炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【掌編小説】no_title

「ひゃく…ひゃっく」

 無人の図書室に不可解な声がこだまする。

「…ひゃっく…うぅ~」
 受付席についた少女から、それは発せられていた。
「ひゃくっ」
 …しゃっくりだ。

(いつになったら止まるのよ、これ…)

 試せることは出来るだけ試してみた。
 水を飲んだり、呼吸を止めたり。
(…全然、収まらない……)
 ついた溜息と同時に、またしゃっくりが出た。
 体がぴくんと跳ね、眼鏡がズレる。
 最終下校時刻が近づき、図書室内にいる人間が自分以外なのが唯一の救いだった。
 しゃっくりが止まらないなんて、恥ずかしいにも程がある。

(100回しゃっくりしたら、死んじゃうのよね…確か)
 眼鏡を直しながら、少女は根も葉もない噂を思い出す。

「はぁ…っく」
 再び溜息交じりのしゃっくりが跳んだ。



「……わっ」
「うひゃあっ!?」
 突然背後からの声と、肩を叩かれた衝撃に驚き、少女はちいさな悲鳴を上げた。
「おっと…図書室内では、お静かに、だろ?」
「と、戸塚くん…?」
 振り返った少女の視界に飛び込んだのは、ケラケラ笑うクラスメートの姿だった。
「なにやってるのよ、こんなトコにこんな時間で…」
「借りてた本返しにな。つか、貸し出し期間過ぎてるから早く返しに来いっつたのはおまえだろーが」
 それよっか、と本を手渡しながら戸塚が言った。
「何?」
「しゃっくり、止まったみたいだな」
「…あ」
 そういえば。

「はっは。民間療法もやってみるもんだな」
 してやったり、と言わんばかりに笑う。
「あぶねーとこだったな。100回しゃっくりしてたら死んじまうとこだったんだからな」
「…それ、ウソよ?」
「…マジで?」


 さて、と戸塚が受付カウンターを飛び越えた。
「あ、こら。カウンターを飛び越えない!」
「堅いコトゆーなよ、図書委員」
「図書委員って呼ばない。図師凛って名前、ちゃんとあるんだから」
「あれ、そーゆー名前だっけ?」
「そーなの!」
 ふくれっつらで少女…凛が答えた。
「OK、憶えた」
 にぱっ、と戸塚がイタズラっぽく笑う。
「じゃ、俺そろそろ帰るわ」
「あ、うん」
「凛も早めに帰れよ」

  どきっ

 唐突にファーストネームで呼ばれ、心臓がひっくり返る。
「…あ、そうそう」
「?」
 熱くなってる顔を隠すように手で覆いながら、凛は戸塚に視線を向ける。
「お前のしゃっくり、結構可愛かったぜ♪」
「な―――ッ!!?」
 一気に凛の顔が真っ赤になり、眼鏡が曇る。
「はははっ。じゃーなっ」
 ちろりと舌を出し、戸塚は図書室を後にした。


「…も、もうっ」





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 マイミクのかなめ兄さんの日記からヒントを得て即興執筆。
 ネタにしてごめんなさいw(反省の色ナシ←ぉぃ

 勢いで書いたのでオチもへったくれもあったもんじゃありません。苦情等は受け付けませんので悪しからず(ぉぃぉぃ


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 ↑web拍手です。感想とか「こんなの読みたい!」的なリクエストも受け付けます。
  …書けるかどうかはさておきですが(ぉ