【注意!】
本エピソードには、「ポケットモンスタースカーレット・バイオレット」「ゼロの秘宝」「藍の円盤」に関するネタバレが含まれています。
ゲームをまだ始めていない人で、これから楽しもうと思ってる方は閲覧をご遠慮いただくことをお勧めします。
問題ない方は、そのままどうぞお進みくださいませ。
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四天王との戦いをすべて制したことで、チャンピオンたるスグリへの挑戦権を得られることとなった。
「ヤツに挑むんなら、エントランスで受付してくれな。あそこのバトルコートでやっからなぁ」
カキツバタ先輩に頷いて、ぼくはきゅっとグローブを引いた。
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「いい加減待ちくたびれたよ。ヒイロにしてはちょっと遅いよな…四天王ごとき倒すのにさぁ」
エントランス前のバトルコートで、ゆらりと現れたスグリがぼくをにらみつける。
「スグリよう、よーっぽどヒイロんことが気になるんでやんすねぃ?」
「…カキツバタこそ、やけにヒイロに肩入れしてるみたいだけど…全部無駄に終わるだけだよ」
「さァて、そいつはどーでござんすかねぇ?」
どうでもいいけどぼくを放っておいて言い争いはしないでくれないかなぁ…一応当事者はぼくの方なんだけれど。
「…なぁ、キョーダイ。スグリの奴と…仲、良かったんだろう?」
きびすをかえしてバトルコートに行ってしまったスグリを見送りながら、カキツバタ先輩が問いかけてくる。
「ツバっさん的にはさぁ、あいつ気に食わねえ」
過去のスグリは自信のなさから現れる言動が、カキツバタ先輩には癇に障っていたのだろう。そして、今のスグリも…また。
「ポケモン戦わせんのだけは…誰よりも楽しそうだったのに」
「うん…それは、ぼくもよく知ってる」
林間学校ではじめて戦ったとき。弱点を突かれたことでさえすごく楽しそうに笑っていたのを思い出す。戦えることそのものも、ポケモンといっしょにいれることが何より楽しかったんだ。少なくとも、あの時のスグリは。そして今も…きっとそのはずなのに。
「ラクすんのが板に着いちまったオイラにゃできなかったけどよ…あいつの目ェ、覚まさせてやってくれな…キョーダイ」
…言われるまでもない。ぼくは大きく頷いて応えた。
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「…待ってたよ」
はじめて会ったあの時とは、まるで別人のようになってしまったスグリが言う。
「ヒイロを見返したくて…俺、努力したんだ」
素朴な方言交じりの声が好きだったのに。今はちょっと冷たげな口調。
「吐くほど勉強して…ポケモン強くして」
寝る間も惜しんでいるって聞いた。目元のクマはその証なのだろう。
「四天王蹴散らして…チャンピオンになって…それも…全部、全部、全部!!」
ボールを持った手に力がこもり、キッとぼくをにらみつける。
「今ここで…ヒイロに勝つため!!」
エントランス中に響き渡る絶叫とともに、スグリがボールを投げる。
「行ってこい!カイリュー!ニョロトノ!」
「一緒に行くよ…ぴろ!」
それから…きみも一緒に!
「…竃の面とともに、ぽにこ!」
フィールドに躍り出たぼくの相棒たちの姿を見つけたスグリが、見開いた目をさらに大きくわななかせた。
「よくも…今ここで!鬼さまさ!出せたな…ヒイロォォッ!しかもオオタチまで…俺への当てつけのつもりかッ!?」
「ぼくがどんなポケモンを出したって関係ないだろ!この子たちは…ぼくときみとの思い出だ!」
「くそっくそっ!あ、雨を降らせろニョロトノ!カイリュー!鬼さまなんか叩き潰せ!"ぼうふう"!!」
「こらえて、ぽにこ!ぴろ!まずはニョロトノを止める…”かみなりパンチ”だ!」
まずはそれぞれ対峙したポケモンを相手取る。雨に濡れたニョロトノが雷を帯びたオオタチの一撃を受けて沈んだ。
「クッ!わやじゃ…相性で負けてても…負けない!」
続いてボールが飛び込み、中から飛び込んできたのは人工ポケモンだ。
「ポリゴンZ!あんなよわっこいポケモンっこなんか…"はかいこうせん"じゃあっ!」
「まずいっ…ぴろ!」
「たぁっちぃ!」
ぼくの声に反応して、ぴろがその長い体を器用にくねらせ、攻撃を回避した。
「今度はカイリューに"れいとうパンチ"!ぽにこは…ポリゴンZに“ばかぢから”だ!」
カイリューへの一撃はとどめにはいたらなったが、ぽにこの鬼を彷彿とさせる怪力がポリゴンZを打ち砕いた。
「…運まで味方につけてるんか」
ひっくり返ったポリゴンZを回収しながら、スグリが呟く。今の一撃が急所に当たっていたようだ。
「ズルいよな…ズルい!ズルい!ズルい!!ズルい!!!」
「ズルってなんだよ!ポケモン勝負だよ!?急所への当て方だって勉強したんじゃないの!?」
急所に当たる確率自体は約4パーセント。当てやすい技や当てやすくする技、アイテムなんかでいくらでも強化できる。それを知らないスグリじゃないはずなのに…
「う…うるっさい!次はお前だ、ガオガエン!」
「くっ…手ごわいのばっかり出してくる…!」
「それはお互い様じゃ!そのオオタチなんなんだよ!さっきから!」
攻撃の合間に少し方言の混じった言葉のわざが飛んでくる。負けじとぼくも言い返すから、ポケモン勝負なのか口喧嘩なのかわけがわからなくなってきた。
「ぽにこ!カイリューにツタこんぼう!オオタチはガオガエンに”ギガインパクト”だ!」
ここでついに初手から陣取っていたカイリューが沈み、併せてガオガエンもダウン。ついにフィールドをがら空きにさせたぞ!
