前日に続けて樹海へのアタックを開始する。今回は直前で引き返した扉の先の探索だ。
先んじて見つけておいた抜け道でショートカットしがてら、採集ポイントで素材の確保も怠らない。
「まぁ、今の俺らの腕じゃ採れる量もたかが知れてるけどなァ」
「無いものねだりしてもしょーがないわよ。地道にやりましょ」
果たして件の扉を開けてその先へと足を進める。
「もっとガンガン行きたいところですけど、魔物も手強いですからねぇ…」
「まだいける、はもう危険…な。よく覚えてるじゃあねえか、ノノ」
「そりゃもうエトリアで散々扱かれましたし」
その頃のことを思い出したのか、ノノが渋い顔をした。
「あ、かいだん!」
大熊を掻い潜った先に、下階層に通じる階段を見つける。まだ余裕もあると判断して、降りることを選択したザジが合図を向けようとした刹那…階段の奥が俄かに騒がしくなった。
『ザジ、下から何か来るぞ!』
ベテルギウスの筆談を見るまでもなく弓を構えたザジだったが、数秒ののち警戒を解く。ややあって金属音を伴った足音が登ってきて、その音の主…マギニアの衛兵が現れた。
「ちょっ!どうしたの?傷だらけじゃないの…」
「た、助かった…」
ザジたちを見て気が抜けたのか、そのまま倒れ込む。慌ててリコリスが診るが、どうやら気を失っているだけのようだ。
「下で何かあったのか…?ともかくこいつをほっとくわけにもいかねえか…一旦ベースキャンプに戻んぞ」
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ベースキャンプに戻り、傷ついた衛兵を医務施設へと送り届ける。情報を共有しようと広場へ向かうと、衛兵たちが集まっていた。
「あの化け物め…!」
物々しい雰囲気を醸し出す衛兵たちの中に、見知った顔を見つけた。昨日の探索の際に知り合った、オリバーとマルコという二人組のギルドだ。
「おう!お前たちか。その様子だと、お前たちもやられた衛兵を助けてきた感じか?
「お前たちもってことは、あんたらもかい?」
「ええ。もっとも、残念ながら助けられませんでしたがね…」
悲痛な面持ちでマルコが目を伏せる。
「どうやら地下にとんでもねえ強さの魔物がいるらしくてな。生き延びた衛兵の話じゃあ、鮮血のような赤い毛を持つ熊に襲われたらしい」
オリバーたちは先んじて司令部に報告し、それによって司令部から討伐ミッションが発令されているという。
「ただ、いきなりはおすすめできないね。単純に樹海の下層は危険すぎるんだ…」
それなりに場数を踏んでいるであろう二人が躊躇するくらいなのだから相当だろう。ザジは忠告を受け入れておく。
「そうだ、ミッションを受領できるほど力をつけておきたいのなら、この近くで発見された別の迷宮に行くといい」
小規模の迷宮らしく、発見者からは“小さな果樹林”と名付けられたそうだ。
「…どっかで聞いたことある名前だなァ?」
「見つけたのはタルシス出身の冒険者だそうだよ」
「なるほど…あの樹海といい、どうもこの島はまるっとタルシスみてーな環境なのかね?」
さぁ、そこまではわからんが。とオリバーが腕組みをした。
「まぁ、鈍った体を鍛え直すにゃいいかもな。行ってみようぜ」
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“小さな果樹林”に入り込む。強い植物の匂いが鼻腔を突いた。
「ザジさん、小迷宮ってなんです?」
「タルシスに点在する高さも深さも無え小規模の迷宮でな。直接世界樹には繋がってないんだが、樹海攻略にはなくてはならねえエリアだな」
すれ違った衛兵の話によると弱そうな子鹿がうろついているだけらしいが…
「…なーんかタルシスでも似たような話聞いたことあんな…ま、警戒は怠んなよ?」
『心得た』
地図を書きながら歩いていると、池を挟んだ対岸に小鹿が跳ねているのを見かけた。
「あー、あいつか…やっぱり」
「タルシスにいた、しかさん!」
ザジ曰く、強さは衛兵の言う通りさほどでも無いようだが、迂闊に倒すと親が怒り狂って襲ってくるらしい。
「今の俺らじゃ倒せるとしても消耗が激しいし、まァ君子危うきに近寄らずだな。アレ以外にも厄介な魔物は多いし…」
と言ってる側から新手の魔物が出現した。
「マンドレイクに…うげ、ボールアニマルか。あのヒヒも居たしぶん投げられると全滅しかねねえ。早めに片すぞ!」
ザジの号令に、一同は武器を握りしめて応えた。
−つづく−
前回出番を端折ったオリバー&マルコがここで登場。
ここからはしばらく育成パートかな…うちのパーティ、腕を縛れる子がいないしちょっとレベル高めて行かんとしんどいわ…
ただ、そろそろサブパも鍛えたいし、リアルで時間かかりそうやな…💧
ちなみに、件のサブパについては次回あたりでちょこっと紹介予定。
一応、どっかで区切りつけないと他のリプレイが書けないんで、今回発令される熊退治クリアをそれにさだめます。
夏までに終わるといいなぁ…(トオイメ