炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

うー。やっちまったよぉ

経過報告。

C@NDY☆…Cランク到達。現在活動1周目(通算28週)/2ndシングル「Here we go!」絶好調。
teardrop…Dランク。進行してないので変動なし。

久々に伊織の呼び出しメールが物理的に行ける時間帯に指定来たので会社帰りに速攻。
…というか、お願いだから制限時間5時間とかそーいうのヤメテよいおりん(滝汗

敏腕記者もついて、さらにメール効果でブーストかかってイメージサークルもゲージMAXギリギリで真円状態。これはイケる!と踏んで、初めての特別オーディション「TOP×TOP」へ。
…僅差で(嘘つけ)落選orz 二位ですた(愕然

いや、ちゃんと特殊ルール把握してなかった俺が悪かった。一位しか☆取れネってんなら確実に5つとれるボーカルを重点的に押していきゃよかったんだ。それをいつもどおり満遍なくやるから。
…まぁ、過ぎたことはもうしょうがないが。…これでオーディション不敗神話も消えたか(滝汗
これを教訓に、ぜひあずささんの時には獲得したいもんだが。…がんばらべっちゃ。

で、汚名挽回とばかりに続けて通常オーディションを2回受験。立て続けに合格ってどうにかCランクへ。
前回は雪歩をDランク止まりで終わらせちまったから、とりあえずは越えたな。当面の目標、まずは第一段階クリア。
つぎはあずささんをCランクへ連れていかにゃ。特別オーディション合格が遠いから、B以上へはちょっとキツイかも知れんけど、とりあえず行けるトコまでいこう。ともかく、今後ともよろしくね、あずささん、伊織。




 ―――伊織からのメールを眺めたあと、僕は溜息をついてケータイを閉じた。
「…今日もタイミング、合いそうにないなぁ」
 プロデューサーとはいえ、僕の仕事は彼女のレッスンやオーディションに付き合うってだけじゃない。アイドルとしての彼女の仕事のアポイントメントをとったり、営業に回るのも、仕事のうちなのだ。
 当然、彼女にかまけてばかり居られないというわけで、どうにも事務所に行く時間も限られてしまう。彼女はそれが気に入らないらしく、時折「何時~何時に待ってる」といった内容のメールを送ってくるのだ。
「この間、次は必ず行くよって約束したばかりなのにな…」
 そのつもりは無くとも、嘘をついた結果になってしまう。彼女に対する懺悔の念でいっぱいになりながらも、僕は仕事をこなさないといけない。あっという間に約束の時間を過ぎ、あたりはとっぷりと暮れていた。
「…やれやれ。伊織には悪いコトしたな。フォローのメール、送っておかないと…」
 と、ケータイを開いたところで、はたと気付く。
「いっけない。資料を事務所に置いてきてたよ…。取りに戻らないと」
 今戻っても誰も居ないだろうケド。一応、鍵は貰ってるから大丈夫か。
 かくて車を走らせて、僕は事務所に戻る。
「…しっつれーしまーす」
 小声で扉を開く。…勝手知ったる我が事務所…なんつって。
「資料資料…っと。あ、あったあった」
 資料の入ったMOディスクをポケットに突っ込んで、さて帰ろうと思ったその時だった。

  カタン

「!?」
 扉の向こうで物音がした。…おかしい。今この事務所には僕以外誰も居ないはずだ。
「…だ、誰かいるのか?」
 泥棒かと思い、少し語調を強めに言ってみる。あまり金目のものはない事務所だけど、アイドルやその候補生たちの個人情報とかは豊富にある。それをもし盗まれて流出でもされた日には目も当てられない。
「物音は…こっちからしたよな?」
 一向に返事が返ってこないので、勇気を振り絞って扉に張り付く。この向こうは主にミーティングなどに使う部屋なんだけど…。
 キィ…と扉を開く。僅かにあいた隙間から視線をめぐらせる。サッシ越しに月明かりやネオンの明かりが薄く部屋の中を浮かび上がらせる。と、その中に動く影を僕は見逃さなかった。
 …誰か、居る。
(泥棒とかじゃありませんように…)
 意を決して、扉を一気に開く。バンっと乾いた音がして扉が軽々と開店したが、その音でも影は大きく動く気配がない。
「…?」
 入り口近くの照明のスイッチを入れる。蛍光灯が音も無く点き、部屋を明るく照らす。
「…って、伊織?」
 部屋に置かれた安物のソファの上に、伊織が小さく丸まって寝息を立てていた。
「なんでこんなトコで寝てるんだ?」
 まさか…僕を待ってた?

「んぅ…」
 と、伊織の小さな唇が僅かに開き、声が漏れる。目が覚めたのかな?
「プロデューサー…の、…嘘つき」
 寝言…?
 眉をハの字にゆがめて、悲しそうな表情を浮かべたまま眠る伊織。柔らかく閉じられた瞳には、うっすら涙の跡が残っていた。
 なんとなく、想像がつく。
 一旦帰ったと見せかけて、この部屋に滑り込み、何時帰ってくるとも知れない僕を、ここで待ってて…。
「…ごめん。約束破って」
 眠り姫の頭をそっとなでる。彼女はどうにも起きる気配がない。完全に寝入っちゃってるみたいだ。

  ♪~♪~♪~・・・

「っと!」
 不意に、彼女のポシェットから「Here we go!」の着メロが響く。悪いとは思いつつ中からケータイを取り出すと、ディスプレイには「新堂」の二文字が光っている。
 新堂って確か、伊織の家の…運転手さんとか執事さんとかだっけ?
 ともかく鳴りっ放しにしておくのも何なので電話に出ることにする。
「ハイ。…あ、いや、僕は伊織…さんの担当プロデューサーでして。ええ、彼女は事務所に…いやこちらこそ、ご迷惑をおかけしまして…。はい、あ、そうですか。では、お待ちしております。ええ。では失礼します」
 車でこちらに向かっているらしい。僕は伊織を起こそうと彼女の身体を揺り動かす。
「伊織、伊織…起きてくれ。家に帰ろう」
 ところが幾らゆすっても目を覚まさない
「まいったな…」
 そうこうしている間に新堂さんが事務所に顔を出した。仕方がないので、眠ったままの伊織を抱きかかえて(ちょうど、お姫様抱っこの要領だ)階下につけた高級車のところまで降りて行く。
「申し訳御座いません。お嬢様がご迷惑をおかけしたようで」
「いえ、半分は僕のせいみたいなものですし。こちらこそ、心配をおかけしました」
 伊織の身体を(思った以上に軽かった)新堂さんに預ける。彼は手馴れたかのように後ろの席に器用に座らせると、一礼して運転席に乗り込み、去っていった。

「…明日は、ちゃんと来ないとな」
 そう呟いて、僕も帰路につくことにした。

 次の日、僕が顔を見せたことでご機嫌になった伊織は、そのテンションを維持したまま、連続してオーディションに合格し、見事にランクアップを果たすのだが…
 それはまた、別のお話。



 …なにこの展開?(汗