【注意!】
本エピソードには、「ポケットモンスタースカーレット・バイオレット」「ゼロの秘宝」「碧の仮面」に関するネタバレが含まれています。
ゲームをまだ始めていない人で、これから楽しもうと思ってる方は閲覧をご遠慮いただくことをお勧めします。
問題ない方は、そのままどうぞお進みくださいませ。
↓
↓
↓
キタカミセンターに到着すると、オモテ祭りにきていた人たちの間ではちょっとした騒ぎになっていた。
「さっき石段上がっていったの、ともっこさまの…きぐるみか?中の人大変だなぁ…」
「今の、ともっこさま?本物!?」
「おれ、大人が言うこと聞かせるための作り話だと思ってた…」
その感想は人によってさまざまだけど、どうやら堂々と祭りの中を通って行っているらしい。
「そういえば、ともっこが奪ったっていう仮面って…」
「この先の社で保管されてるはず…まさかそれを取りに来た?!」
奥の社に飛び込み、管理人のおじさんにともっこの行方を聞くぼくたちだったんだけど…
・
・
・
「…しんっじらんない!!!」
ゼイユが髪をかき乱しながら憤慨する。
「おっちゃんたちめ…よりにもよってともっこに保管してたお面をあげちゃうわ、あまつさえキタカミもちでもてなしたとか…何考えてんのよもーっ!」
「仕方ないよ…ぼくたち以外の村人にとってはともっこは英雄そのものだし、そりゃ突然目の前に現れたらそういう対応すると思うよ?」
もしぼくが伝説の真実を知ることなく、スグリからも鬼について熱く語られることがなかったら、ともっこの味方をしていたかもしれない。
「しかもともっこたち、恐れ穴に…鬼退治に向かったって…」
伝承通りであれば、お面を奪われているオーガポンは大きく弱体化しているはずだ。復活したばかりとはいえ、3対1じゃ分が悪すぎる。早く助けに行かないと!
「そうね…じゃ、それはあんたに任す!恐れ穴に急いで!」
「ゼイユはどうするの?」
聞き返すと、ゼイユはぼくのリュックを漁ってオーガポンの碧の仮面と結晶の欠片を取り出す。
「今から家に戻って、じーちゃんにこれ直してもらってから行く!二手に分かれるよ!」
「わかった…じゃ、この子に乗って!」
そう言って、ぼくはモンスターボールをゼイユに手渡す。
「このボール…コライドンのじゃない。大丈夫なの?」
「恐れ穴までの道はわかってるし平気。直したらすぐ恐れ穴に行けた方がいいでしょ?」
コライドンにはゼイユの言うことを聞くように言い含めてからボールを開ける。
「アギャア!」
「わかった…じゃ、またあとで!」
コライドンにまたがって、ゼイユが風のようにキタカミセンターを飛び出した。
・
・
・
先日上がったときはヘトヘトになってコライドン頼りになってしまったが、ゼイユに預けてる今は使えない。道は覚えてるから、まっすぐ進めばどうにかなるとは思うけど…本当にあとから追いつかれないようにしないと。
「見栄張らずにコライドン預けなきゃよかったかも…」
でも、なんでか「ヒイロって軟弱なのねぇ…」とか言われそうで、それはなんか嫌だったわけで…
「待っててね…がんばってそっち行くから!」
・
・
・
鬼が山の奥の奥…普段は立ち入りを禁じられている恐れ穴に駆けつける。そこにはやはりともっこたちと…オーガポンがいた。
「…ぽに!」
ともっこたちに囲まれて攻撃を受けているオーガポンが、ぼくを見つけて声を上げる。傷だらけになったオーガポンを見て、全身の毛が立ち上がるような感覚をおぼえた。
「お前たち!その子から…離れろ!!」
山登りのあとで疲れているハズなのに、自分でもびっくりするくらいの大声が出る。その声でぼくにきづいたともっこたちが一斉にこっちを見た。プラザにいたときは感じなかったけど、なんというかイヤな気配が視線から感じ取れて、全身から汗が噴き出る。
「…お、お前たちなんか…怖くないぞ…!」
下がりたくなる足を必死に抑えていると、モンスターボールからマスカーニャが飛び出してくる。間に割り込むように立ちはだかって、ぼくの方を見て小さくウィンクする。
「…うん、きみと一緒なら、大丈夫!」
「にゃ!」
その様子を見ていたともっこたちが、ひそひそと話し合いをはじめ…しばらくしてそのうちの1匹が前に出た。たしかこいつは、ましら様…いや、マシマシラ!
「やっつけるよ、エルダ!」
鋭い爪が、陽光に瞬いた。
・
・
・
「ンンゲーッ!?キーッ、キーッ…」
エルダの"つじぎり"が炸裂し、マシマシラが地を這う。
「こらーっ!あんたらーっ!」
ちょうどそのタイミングで、コライドンにのったゼイユと…スグリも?…が恐れ穴までなだれ込んできた。
「3対1でよってたかって女の子いじめるなんて、ヒキョーなんてもんじゃないわよ!」
…って、え?オーガポン女の子だったの!?
