炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

スーパー特撮大戦200X:第4話/シーン2

 ようやくアミーゴにたどり着いた本郷たちを出迎えたのは、滝であった。
 身構える本郷たちにきょとん、となる滝だったが、事情を把握しなるほどと頷いた。

「今度は大丈夫なんだろうな、滝?」
「ああ。俺も自分のニセモノが出るとは夢にも思わなかったぜ……」
「しかし、よくできた変装だった。俺の超能力でも見切れなかったぐらいだ」

 やれやれと呟く滝が、本郷たちを事務所へと案内する。そこにはロープで縛られたショッカーの戦闘員の姿があった。
 ゾル大佐の動向を追っていた際(この間に当のゾル大佐は滝に化けて本郷たちに近づいていたのだが)に遭遇した戦闘員を捕縛し、今の今まで尋問していたのだという。

「だが、この通りずーっとだんまり決め込んでやがるのさ」
「無駄だ、滝。こいつは戦闘用の改造人間だからな」

 本郷曰く、戦闘員は万一の場合……たとえば、今回のように捕虜にされるなど……を考慮し、言葉を出せないように処置がなされているらしい。

「そっか、だからずっと『イーッ!』しか言わないんだね」
「イヤだねぇ……ショッカーが世界征服をしたら、人間はみんなこんな風にされちまうってのかね?」

 少々ズレた納得の仕方をするランに、肩をすくめる滝。と、滝の鼻先に、突如砕けたガラス片が掠める。ガラスを砕いた物体……ライフルの銃弾は的確にショッカー戦闘員の心臓を穿った

「しまった!?」

 断末魔をあげる戦闘員。その悲鳴をかき消すようにバイクのエンジン音が遠ざかっていく。ショッカーが口封じのために捕虜となった同胞を狙撃したのだ。

「おい、しっかりしろ、おい!」

 抱き起こす本郷だが、戦闘員は既に事切れ、早くも液状化が始まっていた。

「……うん? おい猛、これは……!」

 ふと、泡となって消えた戦闘員の傍に、立花が何かを見つける。呼ばれた本郷は、そこに刃物かなにかで刻まれた図形を確認した。

「これは……ダイイングメッセージか?」
「死ぬ間際に書かれたのでしょう。ずいぶんと崩れていますが、文字のようですね?」

 サキが解析し、その文字の正体を仲間たちに知らせる。

「<ダイラ カツヨシ>……? 何かの暗号か?」
「もしくは人の名前とか……?」

 頭をひねるエイジたちだったが、答えには至らない。

「うーん……あ。ね、エイジ。逆立ちしてもいいかな?」
「はあ?」
「いや、ほら。逆立ちして推理する探偵か刑事っていなかったっけ?」
「聞いたことないよ……」

 大体スカートなんだから逆立ちはやめろよ。とエイジが苦言を呈し、ランが不承不承ながら「はーい」と頷いた。

「ははは……面白いこと考えるお嬢ちゃんだなぁ……ん……逆立ち……逆さ…」

 と、滝がぶつぶつと呟き、ややあって「あ!」と声を上げた。

「ダイラカツヨシ……シヨツカライダ……ショッカー ライダー!」
「何?」
「まさかショッカーの奴ら……ライダーを造ろうとしてるのか?」

 誰も突拍子もない、とは言わない。なぜならば、目の前に居る本郷猛=仮面ライダーを造り上げたのは他ならぬショッカーであり、そのノウ・ハウを持つであろうショッカーが、対ライダー用に同じスペックの改造人間をぶつけてくることは容易に想像がつく。

「その可能性は、かなり高いと思われます。指揮衛星がキャッチしたエネルギー量は、本郷さんが改造された際のものとほぼ同じでしたし……」
「だがなぁ……いくら同じ能力の改造人間を造るとしても、そのベースになったのは猛、お前だぞ? ワシは何人もレーサーを育て上げてきたからわかるが、お前さんほどの身体能力の持ち主にはついぞ会ったことは無い」

 仮に同じ改造人間を送り込まれても、脅威にゃならんのじゃないかね?
 そう言う立花であったが、本郷の表情は晴れない。

「でも、もし……もし万が一にも、本郷と同じ、あるいはそれ以上の肉体の持ち主がいて、その人物が改造されたとすれば……」

 次いで懸念を口にする五郎に、本郷が重々しく頷く。

「それもあるが、それ以上に……俺と、いや俺たちと同じ境遇の者を増やすわけにはいかん! そうだろう、エイジ君、ランちゃん?」
「はい! もう一度、あの基地に向かいましょう!」

 エイジの言葉に、全員が頷き、アミーゴを飛び出した。


   -つづく-




 さて、前述の通り2号ライダー誕生編というのは仮面ライダー原作ではなされていないため、こちらはゲームオリジナルシナリオといっても過言ではないわけですが。
 当然ながら、リリースは「新仮面ライダーSPIRITS」より以前なのですが、後ならばあの「旧1号2号編」が採用されたのかな?

 さてさて。
 このシーン、ゲームでは唐突に本物の滝が合流し、戦闘員に尋問をしているところから始まるのですが、諸々整合性を高めるためにかなり改変を仕掛けています。
 たとえば、「ダイラ カツヨシ」なるダイイングメッセージに対するリアクションも、バイオ編メタル編問わず、本郷含め誰一人ピンとこないまま次のシーンに進むのですが、3人寄らばなんとやらとばかりに、とりあえず正解へと導いています。
 特に滝なんかは、あれでFBIの捜査官を務めている男ですから、ある程度の推理はお手の物でしょうし(ホントかよ……
 そのヒントになったランの言動の元ネタは、まぁ推して知るべしw
 リリース年に当該作品が放映されたわけじゃないですが、まぁこっちは「200X」ですからw

 ちなみに、念のためググりましたが、「ダイラ カツヨシ」というキーワードは、やはりライダーの原典には登場していない模様。ゲームスタッフの試行錯誤が窺えますw