【注意!】
本エピソードには、「ポケットモンスタースカーレット・バイオレット」「ゼロの秘宝」「藍の円盤」に関するネタバレ…は特に含まれていませんが、一応ストーリーを経た時間軸の設定の為、注意喚起です。
問題ない方は、そのままどうぞお進みくださいませ。
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「村一番のオニバルーン割り王と呼ばれてるこのあたしが…負けた!?」
戻ってきたぼくの戦果に、ゼイユが目を見開く。
いや、結構マスラオの能力フル活用してようやく勝てたところあるし、むしろオドシシであのスコアを叩き出せてたゼイユのほうがすごいんじゃ…
「ふ…ふふん、よくわかってるじゃないの。そーよ。つまり実質あたしの勝ちってことね!」
「ねーちゃん負け惜しみ…」
「っさいわね!手ぇでるよ!?」
悔しそうに歯ぎしりしながら、「もっかいやってくる!」とゼイユが足を踏み鳴らしながら受付に向かった。
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スグリやネモたちともう一周屋台を巡ってから、それぞれ興味のあるところにバラけることに。姿が見えないゼイユを探すと、風船の破裂音が遠く聞こえた。どうやらまだ鬼退治フェスに挑戦中らしい。オドシシにまたがって駆け回るその横顔や跳ねる黒髪、しなやかなじんべえ姿は、相変わらず綺麗で…ぼくは知らず息を呑む。
「なにぼーっとしてんのよ?」
「えっ!?」
気がつくとゼイユが隣にいた。なかなかぼくのハイスコアを越せなくて切り上げてきたらしい。張り切りすぎてほのかに赤らんだその顔を直視できずに、ぼくはそっと目をそらして。
「ちょーっとムキになりすぎちゃったわね…お腹も空いてきちゃったし。あんた、あたしになにかオゴんなさいよ」
「ええ…?そういうのって普通年上の人がオゴらない…?」
ついでに言えばスコアで勝ったぼくがむしろオゴられるほうでは…?
「うっさいわね。あんたのせいで鬼退治フェスにお小遣い注ぎ込んでもうサイフ空っぽなの!つまりあんたの責任なわけ」
「そんなめちゃくちゃな…」
とはいえ旅行に向けて多めにお小遣いは持ってきているし、オゴる分には別に問題ない。いいよとうなづくと、ゼイユはにぱっと笑ってぼくの手を掴んだ。
「よーし!じゃあ屋台全部ハシゴしていくわよ!」
「いや少しは遠慮してよ!?」
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手を繋いだまま、屋台を巡る。別に逃げたりするつもりはないし、もしスグリやネモたちに見つかったらどうしよう…とか思ったりするけど、同時にこのまま離してほしくないとも思って、何も言い出せず引っ張られるままだ。
「おっ、ゼイユ。スグリ以外の男の子と一緒なんて珍しいじゃないか?カレシ?」
フルーツあめ屋台のおじさんがそんなことを聞いてくるものだから心臓が口から出そうになる。
「ちがうわよ。友達…まぁ、弟分みたいなもん?スグと同い年だしさ」
「ふぅん…ま、いいや」
確かに彼氏とかではない。友達…と言ってくれたのは嬉しいけれど…弟分という言葉に、胸の奥が小さく痛んだ気がした。スグリと同い年…年下だと、"そう"は見られないのかな…?
