【注意!】
本エピソードには、「ポケットモンスタースカーレット・バイオレット」「ザ・ホームウェイ」に関するネタバレが含まれています。というかネタバレしかありません。
ゲームをまだ始めていない人で、これから楽しもうと思ってる方は閲覧をご遠慮いただくことをお勧めします。
問題ない方は、そのままどうぞお進みくださいませ。
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【セキュリティに異常発生 セキュリティに異常発生】
【タイムマシンが危険にさらされています タイムマシンが危険にさらされています】
緊急事態を告げる電子音声が、タイムマシンの部屋に鳴り響く。
「わっわっわっ!何何何!?」
「またポケモン軍団来ちゃう!?何度でもかかってきなさい!片っ端から相手してあげるわ…っ!」
「少し黙ってろバトルマニア!」
オーリム博士としての自我を取り戻したAIが焦りを見せている。いったい何が…?
【障害を取り除くため…】
『コれは…まさカ…!?』
【楽園防衛プログラムを起動します…】
「お…おいおいおいおい!母ちゃん!これでタイムマシン止まんじゃあねーのかよ!?」
『博士はドウしても…タイむまシんヲ、止メタくなイノか!?』
「なんだよそれ!?」
【楽園防衛プログラムにより…オーリムIDを除く、すべてのモンスターボールをロックします】
「…なんだって!?」
慌ててモンスターボールを確認すると、そのすべてが光の鎖に巻き付かれ…開けることができない!
『…すマナい、子供たチ…キミ達では…もウ…不可能ダ…』
「母ちゃん!?どうしたそれ…!?」
ペパーの声に視線を向けると、オーリム博士の身体に、テラスタル結晶が浸食を始めていた。
『逃げ…テ…く…』
「博士!」
「母ちゃん!」
再び起動し、上昇していくタイムマシンの上で…
【オーリムAI…楽園最終プログラムに…上書き完了】
『邪魔者ハ…ハイジョスル!』
再び立ちはだかったオーリム博士が、ボールを投げ落とす。そこから飛び出したのは…
『往キタマエ…楽園ノ守護者ヨ』
「…コライドン!?」
ついさっきゲートをくぐっていった、もう一体のコライドンだった。
「くっ…出てきてエルダ!」
ボールを投げる…でもボールが開かない!
「ぴろ!ウズメ!…ぽにこ!」
全く反応しない中、相対するコライドンは悠然とぼくたちを見つめてくる。
「ダメ!こっちも使えない!これじゃ戦えないよ!」
「どうなっとんこれ…ハッキングも効かんし?!」
「ズリぃ…こんなの大人がやることかよ!!」
仲間たちのボールも同じようだ。どうすればいい…どうすれば…
何か手を考えようとポケットに手を入れたとき…何かに当たった。これは…!
「コライドンの…モンスターボール…!」
使えるのかな?全部のモンスターボールは封じられているし、なにより今のコライドンに、戦う意思は…?
「…いや、使えるぜヒイロ!さっきアナウンスで、オーリムID以外のボールをロックするっつってた!ソイツはもともと、母ちゃんがタイムマシンで見つけた…つまり、そのボールは…母ちゃんのIDで登録されてるはずだ!」
「そうか!それなら…!」
「…でも大丈夫なん?さっきは一瞬立ち向かったけど…あの子にとって、あいつはめっちゃ怖いいじめっ子なんよ…?」
ボタンの言葉に、手にしたコライドンのボールに視線を落とす。
「…きみの勇気を…ぼくは信じる。コライドン…ううん…」
同じ名前のポケモンを相手にするのに、同じ名前では呼ばない。
「行こう…!」
林間学校…キタカミの里で知った、勇気ある者の名…ずっときみに付けたかったけど…厳密にはぼくのポケモンじゃあなかったから、ずっと躊躇してた…でも!
「一緒に…!」
初めて出会ったときと… エリアゼロで見せてくれた勇気を…ぼくは称えたいから!この名前を…呼ばせて!
━━マスラオ!!!
全力で投げたボールから解き放たれた"相棒"が、ぼくの思いに応えて…
「アギャアアアアアアス!!!」
戦う力を、握りしめた。
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『コらイドんノ力ヲ…呼び戻シたカ。ダガ…そんナモの、我が守護竜ノ前でハ、何の意味モナいこトを教エヨう…』
「そんなことない!がんばれ!コライドン…じゃなかった、マスラオ!」
ネモの声援が背中を押す。
「教えてマスラオ!きみはどう戦う?」
「アギャス!」
「…わかった!まずは…"かえんほうしゃ"!!」
マスラオの大きく開いた口…サンドウィッチを美味しそうに食べていた口から灼熱の炎が放たれる。効果は…まずまずか。
『私ノ楽園ハ…壊さささささセなイ…殲滅■準備ヲ、開始スル…!』
「な、なんかヤバイのきそう…ヒイロ!どうにかこらえないと!」
「じゃあ文字通り…"こらえる"んだ、マスラオ!」
防御の構えをした瞬間、相手のコライドンの“ギガインパクト”が空を裂く。受け止め切ったぞ!
「ようし!よく耐えた!オマエらならやれるぜヒイロ!マスラオ!」
「続けて…"アクセルブレイク"だ!」
大きく回転したマスラオが相手に衝突した。手ごたえは…十分!
「でもあんまり効いてない!このままじゃジリ貧だよ!どうするの?」
「おいヒイロ、あと何が使えるんだソイツは!?」
「あとは“テラバースト”だけど…テラスタルオーブはさっき使っちゃったからチャージが切れてる…!」
「ん?…いや、ちょっと待ってヒイロ…テラスタルオーブ…光ってない!?」
ボタンの指摘にオーブを取り出すと…チャージが完了していた。なんで?
「そうか…このプログラムの発動で、テラスタルエネルギーがこの部屋の中に集まってたんだ!」
「マジかボタン!やれる…やれるぞヒイロ!テラスタルだ!」
「うん!…いくよマスラオ!勇猛果敢なる、竜の輝きをまとえ!テラスタル!!!」
ドラゴンタイプにテラスタルしたマスラオが、かつて自分を傷つけた相手をにらみつける。
「やれ!やっちゃえ!テラスタルで弱点突いて…いじめっ子、やっつけちゃえ!」
「勝とう…マスラオ!“テラバースト”ォォォォッ!!!」
竜の閃光が、ぼくたちの視界を光に染めた。
-つづく-
守護竜戦は実質イベント戦闘みたいなもんですね。仲間たちの助言がそのままヒントになってるという。
マスラオは言わずもがな「益荒男」ですね。コライドンには性別無いんですけど、一応ヒイロ君は男の子だと認識しているってことで。
マスラオという単語がモチーフの一つになってるポケモンがいることについては密に、密に…
もう終盤も終盤なので8割9割ネタバレしかない回ですねコレ。あとがきで言うのもなんですがホントに読むの気を付けて欲しいもんです。
次回でエピローグとして、一旦区切りということでどうかひとつ。