エピローグ:猛/Takeru
「サンキュな。おかげで助かったわ」
「なんのなんの。あたしも楽しかったし、何よりイイモノも見れたしね」
からからと笑う女法師に、猛竜は先の戦闘での一連の出来事について問う。
「そういや結局、アレってなんだったんだろうな? もう義手も開かねえし」
「あんなキセキ、そうそう起こってたまりますかっての。そんなことになったら、あたしら商売上がったりだわよ……」
肩をすくめてそう言う法師は、「ソウルメタルの精神感応能力が、奇跡を起こしたのかしらね」とだけ言った。もとよりソウルメタルも、それを加工して鎧や武器にする術を持っているだけで、その本質全てを識るものはいないのだ。
「言ったでしょ? ソウルメタルは持ち主の心を映すって。あんたのその義手に対する想い入れが、あんたの鎧と、剣に結びついたんじゃないかしら」
「……ま、そー言うことにしとくか」
仮に詳しく解説されたところで理解はしきれまい。そう考えて、猛竜もあっけらかんと追求を放棄した。
「……たぶん、あんたが心の底からあの力を求めることがあったら、そのときはまた、起きるかもね、キセキ」
「……かも、な」
ふと猛竜が女法師の横顔をちらりと見やる。昇り始めた朝陽に照らされた笑顔に、不意に何かこみ上げるものを感じて、慌てて目を逸らした。
「……んー? どったの?」
「な、なんでもねえよ……ただ……」
言葉尻を濁す猛竜に、女法師がにんまりと笑ってその先を読む。
「次にあんたは“いい女だな、お前”と言う!」
「いいオン……って言わねーよ!?」
大笑いする女法師に憮然と返しながら、小さく口の中で「……まぁ、否定はしねえけど」と呟く。
「ふふん、なーに? おねーさんにホレちゃった? ダメよ? あたしの心はとっくに売約済みだもの」
「ばっ……誰が惚れるかっての! 頼まれたっていらねえよ」
「造り酒屋の一人息子でねー、跡取りだってのに下戸だったりしてまぁそこがまたかーわいいんだけどさぁ」
「……聞いてます? ヒトの話?」
聞かれても無いのに語りだした上に惚気だす女法師に猛竜が苦笑した。
「さってと。んじゃ、あたしもそろそろ帰りますか。仕事、造りかけほっぽって来ちゃったしね」
「おう」
「注文ならいつでも受け付けるわよ。ロケットパンチでもドリルでも」
「全力でお断る」
真顔で返す猛竜であった。
そのやりとりに、二人して噴出す。
「……まぁ、半分くらいは冗談として。修理が必要ならいつでも声かけてよ。たくさんモニターやってくれたし、しばらくは無料で面倒見るからさ」
「半分はマジかよ……まぁ、そんときゃたのむわ」
それじゃ。じゃあな。
挨拶に、ほんの僅か再会の約束を混ぜ込んで。
二人は踵を返し、別れる。
猛竜の眼前には昇りきったばかりの太陽。
その黄金の陽光に友の面影を垣間見て、猛竜は朝の空気を一息吸い込んで駆け出した。
-炎刃の鋼腕・了-
おわっちゃいましたねえ……
元々はモノカキのリハビリということでしたが、果たしてリハビリになったのやら。恐らく其れは読み手のみぞ知る。
原作で義手ボロッボロだったよね? 修理にかこつけてトンデモ義手着けさせてあそぼーぜ!
的なノリで始まった今回のシリーズ。
ひょっとしたら、歴代の魔戒騎士たちの中で、一番好きかもしれません、彼。
まぁ他の騎士たちに比べて動かしやすい、という理由もあったりでしょうがw(ぇ
でもまぁ、書いているうちに、その感情がガチになるあたり、俺ちゃんチョロいなぁ、とw
こんな感じで完結しましたが、お楽しみいただけたのであれば、物語の紡ぎ手としてはコレ幸いにて御座います。
この終わりが、劇場版に続くのか否かは……まぁどうでしょうね。続いてくれたら嬉しいですがw
じゃーな猛竜、また遊ぼうぜ!