炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【#世界樹X】皇帝の月/2日:ミッション発動!未知の遺跡を探索せよ【リプレイ風】

「いやぁ、君たちお疲れだったね〜」

深夜でも変わらず開いている酒場に、ついに電池切れしてしまったレアを負ぶいながら向かうと、店主が騒がしく出迎える。酒を飲むのは苦手らしい(ゆえに飲ませる側の仕事に就いたとか)店主だが、このテンションは実は飲んでるんじゃないか?と訝しんでしまう。

「しーっ!レアちゃん寝てるんですからしーずーかーにー!」
「おおっと失敬」

ノノも大概大声なのだが、突っ込むのも野暮なので口を噤むザジである。

「ビルギッタちゃんから話は聞いてるよ。はいこれ報酬〜」
「ついでに妹分も保護したんだが色つけてくんねえ?」

聞いていたのはあくまでビルギッタの保護までである。犬とはいえはぐれた同行者の救出は流石に契約外だ。

「おんやぁ…言ってなかったかなぁ?彼女、犬と一緒に出かけたって…」
「聞いてねーよ!おかげで未知の遺跡に準備らしい準備もできずに入るハメになったんだぜこっちはよー」

大袈裟にため息をついてみせるザジの言葉に、クワシルの表情が変わった。

「遺跡だって?それはすごいものを見つけたね〜。マギニアの司令部には、もう報告したのかい?」
「いや、流石にもう遅いからな。宿に一泊してからでも間に合うだろ」
「うーん、まぁ大丈夫だとは思うけど…こーいうのは早い者勝ちだからねぇ…他のギルドに先越されても知らないよ?」

そん時ゃそん時さ。と肩をすくめて、ザジは踵を返すのだった。

 

 ・

 ・

 ・

 


f:id:homurabe_gren:20230425092820j:image

「閉店でーす」
「宿が閉まんな」

ザジたちストークスの面々が拠点がわりにしている“湖の貴婦人亭”の主人…らしい少女、ヴィヴィアンがあくびを噛み殺しながら出迎える。自堕落まっしぐらな彼女の頭の上に乗っかった飼い猫・マーリンがその頭に深々と爪を立てた。

「みぎゃーっ!わ、わかったからー!開店!開店しますぅー!」

なかなかにバイオレンスな光景だが、この宿の風物詩みたいなもので、今となっては気にしている宿泊者は皆無だ。

「この子と酒場のおじさん、足して二で割ったらちょうど良さそうよね…」
「テキトーなところは二人とも大差なさそうですけどね」

わりと辛辣なことを呟くリコリスとノノである。

「んー、泊まるの?」
「おう、うちの姫さんがもうおねむでな」
「おっけーぃ…じゃ、記帳よろしくー」

 

 ・

 ・

 ・

 

翌朝、早速昨日発見した遺跡の件を司令部に報告しに向かう。

「ほえー…おしろだー」

レアの呟き通り、確かに司令部という仰々しい名称の割には、その内装はいやに豪華だ。

「まぁ、総司令が姫様だっつーならそうもなるだろな…」

周りを見ると、その豪奢な内装の中をさまざまな人たちが行き交い、その中心には姫ことペルセフォネ・マギニアスがてきぱきと指示を飛ばしていた。

「…うん?」

と、その姫の視線がザジたちを捉えた。

「探索司令部に何用か?ここに足を踏み入れて良いのは、一定の実力を示したギルドのみ。たしか、汝らは…」
「ストークスだよ!おひめさま!」

一歩前に出て、レアが背伸びをしながら挨拶する。

「ああ、ストークスだったな。ふむ…いい仲間を得たようだ」
「ええ、おかげさんで」

ザジの言葉にふっと含み笑いで返し、レアに視線を合わせるように腰を落とした。

「して、ストークスよ。わざわざ司令部にやってくるということは…何か報告すべきことがあるのかな?」
「あのね!…えっと、なんだっけザジ?」
「わかってねーなら答えようとすんなよ…」

 

 ・

 ・

 ・

 

「この都市の北方に謎の遺跡がある、だと…?」

ペルセフォネの反応からして、件の遺跡はやはり未発見のものだったようだ。灯台下暗しとはこのことか…と姫は自嘲気味に肩をすくめた。

「素晴らしい発見だ。我々としても即座に調査に向かいたいが…」

言い淀む彼女の言によれば、探索を担当する腕利きの冒険者たちは先に発見された樹海の調査にかかりきりですぐには戻らないらしい。

「うむ、であれば…ストークスよ」

やおら立ち上がり、ギルドマスターたるザジに視線を合わせるペルセフォネに、ザジは慌てて居住まいを正した。

「第一発見者たる汝らに、その遺跡の調査を命ずる」
「お、俺…いや、我々にですか?」

思わず素が出かけたザジに、ペルセフォネはどことなく年相応さを思わせる悪戯っぽい表情を浮かべる。

f:id:homurabe_gren:20230425092850j:image

「汝らがまことの冒険者であるなら、誰より先に遺跡を探索できる栄誉を断ることはするまい?」

ザジの心に燻りつつけていた何かに、火がつく音がした。

「は…はっ!謹んで拝命いたしますっ!」

兵隊もかくやの大仰な敬礼に、ペルセフォネは破顔して「良い態度だ」と応えた。

 

