「ねぇねぇねぇ!キタカミ鬼面衆って知ってる!?」
公民館で朝食をとっていると、ネモがそんなことを言い出した。昨日オモテ祭りに行ったときに、キタカミセンターにいた人からウワサを聞いたらしい。
「あー…鬼面衆か…」
「スグリくん、知ってるの!?」
「知ってるって言うか…まぁ」
スグリ曰く、【キタカミ鬼面衆】とはオモテ祭りの一環で村人達の中でも腕利きのトレーナーが里の各地に陣取り、ポケモン勝負をする…といったイベントらしい。子供たちの足腰を鍛えることや勝負の楽しさを教えるのが目的らしい…のだけど。
「祭りさ始まる前に、ムラマサさん…あ、青年会の人な…に手持ちの調整手伝わされたんだけんど…強すぎるからちょっとレベル下げた方がいいっつったんだけどな…」
その懸念は当たったようで、あんまりにも強すぎたらしく肝心のターゲットであるキタカミっ子たちの参加はほぼないようだ。
「えっ?じゃあ強いの!?」
「あ…まぁ、うん。俺が手ぇ焼くくらいには…?」
「バトル特化のポケモン学校のチャンピオンが苦戦する強さかぁ…」
あ、ネモの目に火が付いた。
レッツゴー!とぼくとスグリを引っ張り、ネモが公民館を飛び出した。
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キタカミセンター前のお兄さん…ムラマサさんから鬼面衆の場所のヒントをもらう。なんだかふわっとして場所が分かりにくいなぁ…
「まぁ、スグリなら大体見当つくだろ?もともと地元っ子向けのイベントだしな」
「ん…大丈夫。じゃ、近場から行こっか」
ムラマサさんに頷いたスグリがぼくらを案内する。本当に近場だけあって、一人目はセンターのすぐ近くにいた。
「キタカミ鬼面衆さんですかー!?」
「いかにも!我は鬼面衆マサムネ!」
面妖な技で翻弄してくれよう!と、鬼の面を被った男がモンスターボールを構えた。
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「つっっっよい!たのしーっ!」
マスラオにまたがりながら、興奮しきりのネモが叫ぶ。ここまでに3人ほど相手にしたけど、チャンピオンランクのネモを相手に誰一人一歩も引けを取らないのだ。ひょっとしたらパルデア四天王やオモダカさんも苦戦するかもしれない。
「それでも勝っちゃってるんだからさすがネモさんだぁ…」
「いやホントにね…」
それでも苦戦はしているし、特に初手では押し負けてることの方が多い印象だけれど、そこから即座に相手の戦法を見抜き的確な反撃手段を用意して倒し切る。今更だけど、よくネモに勝てたなぁ…と思う。
「それはヒイロが強いからだよ!」
屈託なく言うネモの笑顔がくすぐったかった。
「…それにしても」
「うん?」
「子供相手のイベントでこんなところ歩かせる普通!?」
ぼくたちが向かっているのは次なる相手…の待っている場所なのだけれど…鬼が山の岩場をマスラオでよじ登っているところだ。足腰を鍛えさせるのが目的のひとつとスグリが言っていたが、それにしたってなぁ…
"鬼の角 長くなきほう 足場にして 我はあり"というヒントを解読したスグリの案内でここまで来て、相手と思しき人影は見つけたけど…
「ま、まぁオドシシさ乗ればどうにか行ける場所だし…」
「さっきもビックリしたよねー。てらす池にある洞窟から飛び降りるって!パルデアの宝探しみたい!」
「…アカデミーの宝探しってヒイロよりちっちゃい子供もやってんだよな?」
「…いやまあ」
ともかくマスラオでネモを送り届けて、戦いを見守る。がんばれ、ネモ!
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「カッカッカ!まさか某まで倒してしまうとは!」
「こっちこそ!全員倒したと思って寂しかったけど…もう一人戦えて楽しかったです!」
怒涛の勢いで七人の鬼面衆を全員倒したら、なんと鬼面衆のことを教えてくれたムラマサさんもまたその一人(裏鬼面衆と名乗ってたけど…)だった。
「オレまで倒せたの、多分アンタが初めてだぜ!強ぇな嬢ちゃん!」
「あはは…この子、パルデアのチャンピオンだからな!」
「マジか!そりゃつえーわ!」
ネモに完全制覇のお祝いを渡しながら、ムラマサさんがカカカと笑った。
「いえ!みなさんほんっとにすっごい強くて楽しかったです!また挑戦させてくださいね!」
「いいぜ!また来年のオモテ祭りで待ってるからよ!今度はもっとポケモン鍛えなおしてやっからな!」
「いやダメだべ!子供向けっての忘れてんでしょムラマサにーちゃん!?」
スグリのツッコミがセンター中に響いた。
-つづく-
ネモを主役にキタカミ鬼面衆をテーマにした回でした。
いやホントにガチ構成過ぎて何も考えず挑んだらマッハで返り討ちに合ったんですよね…前編は本編開始後すぐに突入したのもあるんですが。
本編クリア後に再戦してレベル差で押そうと思ったんですがそれでもほぼ毎回パーティ半壊したし💧
後潜伏場所…一部はフィールド上に普通に立ってたので会えたけど、明らかに普段行かない場所とかにもいるんだよ…正しくやりこみ要素なんだなァ…