「そうだけど…え?見てわかんなかった?」
「そ、そうなんだ…」
「ふたりとも、今そんなこと話してる場合じゃないべ!」
スグリのもっともな指摘に「そうだった!」とともっこたちに向き直るゼイユ。
「このあたしたちが揃ったからには、あんたたち…よみがえったこと後悔させてやるわ!!!」
姉弟がそれぞれモルペコとヤンヤンマを出して身構える。が、3匹のともっこたちは再び内緒話をした後、ぱっと弾かれるようにバラバラに飛び出して行ってしまうのだった…
・
・
・
「ハンッ!あたしの強さにビビったよーね!」
いつも思うけど、その圧倒的な自信はどこからくるんだろうか。ちょっとうらやましくはあるけど。
「…ヒイロ、あの…えっと…」
戻ってきたコライドンをねぎらっていると、スグリが袖を引いてきた。ゼイユが部屋にこもっていたところを引っ張り出してきたらしい。
「ほら、ちゃんと言いな」
初日みたく助け船は出さないからと突き放し、スグリの言葉の続きを待つ。
「お、お面のこと…おれ、カッとなっちまって…ホントに…バカなことさ、した…」
手を放し、正面に向き直って。ぼくの顔をしっかりと見て。それから勢いよく頭を下げた。
「だから…ごめん」
「…ぼくこそ、ごめんね。仲間外れにしたことと、ウソついちゃったこと」
「ん…そのことはねーちゃんとじーちゃんから聞いた…おれのこと考えて…だったんだろ?ウソつかせて、ごめんな」
「そんな、ぼくだって賛成したし…ほんとにごめ…」
お互いに頭を下げあってたところを「いつまでやってんの!」とゼイユにデコピンされた。赤くなったおでこを見て、二人でへへっと笑いあう。
「…なーんか…よかった!」
そんなぼくたちを見て、ゼイユが優しく笑った。
・
・
・
「ほ、ほんとに鬼さまじゃ…わや、めんこいなぁ…!」
改めてオーガポンと顔を合わせるスグリ。ずっと夢見てた瞬間だ。
「でもイメージ違ったんじゃない?看板の絵とも違うし」
「ホンネゆーと、ちょっとな…でも本物の鬼さまに会えたんだもん、そっちの気持ちのがつえーよ!」
ふふっ、すごく興奮してるや。ちゃんと会わせることができて良かったなぁ…
「ほらスグ、あんたからお面返したいんでしょ?」
ゼイユに促されて「そうじゃった!」とポーチからお面を取り出す。おじいさんの手で修復されたそれは、新品みたいにキラキラしていた。良かったねオーガポン。
「鬼さま…これ」
スグリがお面を差し出す。…けれど、オーガポンは少しおびえたようにさがってしまって、手に取ろうとしない。
「うーん…会ったばっかりだし、スグのこと怖いのかも」
「…ヒイロ」
そんなスグリが振り返って、ぼくにお面を手渡す。
「きみから返してあげて。おれじゃ、だめみたいだから…」
「…わかった」
悪いとは思いつつ、オーガポンに仮面を渡す。すぐにとてとて…と近寄ってきた彼女(?)が受け取ると…仮面をまとって嬉しそうに飛び跳ねた。
「ぽにおー!」
「ふふっ、喜んでる。ヒイロには心、許してるんだね」
なんかちょっと照れ臭かった。
・
・
・
「…やっぱりさ、残りの3つのお面もオーガポンに返してあげたいよね」
ゼイユが呟く。一応はキタカミセンターで保管したものだから許可なりなんなりいるのかもしれないけれど、本来の持ち主はこの子だもんね。
「今はともっこたちが持って行ってる。みんなバラバラに逃げたから、それぞれが1つずつ持ってるのかも」
「そーね…そう考えるのが自然だわ」
今回は追い払えたけど、またともっこたちがオーガポンを襲ってこないとも限らない。いまこの子の味方ができるのはぼくたちだけだ。だったら…
「そう、ここは打って出るとこ!オーガポン守りつつ、ともっこ成敗よ!」
ふふっ…なんかヒーローみたいだ。
「いいわね!じゃあ名付けて…『お面取り戻し隊』!」
…なんだろうこの残念なネーミングセンス。
「あによその目、なんか文句あるの?副リーダーの座スグにゆずるわよ?」
リーダーはすでにゼイユで決定らしい。…まぁいいけど。
「ってか、おれも…?」
スグリの疑問に「当たり前でしょ!」と言い切る。今度は仲間外れになんかしないよ。
「う…うん!」
「よし!そうと決まれば…まずはスイリョクタウンに戻って、ともっこ情報の聞き込みよ!」
━━えい、えい、おーっ!!!
三人とオーガポンの声が、鬼が山にこだました。
-つづく-
ともっこ復活からのオーガポン救出まで。
ふと思ったけど、ゲーム上どんだけコライドンで高速移動しても、目的地に着いたらもう後ろにいるスグリとかを踏まえると、キタカミ民の体力お化けなんかじゃなろうかと思わんでもないですねぇ…コライドンいらんかったのでは?実際ゲーム中ではいったんスイリョクタウンに戻ったうえで、マシマシラ戦のあとすぐにゼイユたち追いついてるし。スーパーマサラ人かあんたら(爆