「何にする?」
「あたしリンゴあめ!で、こいつにチーゴあめね」
「いや待ってそれめっちゃ苦いやつじゃん!騙されないからね!?」
ぼくの反論に「バレたか」と舌を出して笑うゼイユ。向かい合うぼくは…ちゃんと笑えているだろうか。
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キタカミセンターの奥、鬼が山につづく石段に腰掛けて戦利品を並べる。この辺りは提灯明かりも少なく人気もそんなにない。そんなところに二人きりで…何かありそうでちょっとドキドキしてしまう。
「祭りの賑やかなところで食べるのもいいんだけど、こうやって遠くでお祭りの雰囲気を眺めながら
食べるのもオツなもんなのよ」
…とくになにもなかった。
「…来てくれて、ありがとね」
焼きそばをすすっていると、ふとゼイユが呟いた。
「スグ、やっぱりっていうかあれから結構参っちゃってて…一週間くらい寝込んじゃったりもしてね。で、あたしが提案したのよ。キタカミにあんたのこと呼ぼうって」
「そうなんだ…」
「そしたらまっしぐらに桃沢商店でお手紙セット買ってきて、あーでもないこーでもないって手紙の内容考えて、書いたり消したり破いちゃったり…ふふっ」
その時の様子を思い返してか、ゼイユが含み笑いを浮かべる。メールしようかという姉の提案に首を振って、どうしても自分の言葉で手紙を書きたかったらしい。
「でもいざ書き上がって出そうってトコで尻込みしちゃってさ…しょーがないからあたしが取り上げてポストにねじ込んでやったわ」
「はは…」
なんとなくその様子が想像できて、今度はぼくが吹き出した。
「まぁ…それから昨日の夜くらいまで、ちょっとあたし記憶曖昧なんだけど…今日のスグ、すっごく明るくなってて。やっぱあんたたち会わせて正解だったわ」
そういえば、ゼイユがモモワロウの影響を受けたのは手紙を出した翌日だったっけ。
「でも、そっか…ゼイユもぼくが来るの、楽しみにしててくれたんだね」
「はぁ!?な、なんでそういう話になんのよ?!」
「だって、ゼイユが提案してくれたんでしょ?」
「それはそうだけど、でもそれはスグのためにって…」
それに、モモワロウのわざで操られてキビキビ踊ってたときも、まっさきにぼくのところまで来てたし。あのときスグリが言ってたこともあながち間違いじゃなかったのかも。
「そ、そんなわけ…」
「ないの?」
「…なくは、ないけど。あたしも…まぁ、あんたに会いたかった…し?」
ゼイユから聞けた言葉に、胸に残っていた小さな痛みが取れた気がした。リンゴ飴をかじりながら言ってたから、最後の方はよく聞き取れなかったけれど。
「…って、なにニヤニヤしてんのよ!?」
「し、してないよ!」
「いーやしてたわね!どうせヘンなことでも考えてたんでしょ、このスケベ!」
「スケベってどーいうことさ!?」
じんべえ姿ガン見しすぎなのよ!見とれなさいって言ったのゼイユじゃん!とかしょうもないことを言い合いながら、いつしか僕たちは笑い合ってて…
「何やってんの、ねーちゃんたち…?」
「うえっ、スグ!?」
そろそろ帰ろうとぼくたちを呼びに来たスグリが、呆れたような顔でぼくらをみていた。
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「やー、あそんだあそんだ〜」
「オモテ祭り、堪能したちゃんだな!」
「イーブイお面…あとでスター団のみんなに自撮りシェアしとこ」
公民館の消灯時間が近いので、残念ながらここでお開き。遊び疲れたネモたちは一足先に公民館の中へ入っていった。
「今日は楽しかったよ。ありがとう二人共」
「ん。明日も楽しんでくれな!」
おやすみ!と家へ帰っていくスグリ。同じく帰ろうとするゼイユと目が合って…なんとなく気恥ずかしくなって目をそらして、また合わせて。
「…じゃ、また明日ね」
「うん…」
なんとなく離れたくなくて、言葉とは裏腹に、二人の距離が少し近づいて。
「…これ」
ずい、とゼイユが食べかけのリンゴあめをぼくに手渡す。
「食べきれなかったから…あんた、処理しときなさい」
「ええっ?なんでさ」
「あんたが買ったんだもの。責任持って食べきりなさい」
いやオゴらせたのゼイユだし、っていうか食べかけをぼくに食べさせるとか、それって間接…
「いいから!じゃ、おやすみ!」
「えっ、あ、お、おやすみ…」
一方的にぼくにリンゴ飴を押し付けて、ゼイユが長い髪を揺らして走り去る。
「…甘」
ぺろっとひとなめしたぼくを、キタカミに浮かぶ月だけが見ていた。
―つづく―
せっかくホームウェイ組で祭り来てんのに前回含めて絡み少なくない?(
まぁ個々にイベント考えてはいるので…それぞれに担当回用意してるんですよ…一応…一応…
まぁ次回以降で。
というわけで久々の主ゼイ回。
お祭りという非日常でのイチャイチャがやりたかったんだけど…あれ?
前回のエピソードで割としっかり好意を自覚しちゃったのでぐいぐい行けなくなっちゃったかな…早いとこ告らせないと(使命感
今回1枚目に使用した画像は、バイオレット版でやってた時のスクショ。こっちでは先にヌシ戦すべて終わらせてから前編やったので割と余裕でクリアしました。
本文中でも書いてますが、ミラコラのフルスペック駆使したうえでやっとこ超えられるスコアをたぶんオドシシで攻略してるゼイユ何者…?てなるw
まぁ恐らく毎年やってるんで配置とか研究して攻略するタイプなんだろう。めいびー。
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