炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

スーパー特撮大戦200X:第6話/シーン3

 眼下に広がる青く美しい星……地球。
 今そこを離れる、一隻の宇宙ポッドの姿があった。

「これで地球も見納めだな、タクマ……」

 かつての自分が犯した罪を償うべく、宇宙刑事ギャバンに自らその手に手錠をかけさせたタクマは、相棒のファディータ……サキとともに、バード星へと向かうべく護送される、その最中であった。

「好きにすればいいさ……」

 ギャバンからの声に、素っ気なく返すタクマ。仲間たちと二度と共に戦えないであろうという寂しさはあったが、捕まり、罪を償うことに微塵の後悔もない。
 少なくとも、タクマはそう思っていた。

ギャバン!』

 不意にアラートと共に通信が飛び込む。送り主はドルギランでギャバンたちの帰投を待つ、相棒のミミーだ。

「ミミー? どうした、何があったんだ!?」
ギャバン、大変よ! 京浜工業地帯にアプファロンとアテファリナが現われたわ!!』
「なんだって!?」

 アプファロン、そしてアテファリナ。いずれも戦闘船団国家ナガーの幹部であり、ルシファードと同じくS級の指名手配を受けている凶悪犯罪者である。
 強大な組織の2大幹部がなぜ銀河の辺境ともいえる地球に現われたのか? ギャバンが思考する背後で、誰かが立ち上がった気配がした

「タクマっ!?」
「済まないギャバン、ピクニックは中止のようだ!」

 君に逮捕されている場合じゃなくなった、と呟き、タクマは傍らのサキに視線を移す。

「サキ、ここから地上への転送を頼む!」
「…………どうしても、行くのですね」

 サキの問いかけに、まっすぐに頷く。

「行くだと? お前、何を……」
「サキ!」
「……了解!! 融機鋼、強制発動! タクマの身体ごと、目標座標に分子射出しますっ!!」
「お、おいちょっと待……うわっ!?」

 サキの絞り出すような叫びとともにタクマの身体がきらめき、転瞬、その姿が掻き消え、ポッドの床に手錠だけが転がった。

「タクマが……消えた!? おいサキさん! ヤツはどこへ……!」
「タクマ、は……」

 荒く息を吐きながら、サキが告げる。

「融機鋼の着装時の装甲転送の要領で、私が地上に送りました……」

 ふらふらと立ち上がりながら、サキはギャバンの身に縋る。

「お願いギャバン! 彼を戦わせてあげて! どうしても……彼……には……」
「お、おい、様子が変だぞ? 大丈夫か?」
「融機鋼の強制発動で、エネルギーを消費、し過ぎました……。わかってはいたのですが……これ程にも……」

 サキの言葉に違和感を覚え、ギャバンが問う。

「エネルギーって? ……君は人間じゃないのか?」

 その問いに、サキは力なくうなづく。

「私、は……タクマをサポートする目的で造られた“有機ドロイド”です……。
 お願い、ギャバン……タクマ、を……どうか……」

 ギャバンの腕の中で、ぐったりとなるサキ。
 うわごとのように「タクマを……」と呟く彼女に、ギャバンはただ大声で呼びかけることしかできなかった。


 ・
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「うわっ!?」
「ほう、その体組織……貴様、“ヴォル”に見初められし者か」

 ヴォルテックスの攻撃を難なく打ち返し、アプファロンが冷たい視線を向ける。

「ヴォル細胞を知っているのか!?」
「ふふ……よぉく知っているわ……でも」

 今度はアテファリナが、視線を彼の背後……ランへと向けた。

「本当の意味で見初められているのは……ふふ」
「! ランに手は出させないぞ!」

 彼女を守るべく、右腕を砲身へと変化させた生体レーザー砲・ヴォルカノンを撃ち放つ。しかし、渾身のレーザーはアテファリナの電磁鞭によって弾き飛ばされてしまう。

「ヴォルに見初められながらも自我を保つか……フフ、これは興味深いサンプルだ。ぜひ我が“船”に連れ帰るとしようか」
「くっ……!」

 じわりと近づくアプファロン。未知の脅威に体が言うことを聞かず、ヴォルテックスが歯噛みする。
 あと一歩で接触する、その刹那。両者の間を光の柱が貫いた。

「!?」
「何だ!?」

 輝きが収まる。その光の中から現われるは――紅い甲冑姿。

「ルシファード……タクマさんっ!」
「なぜここに? 君はギャバンとバード星に向かったのではないのか?」

 1号ライダー・本郷の問いかけに、背を向けたまま。ルシファードの双眸はアプファロンとアテファリナを睨みつける。

「みんな……悪いが、こいつらは俺の……敵だッ!!!」

 拳を握りしめ、融機鋼の騎士が吼えた。



   -つづく-





 このエピソードで明かされるサキの秘密!

 ……まぁ、実のところ彼女のパラメータや成長パターンを鑑みれば気づく人は気づくんですがね(

 今回で明かした通り、彼女は有機ドロイド。つまるところ人造人間というわけで。キカイダー同様にユニット能力・武器能力ともに改良が必要なひじょーにめんどいパターン(失礼

 なお本作で採用された「邪学者」シナリオ中だけでなく、「闘姫」のシナリオに於いても彼女がドロイドであることが明かされますが、今回とは経緯が違います。
 何度も言いますがこれはこれで良エピなので、どうにか使いたいと思っております。

 いやホントは本作中に無理やりねじ込もうと思ったくらいで(
 さすがに展開上無理がありすぎたので断念しましたがw


 さて次回。
 ナガーの二大幹部に戦いを挑むルシファード。

 ついに、その禁断の必殺技がベールを脱ぐ……!