「うおおおおおおおおっ!?」
今日はオレンジアカデミーに戻って、ペパーにマスラオの新能力を披露する。
「すげえすげえ!これ滑空とかじゃなくてマジで飛んでるちゃんじゃねえか!うひゃー!アカデミーの建物も大穴もひとっ飛びちゃんだぜ!なぁ、いったいなにがあったんだブルーベリー学園で?」
ぼくにとマスラオにしがみつきながらも、パルデアの空を飛ぶさまにペパーも大興奮だ。
「ええとね、ネリネって人が、学園のテラリウムドームに生えてた薬草を使って作った丸薬を食べたら飛べるようになったんだ!」
「マジかブルーベリーすげえな…」
「で、その丸薬のサンプルと薬草そのものも貰ってきたんだけどね」
コライドンが飛行能力に目覚めたあたり、その薬草ってひょっとしたら秘伝スパイスなのかもと思って、ペパーに調べてもらおうと思ったのだ。
「ふぅむ…?」
丸薬や薬草を少しかじって、味を調べてみる。一応人体に悪影響はないとネリネ先輩からは聞いているけれど、割とためらいなくいくあたり、食に関する探究心はどん欲だなぁ…
「味に関しちゃ、今まで採って食べてきた秘伝スパイスとは違う感じだな…多分5種類のうちのどれでもねえのは間違いないちゃんだぜ」
「だよねぇ…」
「つーか、同じ秘伝スパイスだったらマスラオが新たな能力に目覚めるとも思えねえしなぁ」
傷ついたマフィティフを直すためにペパーとともに秘伝スパイスを巡る冒険をした際、もう一体のコライドンとの戦いに敗れて力を失ったマスラオもスパイスを取り込むことで少しずつ力を取り戻していった。確かにその5種類のうちのどれかだったら新たに力に目覚めるというのは考えにくいのだ。
「かといってスカーレットブックにも載ってねえ6種類目の秘伝スパイスってのも、ちょいマユツバな話だよなあ…」
「作者…ヘザーや観測隊が6種類目に気づいてなかった可能性は?」
「ないこともねーだろうけど、それ言っちゃあキリがねえって」
それはそう。
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「人の味覚ってのは、大きくわけて5つあるんだと。なんだかわかるか?」
「ええと、甘味、辛味、塩味、苦味、酸味…かな?」
なんとなく秘伝スパイスのそれを思い浮かべて答えると、ペパーは「ちっちっち」と指を振って見せた。なんか悔しい。
「実は辛味ってのは痛覚ちゃんなんだとよ。要は舌が痛がってるわけだな」
かくいうペパーも先日修行に行ったハイダイさんから聞いたらしいけれど。ってことは、あと一つは?
「旨味ちゃん、だな。だしとかブイヨンとかに含まれてる…ええと、グルタミン酸とかそーいうのだ」
そしてペパー曰く、先ほどかじった例の薬草に、わずかながらその旨味を感じたのだという。
「ってことは…秘伝:うまスパイス!」
「ドロバンコみてーなネーミングだなおい…まぁそれ以外に名付けようもねーけど」
ただ、秘伝スパイスというには効果は薄そう…というのがペパーの見解だ。
「他にも薬草をブレンドしてその丸薬が作られたってんだろう?もしそれが秘伝スパイスだったとして、その効果が複数の植物に分散してたのかもな。そいつを、そのネリネ?って奴がうまいことブレンドしたらああなったってんなら、偶然だとしたらとんでもねえ運の良さだぜ…」
もし行く機会があったら生えてるところを見てみたい…とペパーが腕組みした。
「よっし…なぁヒイロ!メシ食ったらもっかい乗せてくれよ!今度はマスラオでパルデア一周しようぜ!」
「いいね!行こうか!」
「アギャス!」
ペパーのお手製サンドウィッチでご機嫌になったマスラオが、任せろと言わんばかりに頭の翼を広げて見せた。
-つづく-
ネリネ先輩のお薬(意味深)で飛行能力を獲得したコライドンについて、ちょっと考察じみた小ネタで一筆奏上…なんつって。
実際問題、現在生理学で定義されている「基本味」というのが甘・酸・塩・苦・旨の5種類ということで、そう言った意味ではあの秘伝スパイス、やっぱり6種類あったんじゃないかな…なんて。パルデアのモデルがスペイン…つまり、うま味の概念がこれまで存在しなかった外国であることを考えるとさもありなん、なのかも。実際うま味が世界に広く認知されたのはここ20年程度の話だそうですし。テラレイド周回しても6つ目の秘伝スパイスが出て来ないのは、パルデア的にそれをスパイスとして認識できていないのかもしれませんな―。
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