炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【闇照】ZEN~炎刃の鋼腕~/シーン7【スピンオフ】

シーン7:痛/Imagination



「グルゥ……ォォォ……」

 ルメーズが激痛と灼熱に晒され、本性を顕しながら唸り声を上げる。爆裂した魔獣の腹からは多数の魔戒剣が雨あられと降り注ぎ、地面に突き立てられた。

「うあととと! っち……折角の虎の子でもトドメはさせねーか」

 飛んでくる切っ先を這々の体でかいくぐりながら、未だ斃れないホラーの姿を見てぽつりと呟く猛竜である。体内から緑色の粘液が爆薬の熱で蒸発しているのが見え、腹から飛び出した刃がルメーズの身体を傷つけている。

「なるほど。腹ン中に魔戒剣突っ込んでも効かねえ理由がそれか。だがもう意味がねえみてえだな。もう魔戒剣でもぶった斬れるってこった!」

 そう言って猛流は自分の愛剣を探すが、見渡す限り魔戒剣だらけの戦場で、同じように吹き飛んだ相棒を探すのはすぐには困難であった。

「……って剣何処だよ畜生! あーもう、探しながら斬るッ!」

 立ち上がるや否や手近の魔戒剣を引き抜く。一般的な直刀両刃のものを、ルメーズを挟んで反対側の新たな魔戒剣を目指して駆け出しながらすれ違いざまに斬る。

「これじゃねえ!」
「これでもねえ!」
「こいつも違ぇ!」

 片端から剣を抜き、斬り、放り投げる。自分の剣を探しながら駆け抜ける。

「これは……ってこれ槍だよ畜生!」

 海神が持っていそうな三叉槍を手にする。苦し紛れに襲い掛かるルメーズの一撃を躱し、三叉槍を回しながら斬りつけ、投げつけた。

「……今の結構しっくりきたな?」

 利き腕で扱っていないにもかかわらず手に吸い付くように捌けた槍に驚愕しつつ、それでも目的のものは違うと再び捜索に戻った。

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 果たして23本目に握った剣は、ようやく彼の捜し求めていた片割れ……柳葉の刃煌く刀身であった。

 左手で柄を握り締め、切っ先をルメーズに向ける。

「っへへ……今度こそ俺にその陰我断ち斬られと……んぐっ!」

 不意に右腕に激痛が走り、その痛みに剣を取り落とす。これまでの比でない幻肢痛が義手のない猛竜を苛んだ。

「がっあ……ぬおおおお……っ」

 疼く、あるはずの無い右手の痛みに堪えきれず転がりまわる。あるべきものが無い内在的な不安が痛みを生み、猛竜の意識をかき回すのだ。

「ぬぎぎ……」

 根性を振り絞り、痛みをねじ伏せる。剣を杖代わりによろよろと立ち上がる猛竜の視界がぼやけ、目の前に居る魔獣の輪郭がはっきりしなくなってきた。

「ンにゃろう……こんなときに……ッ」

 脂汗がこめかみを伝う。持ち込んだ義手は殆どが使用不能に陥っている。使えるものもあるはずだが、それを仕舞ったズダ袋はルメーズを挟んではるか前方に転がっていた。

「マズいな……」

 未だルメーズは健在の状況。鎧を纏おうにも激痛が剣を振るうのを阻む。状況は芳しくないといえた。

「……助けが必要な状況かしら?」
「!?」

 不意に飛び込む涼やかな声に、猛竜は聞き覚えがあった。

「次にあんたは“おめえなんでこんなところに!?”と言う!」
「お、おめえなんでこんなところに!?」

 猛竜の言い分を先読みしながら、声の持ち主……義手の修理を行っていた女魔戒法師が「なんでとはご挨拶ねぇ」と笑って見せた。



    -つづく-




 こっそり小ネタ。

 さて、ルメーズが体内にソウルメタルの塊たる魔戒剣を大量に溜め込んでて無事だったのは特殊な粘液を体内に有していたため。
 もっとも、完全に無効化するわけじゃないので、実はこの魔獣、ものっそいやせ我慢していたのですw
 こだわりはホラーの生き様すら変えるのかもしれませんw
 まぁこの辺はシリーズ完結時にでも解説します。
 これで魔導具でもいれば説明してくれるからラクなんだけどね(汗



 いよいよ復活の符礼の義手!

 全国おっくせんまんの猛竜FANの皆様お待たせいたしました。
 間もなく、無双タイムです!(ぇ


 そんなこんなで、待て次戒ッ!