炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【#モン勇】14日目:ケモノの王者!フェンリル登場【リプレイ風】

「な、なんなのそれ!?」

厨房のカウンターにどっかと乗せられたそれに、チュッケが目を白黒させる。

「見てわかんねえ?鳥の肝の肉だよ。ビスヘイムで見つけたんだぜ」
「ビスヘイムで?って、それつまり魔物のお肉ってことじゃあないか!そんなもの、どうする気なノ?」
「そりゃ肉なんだから、チュッケのおっちゃんにウマいもん作ってもらおうかなってさ」

キリクの言い分に、チュッケが跳ねるように震え上がった。

「ブヒィっ!?だ、ダメだよそんな魔物のお肉なんて!食べたらお腹壊すヨ!」

普段から塔に住んでる金ピカの虫を美味しそうに食ってるやつの言うことかよ…


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「ボクは妖精族だからヘーキなの。っていうか魔物と虫だって別物でショ?」

知らんがな…まぁともかく、チュッケには手に負えないらしい。

「しゃあねえなぁ…じゃ、アノンが作る?メシ作れんだろ?」
「オレにゃおにぎりが精一杯だ」

結局キリク隊全員、料理に自信なしってことで肝肉はビスへイムに持ち帰る(?)ことにした。まぁ魔物を誘き寄せる分には役に立つかもな。

 

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「…アノンうじ、なにか…」
「ああ…こりゃあ…」
ビスヘイムに突入するなり、濃い殺気がまとわりつくのを感じた。多少異なるが、いつぞやデミヘイムでも感じたそれに酷似している。つまり…

「まーおーうー、だーねー?」
「つい昨日までちいとも気配を感じさせなかったが…よもやこの肝の所為でござろうか?」

ちなみに肉屋よろしく、件の肝は木の皮に包んでいる。肉の匂いはオレらの嗅覚程度じゃあ把握はできないが、そこはやはり獣の長だけあるってことか。

「どうするの〜?魔王のねぐらの場所は把握してるんでしょう〜?」
「ふむ…ここはいっぺん喧嘩売りに行ってみるか」
オレがそういうと、キリクが目を丸くしてこちらを振り向いた。

「へぇ、わりと慎重派なおめーが珍しいな」
「別に慎重なつもりはねぇよ。必要なら攻めもするっつの」

他の魔物とは違い、魔王を相手取るなら戦い方を知っておくのは重要だ。“死んでも蘇る”なんてオカルトに頼るのが前提になるのは少々…いやかなり癪に触るが。

「ま、それにしたって一旦周りの魔物を蹴散らしてからだな。ザコを安定して倒せるくらいじゃねえと相手の手の内見る前にやられちまう」

 

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魔物を蹴散らしながらビスヘイムをひと回りして、改めて魔王の寝ぐらの前までやってくる。明らかに気配が濃くなってやがるな…

「んじゃま…行きますかね!」

扉を蹴破り、たむろしていた魔獣が突っ込んでくるのを掻い潜りながら、部屋の中央へと駆け込む。

「うむぅ…気配はすれど姿は見えず…でござるか」
「入れ違いになった…?」

いや、この部屋へのルートは一方向しかねえからそれはあり得ない。気配の規模がデカすぎで距離感がバグったか。

 

   ──ズン…!

 

「!?」

すわ地震かと勘違いするほどの地響き。それが巨大な獣の足によるものだと気づいた刹那──それは、目の前に現れていた。

 


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「…肝の匂いを辿ってみれば…オレのナワバリで、オレの獲物を狩り取った不届き者はキサマらか?」

腹の底に響く…いや、臓物を漁って引き摺り出すかのような声で、数多の獣を混ぜこぜにしたような化け物が問う。

「お…おうともよ。あたしらがあの化けカラスをやって、この肝を奪ったぞ!」

その圧力に気圧されながらも、一歩前に出て件の肝を見せつけるキリク。

「どーよ、どうしてもってんならくれてやってもいいんだぜ?」

…一言余計だ!ああいう手合いは施しを受けるのをクソほど嫌うって相場が決まってんだぞ!

「小娘が…この<フェンリル>に、情けをかけるつもりとは…笑止!すでに物言わぬ獲物を奪ったところで何の感慨も湧かぬわ!」

怒号がビスヘイムを揺らす!

「オレは魔獣の王なり!オレはオレの思うがままにワザワイを振りまく!そして狩り尽くす!」

獅子の面が吠え猛り、尾の蛇がオレたちを睨む。

「オレの狩りの相手はキサマらだ!さぁ…オレに喰わせろ!キサマらの腕を!脚を!ハラワタを!!!」

くるぞ…全員、構えろ!

