夏も通り過ぎ、少し涼しくなった夜空の下。
「やっ!」
「はあっ!」
若い声と、竹刀のしなやかな打撃音が響く。
4、5度ほど軽快なうち愛が続いたと思えば、しばし鍔迫り合いの後、互いに飛びのいて間合いをとる。
片方が懐に飛び込もうとした刹那、もう片方が、柄のぎりぎり下を握って、その間合いの外からやりの様に突き出す。慌てて竹刀で防ごうとしたが、鋭い打突は相手の竹刀を押し出し、額に打ち付けさせた。
「あいた!」
「…へへっ」
「…へへっ」
思わずしりもちをつき、目から火花が散ったかのようにしばたかせる少女に、勝ち誇ったように笑いながら、青年が手を差し伸べた。
「ちょっと休憩にすっか」
「…うん」
「…うん」
青年―――千明の手をとり、少女―――ことはがうなづいた。
「それにしても、千明、強ぉなったなぁ…」
スポーツドリンクを一口飲んでから、にこにことことはが言う。
「まだまだだっての。ことはにだって一本とるのは3回に1回くらいじゃねえか」
こんなペースじゃ丈瑠に届くのはすげー先になっちまうぜ…と頭をかきながら千明がぼやく。
「でも、焦ってもええことないよ。千明は千明のペースで強くなったらええって思うわ」
「…そっか。サンキュな」
素直に礼を言って、千明がことはの頭をくしゃっとなでた。くすぐったそうにことはが微笑む。
スポーツドリンクを一口飲んでから、にこにことことはが言う。
「まだまだだっての。ことはにだって一本とるのは3回に1回くらいじゃねえか」
こんなペースじゃ丈瑠に届くのはすげー先になっちまうぜ…と頭をかきながら千明がぼやく。
「でも、焦ってもええことないよ。千明は千明のペースで強くなったらええって思うわ」
「…そっか。サンキュな」
素直に礼を言って、千明がことはの頭をくしゃっとなでた。くすぐったそうにことはが微笑む。
「でも、うちら、みんなの中では強いほうやないけど、彦馬さんの言うとおり、前よりは強ぉなったと思うわ」
「へぇ、お前にしちゃ自信満々な発言だな」
「もぉ、茶化さんといてよ」
からからと笑う千明に、ことはが頬を膨らませる。
「へぇ、お前にしちゃ自信満々な発言だな」
「もぉ、茶化さんといてよ」
からからと笑う千明に、ことはが頬を膨らませる。
「…まぁ、実際強くなけりゃ、俺らだけでアヤカシと戦って勝つ…なんて出来なかったかもな。昔の俺のままだったら、あっというまに体入れ替えさせられて、やられてたかも知んねぇ」
しみじみと呟き、先のアヤカシ・アベコンベとの戦いを思い出す。
「あれは千明の機転もすごかったわ。あんなこと、うち、よう思いつかんもん」
そう言って、ことはが目を伏せる。
「…でもな」
「ん?」
「ん?」
「あーいうこと、できれば二度とせんで欲しい」
ふっと千明を見上げる瞳が、わずかに潤んでいた。
「な……」
その瞳が語る想いに気圧され、千明が言葉を失う。
「で、でも…お前だって賛成したじゃん…」
「それは、あの時はそーやないとダメやって思ったからで…」
口ごもることは。
ふっと千明を見上げる瞳が、わずかに潤んでいた。
「な……」
その瞳が語る想いに気圧され、千明が言葉を失う。
「で、でも…お前だって賛成したじゃん…」
「それは、あの時はそーやないとダメやって思ったからで…」
口ごもることは。
「と、ともかく。あんな危ないこと、これっきりにせなあかんよ!」
勢いで釘を刺され、思わず千明も「お、おう…」とうなづいた。
勢いで釘を刺され、思わず千明も「お、おう…」とうなづいた。
「そら、うちら侍やもん。危ないこととかいっぱいせな、人は守れんよ……」
呟きながら、そっと千明に近づく。
「せやけど……あの戦いのこと、後から思い出したら……ちょっと怖くなって」
不安げに千明を見つめることは。千明はふわっと笑って、ことはの髪をなでる。
「……そうだな。俺も、今思い出したらちょっとビビった」
おどけたようにそういうと、ことははくすっ、と笑った。
「ま、無茶しない程度に無茶するよ」
「なんやのそれ」
「なんやのそれ」
へんな言い草に、ことはが苦笑する。
「ことはが心配しない程度にってことさ」
「も、もぉ…」
茶化した風の千明に、ことはが再び頬を膨らませた。
「も、もぉ…」
茶化した風の千明に、ことはが再び頬を膨らませた。
「さ、てと」
よっこらせ、と立ち上がる千明。
「そんな無茶しなくても済むように、もっともっと強くなんなきゃな」
「…うん」
「…うん」
それに倣い、ことはも立ち上がる。互いに礼をし、竹刀を構える。
「いくぞ!」
「うん!」
「うん!」
再び、竹刀の音が秋の夜空に響き渡った。
-了-
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緑×黄! 緑×黄! 緑×黄!
というわけで、俺的に神回だった第二十七幕「入替人生」の後日談ネタ。
にプラスして、実は以前執筆した「寒稽古夜噺-かんげいこよばなし-」の後日談でもあったり。
あれ以来、ちょくちょく二人で夜稽古してますよー、という裏設定。
…いや、活かせばよかったんですが入れにくくて断念(ぉぃ
執筆中、なんかことはが精神的に弱い子っぽくなりかけて軽く焦る。
違うんだ!ことはは待つタイプのヒロインじゃないんだよ!
いっしょに並んで共に戦うんだよ!
いっしょに並んで共に戦うんだよ!
…などと自らに叱咤激励しながら書いてました。修造さんのよーに。
さて、それが功を奏しているかどうかは、皆々様の判断にお任せしますが(マテ
ちあきー!ことはー! おれだー! 結婚しろお前らー!(ぇ