【注意!】
本エピソードには、「ポケットモンスタースカーレット・バイオレット」「レジェンドルート」に関するネタバレが含まれています。
ゲームをまだ始めていない人で、これから楽しもうと思ってる方は閲覧をご遠慮いただくことをお勧めします。
問題ない方は、そのままどうぞお進みくださいませ。
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翌朝。ぼくらより早く起きだしたマフティフに二人して顔を舐められる。
「はは…こいつ流の朝の起こし方なんだよ。…この感触、久しぶりだなぁ…」
よだれでビッチャビチャな顔でペパーが泣き笑い。
顔を洗って、母さんが用意した朝ご飯で腹ごしらえ。目玉焼きの味付けでちょっとしたバトルが勃発したけれど…やっぱり醤油は譲れないよねぇ?
「いーや!オリーブオイルに塩コショウがベストだっての!」
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コサジの灯台は、家を出て少し歩いた先にある。初めて来たときは、倒れていたコライドンに出会って海岸の横穴を通っていったから結構遠回りしたんだよね。そういえば、ペパーと初めて会ったのもこの灯台だったっけ。
「…ここが、アイツの研究所だ」
その灯台の1階に、オーリム博士は研究所を設けていた。ペパーも幼いころはよく遊びに来ていたという。
「しかしオレたち呼びつけて何の用なんだか…言い方悪いがただの学生だぜ?」
とボヤきながら、ペパーがポケットから取り出したカギを使って扉を開けた。
「…入るぜ」
長い間誰の出入りもなかったらしい研究所の中に新鮮な空気が入りこみ、ホコリが舞う。差し込む朝日にぼんやりとその中が映し出され…隅にあるモニターが、ぼうっと光った。
「なんだろう…?」
ノイズを散らしながらモニターの映像が少しずつ鮮明になっていく。そこに映っていたのは…
『ハロー、ヒイロ。それにペパー…来たね』
ペパーの母親にして、ぼくにコライドンを託した人物…オーリム博士その人であった。
『ワタシは今、パルデアの大穴…エリアゼロの最深部にいる』
そこで特殊なポケモンの研究を続けているという博士は、ぼくたちに最後の手伝いをしてもらいたいのだという。
『手伝いに必要なカギが、その研究所のどこかにあるはずなのだが…スカーレットブックというのだが』
「ブックって…こいつか?」
ペパーがリュックから取り出した本を見せると、オーリム博士は少しだけ表情を緩めたように見えた。
『ああ、ペパー…キミが持っていたとはな。それは都合がいい。ではそのブックを持って…このエリアゼロ最深部まで来てほしい』
そうすれば宝物のような経験ができると約束しよう…と博士が笑った。
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「エリアゼロに来いとか…簡単に言ってくれるぜ」
「そもそも、校則で立ち入り禁止だよねぇ…少なくともポケモンリーグの許可がいるはずだし」
「ああ。まぁその辺は母ちゃんがポケモン博士としての権限でどうにでもしてきそうなのがな…とはいえ、あそこはマジでヤバい…」
ペパーと冒険するきっかけになったマフティフの大怪我も、エリアゼロで起きたことなのだという。
「正直もう二度とカンベンって場所だけどな…でも、オマエは行きたい…んだよな?」
「…うん」
以前、大穴に行きたいという夢をペパーたちには話したことがある。その時、ちょっと渋い顔をしてた理由が、ここへきてようやくわかった。
「頼まれちまったし、オマエの夢でもあるんだもんな…友達が危険な場所に行くのを黙って見てられねえし…よし」
ペパーが回れ右して、研究所の出口へ向かう。
「表にでろ。エリアゼロでもやってけるか、ポケモン勝負で力試しだ!…主にオレのだけどな」
「それって…」
「オレも行くっつってんだよ。…母ちゃんに文句も言いたいしよ」
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灯台の前で、モンスターボールから出てきたマフティフとペパーが向かい合う。
「うしっ!マフティフも準備いいみたいだな」
マフティフも戦うの?大丈夫?
「はは。まぁオマエが不安なのもわかるけどよ、コイツ病み上がりだと思えねえほど元気ハッスルちゃんでさ」
ぼくに向けて敵意…というわけではないけれど、戦いたいという意思をひしひしと感じる。ペパーいわくもともとバトルが大好きな子だったらしい。ポケモン版ネモ…?