 

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「来やれ!我がケンゾクどもよ!!」

そう吼えるとともに、先程までオレたちを追っていた魔物が一足飛びにフェンリルの元へ駆け寄り、こちらへ牙を剥く。

 

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「わざわざ壁を設けるとは…己が牙に自信がないでござるか、獣の王どの?」

魔獣をけしかけ後方に下がった魔王を見て、刀を構えながらイヅナがニヤリと笑って見せる。キリクもだがいちいち煽ってるんじゃあないよ…

「フン…キサマらが我が牙に足るか否か、我がケンゾクを以って計らせてもらうだけよ…我が肉体の一部になりたいのであれば、強さを示すことだな!」

フェンリルフェンリルで煽りやがるな…ま、後衛組はともかく、前衛は目の前のワンコを蹴散らさねえことには当たる攻撃も当たりゃしねえ。まずは…!

「キリク、イヅナ!とにかく魔物を倒して後ろのフェンリルを引きずり出せ!ナナシは後衛組(オレら)と一緒にアウトレンジからやつを攻める!」

連中の承知の意を確認してから、銃を抜く。いつぞやのフレイや、その眷属の魔物たちのような、属性をまとった気配は感じられられない。相手が魔法を使ってくる可能性は低いが…逆に言えば明確な弱点が無えってことでもあるか。

「アノンちゃあん、魔法はどうするの〜?」
「相手の出方が分からねえ。攻撃を当てやすいようにやつの動きを封じてくれ!」
「わかったわぁ〜!」

スローの魔法をぶつけつつ、オレのほうも足を狙って機動力を削ぐ。急所狙いの攻撃じゃあねえから威力はお察しだが、火の精霊の加護が少しずつヤツの毛並みを焼いてくれているのはありがたい。

「ふふん…むず痒いな」

…あんまり効いてはなさそうだが。

「おんどりゃああっ!」

キリクが新たに会得した<ぶんまわし>のスキルが、前衛の魔物共をまとめてボコっていく。よし、壁が崩れた!

「いっけえイヅナ!」
「疾ッ!」

引きずり出したフェンリルに、サムライの刃が二閃届いた。

「手応え…あり!」
「…ほう」

フェンリルの顔が享楽に歪む。来るか!

「このオレに手傷を与えたのは褒めてやる…魔王の返礼を受け取れいっ!」

鋭い爪を備えた前腕が横薙ぎに振るわれ、キリクたちを一瞬にして弾きとばす!

「ぐあっ!?」

致命傷は免れ、即座にウールが全体回復で持ち直した。

「さて…今一度来やれ、ケンゾクども!」
「何っ!?」

再びフェンリルが吠えると、どこからともなく魔獣が群れをなし、オレたちの前にたちはだかる。

「ザコが何匹群れようったってなぁっ!!」

奮起したキリクが金棒を振り回す。短い断末魔を上げて潰される魔獣の躯を踏みつぶすかのように、即座に新手の魔獣が躍り出る。

「さて…何匹の群れまで持ちこたえる…小娘共!?」
「ンなくそ…っこれじゃキリがねえ…!どうするアノン!?」

こうなりゃ先にザコを呼ぶ魔王を落とすか…?だが、ナナシを含めても後衛組だけでは火力不足だ。先んじて界層内の魔物を倒してきた後で、ディーネの魔力も底が近い。

「策は尽きたか…?ならばこちらからゆくぞ!」

フェンリルが眼前の魔物を踏み越えて前足を振るう。ウールの回復が間に合わず、前衛三人が一気に潰されてしまった。

「マジかよ…っ!?」

驚愕する間もなく、再び集まった魔獣が大挙して押し寄せてくる。壁を失ってしまったのはこちらのほうだ。お世辞にも防御力が高いとは言えないオレたち後衛陣の命は、文字通りすりおろされ…

 

 

 ──ああ。死んでしまうとは、なんてこと…!

 

 

   −つづく−

 

 


というわけで、ビスヘイムの魔王との緒戦はご覧のありさま。

そうそう、フェンリルって言うんですけどそのビジュアルがコレなんすよ。


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世 の フ ェ ン リ ル に 謝 れ 。

 

さて、一応言っとくと10ターンは保ちましたw
今回ボス戦の目標ターンは18ターンなので、約半分くらいってとこですかね。先にザコ概ね倒した消耗状態からと考えれば、そこそこ生き延びたほうかな?
今回のポイントは、ほぼ無尽蔵に湧いてくるザコ敵。フレイと違って同列にいないから潰さないと前衛の攻撃が届かない…でも潰したすぐ次のターンで再度湧いてくるという鬼畜仕様。さらにフェンリル、後衛からもしっかり攻撃仕掛けてくるんで手におえねえ…
万全の状態で挑むのは当然として、スキルビルドも重要になってくるな…


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