【注意!】
本エピソードには、「ポケットモンスタースカーレット・バイオレット」「ゼロの秘宝」「碧の仮面」「藍の円盤」「番外編/キビキビパニック」に関するネタバレが含まれています。
ゲームをまだ始めていない人で、これから楽しもうと思ってる方は閲覧をご遠慮いただくことをお勧めします。
問題ない方は、そのままどうぞお進みくださいませ。
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「まてこのっ!…いけニョロボン!」
「ゲロボーンッ!」
猛ダッシュしながら呼び出したニョロボンがスグリと並走し、地面を蹴ってインファイトをくりだすが…拳や蹴りは空しく空を切る。
「んなっ、効いてない…!?じゃ、じゃあハイドロポンプだ!」
連続で撃ちだされるハイドロポンプだが、的の小さな謎のポケモンは悠々と回避していく。そのままの勢いで転がるように坂道を上り、スグリとの距離が開いていった。
「ぐっ…見失うわけには…!」
「スグリ!掴まって!」
最高速で駆けるマスラオの背から手を伸ばし、スグリを拾って同乗させる。相手は一見派手な桃色だけど、妙にくすんだその身体は、気を抜くと見失ってしまいそうだ。
「ヒイロ、あっちだ!」
ずっと追っていたスグリの誘導でマスラオを走らせていくと、たどり着いたのはともっこプラザだった。
「こっちさ、来たはず…」
闇夜に慣れてきた目を凝らすと、修復されたともっこ像と社の前に誰かの背中が見えた。あれは…
「ネモさん!?」
いや、無事なのはいいけど…キタカミセンターに向かってたはずのネモがどうしてこっちにいるんだろう?
「キタカミセンターから鬼が山を通れば、こっちに来ることはできるだろ?」
「そうだけど、この短時間で?それに、ネモってああ見えて体力無いほうだし…」
「ともかく、無事でよかっ…」
近づくぼくたちに気づいたらしいネモがくるりとこちらを向き…
「キビキビー!」
桃色の瞳をらんらんと輝かせ、もはや聞き飽きた奇声を張り上げた。
「そうだよね!!」
どことなく上品なステップで踊りながら、「キビキビ勝負ー!」とにじり寄ってくるそのさまは…
「…なんかちょっと意識残ってない?」
「…さすがネモ」
意識が残っているというか、闘争本能が解放されてる感じのネモの後ろを、桃色のポケモンが楽しそうに浮遊する。
「うう、ネモさんを操られたら俺じゃ太刀打ちできね…」
昼に実際に対戦してその強さを思い知っているスグリが歯噛みする。と、背後からも人の気配…この声…キビキビ?
スグリともども振り返ると、たくさんの操られた村人たちが!それに、おとなしくなっていたはずのおじいさんおばあさん、ペパーとボタン、ゼイユまで…!
「まずい!挟まれちまった…!」
「このまま囲まれたら、ぼくたち今度こそ餅を食べさせられちゃう!スグリ!」
「うん?」
ぼくはネモの前に立ち、スグリとゼイユたちに背を向ける。
「ぼくがネモを相手にする!だから…背中、任せたよ!」
「!」
肩越しに見えるスグリが大きく頷いて、ぼくに背を向けて。
「わかった…まかせて!いけ!カミツオロチ!」
ポケモンたちを一斉にくりだす村人たちに、スグリが相棒を呼び出す。
「村のみんなは…俺が足止めする!」
背中ごしに、スグリの熱を感じた。
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新たな手持ちを得て、さらに強くなったネモをなんとか制する…いや、アブリボンにジャラランガとかいつの間に捕まえて育てたの…?
「くきゅう…」
おとなしくなったネモはキビキビすら呟かない。あのポケモンに操られて色々無茶してなきゃいいけど…
「モモモ!?」
最強のボディーガードを無力化されて、謎のポケモンが目に見えて慌てている。さぁ、今度こそみんなを元に戻させてもらうよ!
「モ…モ…モモワロウ!」
大きな実の中から本性をあらわし、怒りに満ちた視線をぼくに向ける桃色のポケモン。さぁ…力比べと行こうか、ぽにこ!
「…がお゛ぼう゛っ!!」
今まで聞いたことのない雄たけびを上げ、ぽにこがツタこんぼうを振り上げた。
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桃色のポケモン…鳴き声を参照するなら<モモワロウ>だろうか…との戦いは一進一退。ぽにこの攻撃は通じるけれど、すばしっこく当てづらい。一方、相手の毒の鎖はくさタイプを有するぽにこには相性が悪いのだ。
「うぅ…もう持ちこたえられね…ヒイロ、早く…!」
村人たちを抑えていたスグリが悲鳴を上げる。さすがに10人を超える村人たちを相手にするには限界が近づいていたのだ。
「わかった!全力で行くよぽにこ!…竃の面に、おもかげを宿せ!」
「がおぉぉぉっっ!」
テラスタルの輝きを炎のきらめきへと変え、振りかぶったツタこんぼうの一撃が急所に当たった!
「ワ…ロロ…」
遂に力尽き、モモワロウがひっくり返る。
「あいつ、動きが鈍くなった!今だ!ボールに閉じ込めて!」
投げつけたボールがモモワロウを捕まえる。ポケモンが発揮している力や効果は、モンスターボールに閉じ込めることで無効化できるはずだ。これで…
「あれ?ここどこ…?」
「うちら、商店の前にいたよね…?」
「ペパーくん、ボタンさん!ふたりとも!気が付いたんだね!」
どうやら操られてからの記憶は残ってないらしい。他の村人たちも同じようで、首を傾げながら家へと帰っていくのが見えた。ネモは…?
「うぅぅ…」
みんなで駆け寄ると、ちょうど気が付いたようで…「キビキビ勝負―!」と叫びだした!?
「んぎゃっ!まだ呪われてる!?」
「…あれ?みんなどうしたの?」
どうやら寝ぼけてただけだったらしい。夢でぼくと戦ってたと言ってたあたり、さすがネモだなぁ…
「スグ!ヒイロ!?」
とにかく無事をスグリと喜び合ってると、背後から声をかけられた。この声は…!
「ゼイユ!」
「ねーちゃん!」
よかった…ゼイユも正気に戻った!大丈夫?気分悪くない?ケガとかしてない?
「ちょっ、なによなによ急にグイグイきて…いや、近い近い!」
「あ、ごめん…」
「ていうかこれ、何の集まり?オモテ祭りなら向こうでしょうが?」
首を傾げるゼイユに、ぼくたちはまた一から事情を説明するのだった。
-つづく-
とりあえず、番外編のストーリーはいったんここまで。
ゲーム上では数日後にパルデアに帰る4人で幕引きですが、この「数日後」をちょっと拡大解釈してしばらく番外編の番外編を書こうかなと思っております(ややこしい!)。
とりあえずはエピローグで語られたオモテ祭りの一見や、本来前編~後編でもクリア可能な各イベントを、キタカミ姉弟やホームウェイ組の面々を交えながら書けたらいいかなーなどとなどと。
これで…これでようやくゼイユとのイチャコラが書ける…(本音