「あはっ、さすがだね!…うん、やっぱりヒイロを誘ってよかったよ!
フィールドから戻ってきたぼくにネモが駆け寄る。
「びっくりしたでしょ?ジムリーダーの使ってくるポケモン」
「うん、まったくタイプの違うテラスタルってあるんだね…」
「基本的にテラスタルって、そのポケモンがもってるタイプが反映されるんだけど、たまに違うテラスタルタイプのポケモンが野生で出てくることがあるんだ。うまく使うと相手の意表を突くことができるよ!」
普通に野生で出てくることもあれば、各地に時折出てくるテラスタルの洞窟のような穴の中にも出てくるらしい。
「そういうポケモンはちょっと手ごわいことがあるから、アカデミーではひとりで挑戦することは禁止されてるから、近くにいる他の生徒と協力するといいよ」
*
他の街に向かうというネモと別れて、次の目的地を考える。
マップアプリによると、このまままっすぐ先に進めば…ペパーが探しているスパイスの手がかりがあるらしい。
ぼくはペパーに一言メッセージアプリで連絡を入れて、現地へと向かうことにした。
・
・
・
「おう、来たかヒイロ!久しぶりだなー!林間学校行ってたんだって?」
途中でペパーと合流する。
「こっちのヌシはそこまで強くねえって話だったから最初に挑んだんだけどな…ほら、あれ見てみ?」
ペパーが指さす方を見ると、岩山の斜面をたくさんの大きな岩が転がっていくのが見えた。
「…なにあれ?」
「わからん…多分ポケモン…大空のヌシが転がしてってんだと思うけどな。近づこうにも危ないちゃんでよー…」
確かにあんなのにぶつかったらケガではすまないだろう。
「というわけでだ。ヒイロ、コライドンに乗せてくれ」
「コライドンに?」
「ああ。あいつのタフさならぶつかってもこらえられるだろうしな」
もちろん当たらないに越したことはないんだけど。ともかくコライドンを呼んで、二人でライドする。
「よっしゃあ!頼むぞヒイロ!」
「できるだけ避けてね、コライドン!」
「アギャス!」
・
・
・
「や、やりきった…うわぁ…死ぬかと思った…」
「お、おう…わりとヤベーことたのんでたな…わるいヒイロ…」
「あぎゃぁ…」
どうにかいわなだれ(物理)を回避して斜面を登りきる。ペパーから水筒のお茶をもらって一息ついていると、空気を叩きつけるような大きな音がとどろいた。
「なんだぁ!?」
「ペパー、あれ!」
はるか上空に、巨大な鳥ポケモンがいるのが見えた。あれが…大空のヌシ…
「ストォォォォクッ!」
キタカミでも見かけたポケモンだ…名前は確か…オトシドリ!
「くるぞ…かまえろ!」
「エルダ!"パワージェム"!」
猛烈な勢いで飛び込んできたヌシのオトシドリを、エルダでカウンター気味に迎え撃つ。吹っ飛ばされたオトシドリはふらつきながら、岩山の岩盤へと近づいていく。
「な、なにをやってんだ…?」
「見てペパー、なにか食べてるよ…?」
岩盤を砕いたオトシドリが、そこから何かを引っ張り出してついばんでいる。
「あれは…スパイスか!」
「スパイスって、ペパーが探してるっていう?」
「おうよ!やっぱり実在したんだ…秘伝スパイス!」
飛びあがりそうな勢いで喜んでいるペパーだけど、それ以前にこの状況をどうにかしないと手に入れることはできない。
再びこちらに向かってきたオトシドリと対峙する。
「岩を落とす危ねぇ奴には、しょっぱい敗北めしあがれってな…コジオ!」
「エルダ、交代!たのんだよ…ぴろ!」
・
・
・
巨大なヌシをなんとか追い払い、岩盤の向こうでオトシドリが食べていたスパイスを調べるために中へ突入する。
岩盤の奥は空洞になっていて、その先で緑色の葉がぼんやりと光るように生えていた。
「こいつが秘伝スパイス…スカーレットブックに書いてあるまんまちゃんだぜ…!」
そのスカーレットブックによると、この緑色のスパイスは【にがスパイス】と記されている。名前からして苦そうだ。
「効能は血行促進!要は血の巡りをよくして、身体をあっためる。免疫機能もあがるってこったな。よーし!」
ペパーはさっそくスパイスを採取して、ピクニックセットを引っ張り出した。
*
「お待ちどうさん!」
美味しそうな匂いとともに、ペパーができたてのサンドイッチを持ってきた。香りは爽やかで、とても苦みが強いらしいスパイスを使っているとは思えない。
「はっはっは。苦いってわかってるのに苦いまま使うことはねーよ。まぁ、味にメリハリをつけるためにアクセント的な苦みは残しちゃあいるがな」
まぁ、ホントに苦いかどうかは食って確かめてみな?と言うので、お言葉に甘えていただきま…
「アギャ!」
「うわ、コライドン!?」
サンドイッチの匂いをかぎつけてか、ボールから勝手に飛び出してきた。ぼくのサンドイッチを見るなり、よだれを垂らして鼻を鳴らしてくる。…しょうがないなぁ、食べる?
「アギャス!」
差し出した瞬間にサンドイッチが消え去った。…手まで食べられるかと思った。
「あーあ!せっかく作ったのあげちまってさ!お前のために作ったんだぞ?コライドンにじゃねーっての!」
いや、ぼくも半分こ想定で出したんだけどね…
「…ったくしゃーねーな…ほら、オレの半分やるから、たーんと味わって食えよ?」
・
・
・
「美味しかった!」
「おう!そりゃよかったちゃんだぜ!」
にがスパイスなのに、全然苦みがなくてびっくり。使い方次第とはペパーが言ってたけど、どういう使い方したらこうなるのか見当つかないなー。
「それにしても、サンドイッチを食べたコライドンがパワーアップするなんてねぇ…」
「サンドイッチつーか、スパイスの力だろうな。さすが秘伝スパイスちゃんだぜ…」
残りのスパイスを採取しながら、ペパーが感慨深げにつぶやく。厳密にはパワーアップというより、もとからあった力を取り戻した、というのが正しいらしいけど。
「こんなにも効果があるなら、きっと…!」
「きっと?」
「ん?あ、ああ…宝探しにも役立つんじゃねえかってな」
確かに。パルデアの大穴に行くためには、きっとコライドンの力も必要になるだろう。こうやってコライドンがパワーアップするなら、他の秘伝スパイスにもコライドンの役に立つなにかがあるかもしれない。
「よし、じゃあ他のスパイスのところにも行ってみようよ!」
「おう!…と言いたいとこだが、オレぁ片付け済ませてからな。おめーはほかにもやりたいことあんだろ?オレのことはほっといていいから、先に行ってな」
ペパーの厚意に甘えさせてもらい、ぼくは次の目的地を探すべくマップアプリを開いた。
-つづく-
序盤にタイプ外テラスタルの話をちょこっと。多分この時点でネモはテラスタイプを変更する方法は知ってるはずだけど、自分でたどり着いてほしいと思ってそうなので省略。
いわなだれ(物理)をガチでやるポケットモンスター。ミラコラ乗ってれば問題ない以前に、生身でぶつかってもスタート地点に戻されるだけってのもどういう状況なの…?主人公はあれか、スーパーマサラ人か(※ジョウト出身設定です)。
そういえばヌシポケモンの巨大さとの共通項があるキタカミの一部ポケモンたちもなにかしらあるんかなーって話をしようと思ったんだけど尺の都合で次回レジェンドルートに持ち越ししましょうかねぇ。