ゲームでは終始アミーゴしか登場していませんが、ライダーのTV版では、本郷の離脱後にバイクショップを経営しているおやっさんなので、改造スペースにも事欠かないんじゃないかなぁと。
 ただでさえマシンが出てくるので、停めるところも必要ですし?w

 さてさてさて。
 謎の武装集団に立ち向かうべく出動した、本郷たちアミーゴ隊。
 その武装集団の正体とは? 目的とは? 待て次回!