「では、ミッションを発動する。汝らが実力、みごと証明してみるがよい!」

 

 ・

 ・

 ・

 

「さーて、忙しくなんぞ。まずは商会に寄って、昨日の戦利品売ってそいつを元手に買い物して…」

妙にそわそわしているザジの様子に、リコリスがぷっと吹き出す。

「あんだよ?」
「べっつにー?ま、夢がかなって良かったじゃないの」
「…覚えてたのかよ」

いつか、誰も知らない迷宮を見つけて、自分たちだけの力でそこを踏破し世界に名を刻む。

冒険者を目指してからこっち、全ての街の世界樹はすでに誰かが謎を解き明かしたあと。ザジの心は常に不完全燃焼だった。
一度だけ、その心情をリコリスには吐露したことがあったのだ。

「かなったわけじゃねえ。踏破すんのはこれからだしな」
「それもそっか」
「アテにさせてもらうぜ。俺は弱ぇから、ひとりじゃあ遺跡は踏破できねーからよ」
「はいはい。アテにしてちょーだいな」

 

 ・

 ・

 ・

 

再び件の遺跡…仮に“第一迷宮”と称された…へと足を踏み入れる。丸一日を犬探しに費やした結果、すでにかなりの広範囲を地図に記してはいる。

「とりあえず、昨日ライカを見つけたとこから探索再開だな」

請け負ったミッションは、遺跡調査…すなわちこの遺跡の地図を完成させること。そこに必要とされるのは、地図と己の脚と…

「…魔物!」
「邪魔すんなら片っ端から蹴散らしてけ!」

腕っぷしである。

数時間…空がほのかに赤みを帯びてき始めた頃、地図も見てわかるほどに埋まってきた。

「あとはこの扉の先か…」

先頭を歩いていレアが扉の前で急に足を止め、顔を顰める。

「…どした?」
「…なんかくちゃい」

このメンバーのなかでは鼻の効く方であるレアである。ザジたちには気づき得ない悪臭がこの扉の向こうにあるようだ。

「この遺跡で悪臭の元といえば、スカンクの魔物がいましたけど…」
「んー、そのにおいとはちょっとちがう…?」

レアいわく、昨日の探索時に浴びた悪臭を帯びた水滴のそれに近いらしい。

「うえ、あれかぁ…」

思い出してリコリスが身震いする。

「あれの元凶がいるかもしれねえってことか…ま、とりあえず確認しねえとな。開けるぞ…」

仲間たちの首肯を背に、ザジが石造りの扉を開ける。

「うっ…」

鼻腔に突き刺さるかのような刺激臭に、メンバーが一様に顔をしかめる。部屋の中は臭気由来だろうか、黄褐色のような霧が漂っているようだ。

「確かにあの水滴に近い匂いですねぇ…なんか肌までピリつく感じがしますよ」
『だがあの時ほど直接的な影響はない。この成分が水と結びつくのが厄介なのかも知れんな』
「…あ、みんな!奥!」

リコリスが指差した先、黄褐色の霧の向こうに、大きな影が蠢いている。やがて目が慣れてきたザジたちの視界に浮かび上がってきたのは、巨大な植物のような魔物であった。

f:id:homurabe_gren:20230425093042j:image

「この遺跡の主ってことか…うん?」

ザジが魔物の背後に、さらに奥へと続く扉を見つける。

「あいつを倒さねえと先には進めねえか…よし」
「やるの?」
「いんや、帰る」

ザジの返答に思わずずっこけるリコリスである。

「いや、ここまでくるのにそれなりに消耗してるからな。俺やリコリスはまだ精神力温存できてるけど、他のメンツはそうもいかねえし」

実際奥に入り込むにつれ、魔物の圧は少し増しているようだった。群れる魔物も増え、被害を最小限に抑えるために出し惜しみ抜きでスキルを使っていたものだから、特に前衛の二人と星詠みのベテルギウスはかなり精神力を消耗してしまっているのだ。

「もうすでに夜も遅いし、そろそろレアも限界ちけえ…よっこらせ」
「…ま、しょうがないか」

船を漕ぐ少女を背中に乗せて、ザジは遺跡を後にするのだった。

 

   −つづく−

 

 


というわけで初ミッション回。
過去作だと最初のマップの一部を埋めるのがお約束だったけど、今回は一応全埋め前提かな?

街の人々としては、宿屋主人のヴィヴィアン(と猫のマーリン)が登場。恒例の糸目キャラですが、過去メンに負けず劣らずな個性でございますなー。
ちょいと名前負け感をおぼえなくもないヴィヴィアンですが、今後化けるのか…?

さて、初ボス戦を前に石橋叩いて撤退を選ぶストークス。とは言え初ミッションなのでボス戦もそこまでやばくはないと思う(思いたい)ですが…はてさて。