炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【#ポケモンSV】ぼくの冒険レポート:キタカミ旅行に行こう!⑩~謎の美女カメラマン!サザレ登場【リプレイ風】

━━夜明けが来るすこし前に目が覚めた。

未だ夢の中にいるペパーたちを起こさないようにこっそりと公民館を抜け出して、ぼくはアップルヒルズへと向かう。朝早くから農作業にいそしむおじさんおばさんたちに軽くあいさつしながらきょろきょろとあたりを見回して…

「あ、見つけた!…頼むよ、エルダマスカーニャ!」

転がっていたリンゴの果実に混じったカジッチュを見つけて相棒を立ち向かわせる。数回の打ち合いで弱ったところにモンスターボールをぶつけ、無事にゲットだ。

「よし、これで準備はオッケー…」

「なんの準備?」
「うおあぁっ!?」
「わぎゃっ!?」

背後から急に声をかけられて跳び上がると、後ろにいた誰かも驚きのけぞる。

「って、なんだスグリかぁ…」
スグリかぁ、はねーべよヒイロ…」
「あ、ごめんごめん」

オオタチとの朝の散歩に出ていたところにぼくを見つけたのだという。

「まだみんな起きてなくね?早起きだなー」
「ちょっと早めに目が覚めてね」
「ふうん…そういや、さっき捕まえたのカジッチュ?」

ぼくが手にしたモンスターボールを覗き込む。

「カジッチュ手持ちにするの?何に進化させる?やっぱカミッチュ?」
「ええと…」

いつかゼイユとポケモン交換する用…あわよくば告白するキッカケ用…とはなんとなく言えず、口ごもるぼくなのだった。

 

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「あれ…?誰だろ」

カミッチュとカミツオロチのすばらしさを語りながらスイリョクタウンへ戻る途中で、スグリが人影に気づいた。「ほら」と指さす先を見るとポケモンに向けてシャッターを切る女の人がいた。スグリが誰かわからないってことは、少なくとも村人ではなさそうだけど。

「おはようございます!」

せっかくなのであいさつしてみる…けれど、ファインダー越しのポケモン…ガーディ?に集中して気づかない様子だ。ガーディがぼくに気づいてひと鳴きすると、ようやくこっちを振り向いてくれた。

「…おっ、なんだなんだ?気づかなかったよ。ごめんごめん」

振り返った女の人…サザレさんと名乗った…に自己紹介して、すこし話し込む。傍らにいたポケモンはやっぱりガーディだったけれど、ぼくたちの知るそれとは姿が違う。キタカミセンターの狛ガーディに似てるような…?

「へぇ!パルデアのチャンピオンにイッシュの学園チャンピオン!ってことはポケモンもいっぱい捕まえてたりする?」
「まぁ…わりと?」

スマホロトムからポケモン図鑑を呼び出して見せると、サザレさんは目を輝かせて画面に見入った。なんだか照れくさい。

「うん…いいね。よし、決めた!」
「はい?」
ポケモン捕まえ名人なキミたち二人にお願い事があるんだよ」

サザレさんからのお願い事とは、彼女がキタカミに来るキッカケになった一匹のポケモンのことについてだった。

「ガチグマって知ってる?」
「ガチグマ…ですか?」
「あ、ブルーベリー学園でちょろっと習ったことある」

スグリ曰く、大昔…ヒスイと呼ばれた地方に生息していたポケモンなのだという。学園のテラリウムドームでは、かつてヒスイ地方に生息していたポケモンの生態を再現し何種類か復活させているけれど、ガチグマは見たことないなぁ。

「ガチグマは再現がすっごい難しいみたい…よくわかんねけど」
「へぇ!その学園に大昔のがポケモンいるの!?行ってみたいなぁ…っと、話逸れちゃったね。そのガチグマってポケモンはね、普通おでこに黄色い月の模様があるんだけど…」

 

 ━━ワタシが探してるガチグマの月は…赤いんだ。

 

まるで血が重なったように滲んだ赤い色の月…ゆえに"赫月"。

「ワタシの出身は、そのヒスイ地方…今はシンオウって名前になってるけどね。だから赫月についての伝承も少しばかり残ってるんだけど、どうやら長い時を経てこのキタカミの里に渡ってきて住み着いちゃったみたいなんだ」
「ほぇ…全然知らなんだ…」

オーガポンをはじめとした伝承にそれなりに詳しいであろうスグリも知らない伝承か…

「まぁ、かなり用心深いみたいで、人間の前にはめったに姿を現さないんだって」

サザレさんの調査によれば、霧が濃い夜に赫月の目撃情報があったらしい。キタカミで霧の深い場所って言ったら…

「ん、とこしえの森だな」
「そう!さっすがジモティ!」
「ジモ…?」

聞きなれない単語にスグリが首を傾げた。

「うん、やっぱりキミたちとならあいつを見つけて写真を撮れるかも!そうすればきっと…」

決心したようにサザレさんが頷いて、改めてぼくたちを見た。

「二人とも…赫月を見つけるため、一緒に調査しようじゃないか!」
「おもしろそだな…やってみよっか、ヒイロ!」
「うん!やろう!」

ぼくたちの快諾に、サザレさんがにぱっと笑う。
ひとまず夜を待ち、とこしえの森でおちあおうと約束し、ぼくたちは一旦別れるのだった。

 

 

   -つづく-

 

 


鬼面衆回に続き、DLC前編で発生するミニ(?)イベントのサザレさんとアカツキガチグマの回を、今回はジモティーのスグリを添えて。

ガチグマや、彼女の親族(先祖?)と思しき存在は「LEGENDSアルセウス」の登場キャラクターなんですね。こちらは未プレイなのである意味新鮮な感情で見ていましたが、前世がヒスイ民…もとい当該作プレイヤーからとったらかなり胸熱だったんじゃないでしょうか。

基本バトルメインの鬼面衆イベと異なりそれなりにストーリーがあるので、今回はちょっと長めに尺を取ってます。とはいえ前後編程度ですが。

ゲーム中では当然ですがスグリはいないので、会話捏造が楽しいですねー。