「まぁ生徒会長にゃ負けるけど」
「チャンピオンランクだしねぇ」
ともかく問題はないらしい。確かにペパーとは長い付き合いのようだし、年季の入った強さを感じる。こういうのキタカミでは相手にとって不足なし!っていうところだ。
「そんなわけで…スパイスで生まれ変わった新生オレたちの味わい!たーんとご賞味あれだぜ!」
ペパーが繰り出すのは、これまでの冒険で出会ったポケモンたちだ。ヌシとの戦いの直前に現地でゲットしてきた子が多いけど…
「初手は様子見…頼むぜ、ヨクバリス!」
「こっちもウォーミングアップだ…おいで、ウズメ!」
最初にバトルしたときに連れていたホシガリスが成長した姿から始まり、リククラゲ、スコヴィラン、パルシェン、キョジオーン…ヌシポケモンとの戦いでともに戦った仲間たちの進化系が、次々に襲い掛かる。頼もしい味方たちだっただけに、相手にすると厄介この上ない。それでもどうにか彼らを制した後、ついに本命がペパーの手から解き放たれる。
「行こうぜ…相棒!」
ここまでの相手をほぼウズメ一匹で対処して少しお疲れだけれど…相手は【あく】タイプのポケモンだ。このまま押し切れば…!
「…と思ってたら大間違いだぜ、ヒイロ!」
ニヤリと笑うペパーの手には…テラスタルオーブ?持ってたの!?
「はっは!ヌシポケモンとの戦いじゃ使ってなかったしな。まぁ、オレのオーブは…こいつにしか使いたくなくってさ!」
握りしめたオーブから黒い輝きが迸る。
「快気祝いのテラスタルだ!光っとこうぜ…マフティフ!」
マフティフがあくのテラスタルに輝き雄々しく吠える…本当に病み上がりとは思えないパワフルさだ…と見惚れていたら、しまった!一手出遅れた!
「どうした?オマエはテラスタル抜きか?」
「だ…大丈夫!」
切り札を先に切られたのはマズったけど、相手はあくタイプ…ウズメならテラスタル込みのあく技でもこらえきれるはず…!
「…って思ってたら大間違いだぜ?"サイコファング"!」
「効果はバツグンちゃんだぜ!」
がくりとひざをつくウズメをボールに戻し、次の一手を模索する。相手の切り札が一番の相棒なら…ぼくだって!
「たよりにしてるよ、エルダ!」
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テラスタルをまとったエルダの最高の一撃が炸裂し、マフティフを彩っていた結晶が砕け散る。
「…おつかれさん、惜しかったなマフティフ」
倒れこむ相棒をボールに入れずにそのまま抱えて、ペパーがねぎらいの言葉とともに頭を撫でた。
「強かったよマフティフ。まさかウチのウズメが一発KOされるとは…」
「はっは。そのためのサイコファングってのもあるけどな。つかオマエもコジョンドだけでウチの連中大半ワンパンKOしてんじゃねえか…」
改めて戦ってみてエリアゼロへの付き添いが自分だけだと心もとないとペパーがボヤく。
「危険だっつって校則じゃ立ち入り禁止にされてるけど、エリアゼロはポケモンが強いってのもあるが、わけわからん装置もゴロゴロしてんだ」
「確かにポケモンでメカ相手にするわけにもいかないしねぇ…ぴろに"かみなりパンチ"打たせたらどうにかなりそうな気もするけど」
「…オマエわりと脳筋なのなっつか、それでケリついてるならエリアゼロに挑むやつ全員でんきポケモン連れてくわ」
「デスヨネー」
話し合った結果、あと二人くらいは欲しいという話になった。実際オーリム博士からも、仲間を連れてきてもいいとは言われているしね。
「チャンピオンランクくらいの強い奴と、あとメカに強い奴がいいな」
「ピンポイントだね…まぁチャンピオンランク自体はぼくも目指してるけど、もう一人となると…」
「そらま生徒会長だわな。確かに適任だけど…オマエがチャンピオンになるまでテコでも動かなそうだな」
あとメカに強いとしたらボタンだけど、あの子も抱えてる課外授業(スターダスト大作戦)を片付けないと手伝ってはくれないだろう。
「ま、心当たりあるならまた勧誘頼むな。メンツが揃ったら、また連絡とりあおうぜ!」
とりあえず自分はマフティフともっと強くなっとく!と言って、ペパーはマフティフ連れ立って走り去っていくのだった。
-レジェンドルート・クリア!-
-冒険は…まだまだつづく!-
というわけでレジェンドルート・完!でございました。
序盤の朝のシーンはオリジナルです。ペパーの目玉焼きの好み含め(それはそう
テラスタルオーブは本来専門の授業を受けて認められないと貰えないアイテムということで、ジムリーダーはじめ強いネームドは持ってるんですが、モブ学生トレーナーは持ってないんですよねぇ。まぁモブとのバトルで毎回あの演出見せられてもダレるだけなんですが(言い方
ネモやペパー、ゼイユ・スグリ姉弟のように、学生でありながらバトル時の肩書が「ポケモントレーナー」になってるのは、テラスタルオーブを持つことこそがこの作品上、あるいはパルデアにおけるトレーナーとして証やステータスのようなものなのかもですね。後者の二人は前編時点でまだテラスタルを披露してませんが。
さて、3ルートのうち1つを完了。また番外編をはさんで、次の物語へと…!