「またオレのナワバリを荒らしに来たか」
ビスヘイムの中枢。前回とは打って変わってねぐらに鎮座したままのフェンリルに戦いを挑む。
「こりないヤツらめ!丸呑みにしてやろう!」
にじみ出る殺気を一気に放出し、遠吠えとともに眷属の魔獣たちを呼び寄せる。よーし‥じゃあ皆、手筈通りに頼むぜッ!
「委細──」
「──承知!」
跳び上がったナナシが煙幕弾をばらまいて視界を奪う。奴らの攻撃は脅威だが、当たらなきゃどうということはない。
次に切り込みにかかるのはイヅナだ。抜刀と同時に斬撃を立て続けに繰り出し、瞬く間に魔獣の息の根を止めた。
「フン…まずはケンゾクどもを散らすか…甘いわ!我がケンゾクは、オレの雄叫びに応え際限なくたちはだかるぞ!」
フェンリルが言う通り、倒された魔獣の数を補うように、即座に目の前に二つ首の魔犬が飛び出してくる。
「ここまでは想定内…イヅナ、ヤツの爪が来る!喰らわないようにうまいこと躱せよ!」
「簡単に言うでござるなぁもう!」
ボヤきながらも、危なげなくフェンリルの攻撃を回避する。大振りにぶんまわすフェンリルの剛腕は、前衛をまとめて薙いでいくが、装備を強化したキリク、ナナシともに損害は軽微だ。イヅナにも多少掠ったが、次のタイミングで回復魔法を使えば間に合うだろう。
「キリク!突っ込め!」
「おうよぉっ!」
踏ん張って力をためていたキリクが、地を蹴って跳び上がる。狙うは前衛のヘルハウンド…ではない!
「おんどりゃあああっ!」
エルフェンブレードに宿った雷の精の加護により、今のキリクは、射程の短い剣を持ちながら後衛にも攻撃が可能となっているのだ。
…気づいたのはつい一昨日くらいの話だが。
「ぬぅっ!?」
懐に飛び込まれた鬼娘を眼前に、フェンリルが一瞬たじろぐ。躱そうとしたその瞬間を──オレが見逃すとでも思ったか!?
「な…っ!」
「当ッたれぇぇっ!」
俊敏な足元を狙い撃ちし、動きを止めたところにキリクのフルスイングがまともに命中する。力任せの攻撃は得てして当てにくいものだが、こうやって動きを止めさえすればどうとでもなる。
「はっは!これが連携ってもんだぜ、フェンリル!」
「おのれ…ケンゾクども!オレを守れ!」
呼び寄せたヘルハウンドがフェンリルをかばう。
「うふふ〜♡よ〜く固まってくれました〜!そ〜れ〜っ!」
ディーネが投げキッスを向けると、彼女の得意とする水の魔法が巨大な氷塊となって残りの魔獣を押しつぶした。
「ま、まだだ…!ケンゾクども!」
慌てて魔獣を呼びなおすフェンリルに、初めて対峙したときの迫力はもうない。
「わかる…私たち、強くなってる!」
ヘルハウンドの頭上を超えて、ナナシが投げつけた手裏剣がフェンリルの目を裂く。
「武器の強化…存外侮れぬものでござるな!」
強引に振り回すフェンリルの爪をいなしながら、前衛を食い破ろうとするヘルハウンドの群れを斬り捨てていくのはイヅナだ。
「どれだけーケガしてもいいよー!みんなーわたしがーなおすからー!」
大きな癒やしの魔法を振りまきながら、ウールが鼻息荒く。
「おらおら!どうしたどうした魔獣の王様よぅ!ケンゾクとやら、随分と役立たずじゃあねえか!勇者隊のマネゴトすんの、百年早かったんじゃあねーの!?」
「だ、黙れぇぇぃっ!」
煽り倒され怒り心頭の一撃がキリクを狙う。それをかいくぐった先の、ヤツの腹をめがけて刃が鈍い音を立てて食い込み、フェンリルは大きく体勢を崩した。
「やれ!やっちまえっ!アノン!!」
言われるまでもない。
ライフルの撃鉄を起こす。細く深く、息を吐く。照門と照星の交わる先は──
「…狙い撃つ!」
まぶたに深々と突き刺さったままの手裏剣を、一発の弾丸が文字通りダメ押しを食わせる。
──GYAAAAAAAAA!!!
異形の獣は、塔内を震わせるかのような断末魔とともに消え去った。
−つづく−
というわけでフェンリル戦、6ターンにて決着。
実際の決まり手はキリクの「振り下ろし」ですが、見せ場欲しかったのでアノンにトドメささせました。一応主人公やしな!w
いやエルフェンブレード(+10)が強すぎた…他作品でも序盤に来るからあんまり強武器のイメージなかったんだけど、ダテに黄金虫ボーナスやってないわ…シリーズ最強じゃね?
あと地味に射程Mですぐ後衛に引っ込むフェンリル相手にぶっ刺さるあたり、低レベル縛りにおける救済処置枠かね?
…いやまあ、他にも戦士が装備できるMレンジ武器はあるんだけども。
さて、入手した秘宝の提出もあるんで、25日目はもうちょっとだけ続くんじゃ。
次回がビスヘイム篇のエピローグってことで、次々回からは世界樹Xのリプレイ再開するわよ!
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