「…よし!」
テーブルシティの外に通じる門を開け、外に出る。いよいよ本格的な課外授業の開始だ。
ぼくの(ひとまずの)最終目標は、パルデアの大穴に行くこと!そのためには、何を置いても強くならなければならない。育てるポケモンはもちろんのこと、ポケモントレーナーとしてのぼくの力そのものも。そのためには色んなポケモンを育てていくことも重要だ。
「というわけで…よろしくね、みんな!」
キタカミで一緒だったフルシティ、マイティ、ロビン、ミズチを一時預けて、新たにポチエナ、コジョフー、カヌチャンを手持ちに加える。
「ニックネームはまた追々ね…それから、きみも」
「ぽに!」
ぽにこも一緒だ。ずっとキタカミでひとりぼっちだった彼女は、初めて見るであろう外の世界に興味津々に走り回っている。
「あんまり遠くまで行っちゃだめだよー」
「ぽにおー!」
ポケモン図鑑だと、好奇心旺盛って書かれてたっけ…目が離せないなぁ。
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チャンピオンクラスを目指すためには、パルデアの各地に点在するジムへ行き、そこのジムリーダーと戦い勝利する必要がある。もちろん大なり小なり難易度があるらしいので、駆け出しからセミプロまで自由に参加できるのだ。
そして、今日からはぼくもそのチャレンジャーの一人になるわけで…
「うん、じゃあ最初はセルクルタウンをお勧めするよ!」
「うわぁ!出た!」
「久しぶりに会って早々、ご挨拶過ぎないかな…ヒイロ~?」
背後から声をかけてきたのは、級友のネモ。前回の課外授業でジムに挑み、チャンピオンクラスに至った数少ない学生トレーナーだ。
「まったく…急に連絡よこさないと思ったら林間学校行ってたんだって?心配したんだぞ!もう!」
「ごめんごめん…」
それからセルクルタウンに着くまで、林間学校で捕まえたポケモンやバトルの話をひたすら質問攻めにあうのだった…
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「ここがセルクルタウンだよ!」
今はちょうどオリーブ祭りというのをやっているらしい。人々も多くにぎやかだ。
「ほら、こっちこっち!」
…まぁお祭り関係なくジムに引っ張って行かれるわけですが。
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ジムに来たものの、いきなりジムリーダーに挑戦できるかというとそう簡単なものではない。それぞれのジムで【ジムチャレンジ】というテストのようなものを受けて、それをクリアする必要がある…とネモが教えてくれた。
「今回は特別なジムチャレンジを行っています」
というジムの受付の人の案内を受けて、ぼくたちは街の外れに設けられた特設ステージへと向かう。そこでは大きなオリーブの実を模したボールが待ち構えていた。
「巨大なオリーブ玉に身体ごとぶつかって、ゴールに持っていくことができればクリアとなり、ジムの挑戦権を得られます!」
面白そう!よーし、やってみよう!
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ジムチャレンジも無事終了し、再びジムへ。クリアしたことを告げると、さっそくバトルフィールドに案内してもらうことに。
「がんばってね!ヒイロー!」
ネモの声援を背中に受けて向かうのは、ジムの向かいにあるお菓子屋さんの屋上。そこではすでにセルクルのジムリーダーがビビヨンと戯れながら待っていた。
少しふくよかな印象の美人さんだ。見た感じ、ジムリーダーというよりはパティシエさんみたいだけど…
「あらあら~…すてきなトレーナーさん、こんにちわ。パティスリー・ムクロジの店長…あ、ちがったわ」
こほん、と咳ばらいを一つ。
「いけないいけない…セルクルジム・ジムリーダーのカエデですね~」
実際にこの下にあるお菓子屋さんのパティシエとして腕を振るったりもしているようだ。
「虫たちを、小さなものとあなどるなかれ。足元をすくわれないよう、ふんばってくださいね~」
彼女の周りの空気が変わる。…戦いのそれだ!
「お菓子は甘いのがいいですけれど…むしポケモンは甘く見ちゃうと痛い目見ちゃいますよ~…さぁ、行ってらっしゃいマメバッタ!」
「ぼくのジムデビュー…最初の一歩はやっぱり君に決めた!おいで、エルダ!」
「かにゃ!」
エルダの鋭い爪と、マメバッタの強烈な蹴りが衝突した。
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「ふふっ、お強いですね~。むしポケモン相手にくさポケモン出してくるときは、ちょーっとびっくりしましたけれど」
「大事なパートナーですし、デビュー戦ですしね」
「なるほど…大事にされているんですね~」
にっこりと笑い、カエデさんが最後のモンスターボールを取り出す。
「でも、わたしも負けませんよ~!おいでなさい!」
そう言ってカエデさんが呼び出したのは…ヒメグマ?むしポケモンのジムリーダーが?
「さなぎを破り…強く大きく育ちましょう~! ヒメグマちゃん、テラスタル!」
カエデが手にしたテラスタルオーブが輝く。その光に導かれ、ヒメグマが隠された力を解き放った。
「あの光は…むしタイプのテラスタル!?」
「そういうことです~。テラスタルは、元のポケモンと同じタイプが発動するとは限らないんですよ。さぁ、驚いてくれたところで、もうひとつびっくりしてもらいましょうか…ヒメグマちゃん、"れんぞくぎり"!!」
ヒメグマの、むしの力を帯びた爪の連撃がエルダを襲う。れんぞくぎりはむしタイプの技だけど、むしテラスタルの力でそれが強化されているってことは…かわしてエルダ!
「かにゃ…っ!」
しかしぼくの叫びもむなしく、ヒメグマの攻撃によってエルダは大きく傷ついてしまう。
「ここまでか…戻って、エルダ!」
「ふふっ、いかがでしたか~?」
さすがにジムリーダーだけあって、思い入れだけじゃあどうしようもないか…
さて、どうしよう?むしポケモンに相性がいいタイプと言えば、【ほのお】タイプや【ひこう】タイプ…でもロビンは今手持ちにいないし、ぽにこは碧の仮面をつけている関係上ほのお技は使えない…そうだ!
「出番だよ…出てこい、ウズメ!」
「ホワッ…チャー!」
キタカミで出会った新たな仲間が場に躍り出る。
「あらあら…かくとうタイプで来ましたか~。確かにむしタイプの攻撃は半減されますけれど…それはあなたもおなじことでは~?」
「ウズメ…"つばめがえし"!」
「それは…!」
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「わたしのポケモンたち、み~んなむしの息です~。まさかコジョフーにひこう技を教えていたとは、ですね~」
帰ってきたウズメとハイタッチを交わしていると、カエデさんが倒されたポケモンたちをねぎらいながらやってきた。
「ともかくよくできました、ヒイロくん。ジムリーダーに勝った証として、ジムバッジを差し上げますね~」
そう言った彼女の手から、ジムバッチが乗っかったカップケーキが手渡された。
-つづく-
まずは再序盤のセルクルジム戦。入れ替えた手持ちも実のところ彼女の手持ちよりレベルが若干上だったのですが、ほんとにバツグン取れるのが、事前につばめがえし習得させてたコジョフーだけだったというね…
まぁ(レベルの関係で)ごり押しでもいけるんですが、せっかくSS書いてるのでそれっぽい戦いかたでやってみました。このスタイルがどこのジムまで持つじゃろかな…?w