「すみません、聞いていただきたいことがあって…」
メンテナンスを終えた後、ライブラがおずおずと声をかけてきた。
「あんだよ、改まって?」
「ええ、しばらくの間量らせてもらった結果判明したのです…」
何を量ったのかはラッキーには知る由もないが、その口ぶりは深刻そのものだ。イブは深呼吸をひとつして、やがて意を決して口を開いた。
「このままでは…人間たちは滅亡しますっ!」
「な、なんだってー!!?」
ラッキーの素っ頓狂な驚きの声がメンテ室にこだまして…
「って、なんでやねん」
はっと我に帰って冷静に突っ込む。
「…いや、もしかしてマグナスターがなんかやべーことでもやろうってことか?それをイブは先んじて察知して…」
「あ、それはないです」
「ないんかいっ!」
論より証拠…と言いますか。とイブはラッキーを連れてメンテ室を出た。
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「ここを見てください!」
魔物の巣窟でも見せられるのかと身構えたラッキーが目にしたのは…
「風呂場じゃあねーか…」
「ええ、お風呂場です」
こともなげに返すイブだが、その表情はふざけているつもりはなさそうだ。
「いいですか?本来水浴びというのは泉でするべきなのです。それを遠くから水を運んできてシャワーとして利用する…そんな水が清潔なわけがありません!」
「お、おう…?」
「それに見てください、この室内。通気性も悪く、これではカビが生えて病気になってしまいます」
そうならないように日々トマが掃除している筈なのだが、知ってか知らずかイブは朗々と演説を続ける。
「人類はこんな石造りの街を捨てて、温かい森に還るべきなのです!」
そういえば禁域の担当が666番街だったのも不満そうにしていた。どうやらエルフらしく(?)自然回帰のきらいがあるのかもしれない。
「とは言え文明とは便利なものです。そうそう手放せはしないでしょう。ゆえに…」
イブがやおら杖を振り上げ──
「こんなものは、破壊しなくてはならないのです!」
「ちょっ!?」
渾身の雷撃魔法が浴室に迸る。
「アホか!こんなとこで電撃なんか使ったら…!」
ラッキーの懸念は悪い方に的中し、シャワーヘッドに集まった紫電がイブを直撃してしまった。
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「気が付いたか?」
「あれ、私…」
「魔法で自爆して気ぃ失ったんだよ」
そうですか…としょんぼりするイブ。曰く、彼女はどうにも運が悪いらしく、自分のやったことでしばしば手痛いしっぺ返しを食っていたようだ。
「でも!私には使命があります。こんなことでめげてはいられません!人々を文明から解放し、大自然に還すその日まで…!」
「壮大な計画だな…」
呆れるラッキーの手を、逃がさないとばかりにイブが掴む。
「あなたにも協力してもらいますよ、デモンゲイザー!一緒に人類を救って、ついでにマグナスターの野望も食い止めましょう!」
「いや、そっちついでにすんなよ!」
メガネ越しの瞳の輝きがどう見ても本気のそれで、ラッキーはため息をつくのだった…
-つづく-
個室効果でイブの好感度がMAXになってたのでデートイベントを急遽挿入。
6日目7日目(朝)に続いてなんか優遇されてないかこの子…いや偶然だろうけども。
さて、そんな彼女の固有エピソードは…なんかあれだ、こうシーシェ◯ードとかグリ◯ピースみたいなことにならなきゃいいんだが(やめい
次回こそ、次回こそレオ戦をば…