「いっ…いい加減倒れてよ!ありったけ…全部ぶつけてんのに!!」
喉が裂けるんじゃないかってくらいに大声を張り上げ、スグリがついに切り札を呼び出した。
「過去の俺はいらない!だから変わった…変わるんだ…!そうだろ?カミツオロチ!」
フィールドに降り立ったのは蜜いっぱいのリンゴ…それに巣くういくつもの竜だった。…カミッチュ?いや、進化したのか!?
「奮い立てカミツオロチ!テラスタル!!」
「だったらこっちも!さらなる輝きをまとえ…ぴろ!テラスタル!!!」
かつてキタカミでもぶつかったポケモン同士が、あの時は使わなかったテラスタルとともに激突し…
「…えっ」
飛び上がって勝利をしめしたのは、ぼくのポケモンたちだった。
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━━なーんだ、負けちゃったよ…
━━行こうぜ。
勝負が決まったとたん、観戦していた生徒たちが興味をなくしたようにばらばらと去っていき…その場に残ったのは、ぼくとスグリ、ゼイユと四天王のみんなだけになっていた。
「なぁ、スグリよう」
ぼくたちの健闘をたたえてくれたカキツバタ先輩が、膝をついたスグリに声をかける。
「オマエに勝てなかったオイラが言うのもなんだけどよ…前みたいに楽しくやろうや」
勝ちにこだわることは悪いことじゃない。ぼくだって負けるより勝つ方がいい。でも、そのために自分や、他の何かをないがしろにしていいものじゃあないはずだ。「見てるこっちが苦しいぜ?」と、カキツバタ先輩もそう言った。
「…けない」
「あん?」
だけど、ゆっくりと立ち上がったスグリにその言葉は届いていない。
「今度こそ…お…俺が…勝って…」
「スグリ…」
一歩前に出て、友達の名前を呼ぶ。一瞬肩をビクッとさせたスグリもまた、ぼくの名前を呼んで…そのまま肩を震わせていた。
-つづく-
いつぞやのネモとの最終戦をイメージした作劇をしてみましたが、ダブルバトルだとこれはこれで勝手が違いますねぇ…バトル描写ってホント難しい(だから避けてる←ぉぃ
どうせならとスグリの(割とアレな)バトル中セリフに合わせて主人公にも言い返してもらいました。口喧嘩なら余所でやれ(爆
でもこれくらいやった方が友情取り戻せそうじゃないです?ネリネあたりは気が気じゃないかもしれませんがw
これが現実のスポーツならテクニカルファウル食らうやつですw
で、実際のバトルなんですが…ちょっと拍子抜けだった感じなんですよね。レベルとか見返す限り当然というかカキツバタ先輩よか上なんですが、なんかこう…連携が他の四天王ほどうまくなかった感じで。全体攻撃とかもないし、こういっちゃなんですがぼくの基本スタイルと同じシングルバトル×2状態。さらにちょっと打たれ弱い感じで、弱点突かなくても等倍ダメージでワンパンKOしたのもあったりで…カイリューくらいかなすぐ落ちなかったの。…スグリ、本当に勝ったのカキツバパイセンに?(疑惑の目
…今気づいたんですが、そういえば相手ポケモン、ほぼオーガポン狙ってたんだよね…まさかそういう隠しルーチンあった?(爆
さて、当然というかこれで終わりじゃなく、藍の円盤はまだまだ続きます…