炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

遊星からのZ/風無き都(まち)・プロローグ

 ―――突然、崩れ落ちるような感覚を憶えて、左翔太郎は目を覚ました。
 未だぼんやりする意識の中、左手が妙に痺れているのがわかった。同時に自分のいる場所が、探偵事務所の自分のデスクだと気づく。どうやら頬杖をついたまま居眠りをしていたらしい。

「いけね、寝ちまってたか……」

 あくびをかみ殺しながら立ち上がる。夕べは夜明け近くまで猫探しの依頼で町中を駆けずり回っていたのだ。どうにか見つけて依頼人に引き渡したのが朝の7時前。ちょっと仮眠を……とは思っていたが、座ったまま意識が飛んでしまっていたようだ。

「コーヒーでも淹れるかな……っと」

 コーヒードリップに手を伸ばそうとする良太郎の手がふと止まった。

「……うん?」

 妙な違和感を覚える。ややあってその原因に気づくが、それは翔太郎を余計に混乱させる要因となった。

「……“風”が……ない?」

 彼のいる<鳴海探偵事務所>には天井扇が備え付けられてるが、もともと空気の循環を目的としているため、それほど風圧は起こらない。
 それとは別に窓を開けているのだが、そこから毎日のように吹き込んでくる風が、今はまったくもって滞っていたのだ。

 まさかと思いながら外に出た翔太郎は、今まで見たこともない光景に己が目を疑った。

「マジ……かよ」

 翔太郎が幼少より慣れ親しんだ街……<風都>には、いたるところに風車があり、街のシンボルとなっている。風は無限に吹くものではなく、時折“凪”があることは翔太郎も知っていたが、それでもここまで風が止まっていることは、長年住む翔太郎にとっても初めてのことであった。

「翔太郎?」

 ふと背後からの声に我にかえる。翔太郎が振り向くと、一冊の本を抱えた少年が怪訝な面持ちでこちらを見上げていた。翔太郎の相棒・フィリップだ。

「ああよかった。気がついたらアキちゃんも翔太郎も見当たらないから何事かと思ったよ」
「亜希子がいない? そりゃどっか出かけてるんじゃねえのか?」
「ボクの記憶が正しければ数分前まですぐそばにいたんだよ。それが少し目を放した隙にね。ボクたちに声もかけなければ書置きも残さないなんてことはないだろう?」

 最近人妻になった童顔の所長を思い出す。確かに出かけるときは、それが火急の件のときでも一声かけてから出て行っていた。仮に旦那絡みでトラブルがあったとしても、特に自分たちに対しては必ず告げるはずだ。

「ちょっくら探しに行ってみるか。……なんか妙な感じがするしな」
「ああ、やっぱり君も感じていたんだね」

 そうつぶやいてフィリップが通りを一瞥し、翔太郎もそれに倣う。昼過ぎの風都……鳴海探偵事務所の前はそれほど人通りは多くないが、外回りのサラリーマンは行きかうし、それ以上にいたるところからの喧騒が風に乗って聞こえていた。

 しかし、今はそれが一切無かった。風とともに時すらも止まってしまったかのように、彼らの愛する街はゴーストタウンの様相を呈していた。



    *



 翔太郎とフィリップを乗せた緑と黒のツートンカラーのバイクが風都を走る。風都タワーをはじめ、風都の各所を回ってみたが、どこにも人影は無く、風車はどれも微動だにしなかった。

「おいおい……どーいうこったこりゃア。風都の人間がまとめて旅行にでも行ったのか?」
「そんな予定は無かったと思うけど」
「わーってるよンなこたあ」
 ヘルメットを脱ぎ頭をかく翔太郎。事務所前に戻り、バイクを片付けようとした彼の視界の端に、人影がよぎった。

「?」

 三度傘のような帽子を目深にかぶり、ぼろ布のようなマントで全身を覆っている。

「なんだありゃ、コスプレか?」

 首をかしげながら“それ”に近づく翔太郎。と、それを背後からの声が留めた。

「待ち給え翔太郎!」
「っ!?」

 刹那、翔太郎にもフィリップの言葉の真意が解り、飛び退く。傘の人影からにじみ出る無機質な殺気に、翔太郎は背中に冷たいものが這うのを感じた。

「なんだ……てめぇ?」

 ズレたソフトハットを直しつつ、問いかける翔太郎。“それ”は返事の変わりにやおら右腕を上げ、手にしていたブラスターのトリガーを躊躇無く引き絞った。





     仮面ライダーW・EXTRA
     遊星からのZ/風無き都(まち)






----------------------------------------------

 久々の仮面ライダーW関連のSSはまさかのゼイラムコラボ。
 これちゃんと理由があって、Pixivでこの作品見たのがきっかけ↓


 書きたかったんですがついさっきまで当方ゼイラム未見だったので手も足も出なかったと。
 地元の中古DVD扱ってるとこ探し回っても一向に見つからなかったので密林のお世話になりましたとも、ええ。

 とはいえ未見は未見なりに大雑把にストーリーは組み立ててて、実際に原作を見て設定に齟齬が無いかを確認する程度ではあったんですが。あと実際に見ないとゼイラムの怖さとかよくわかんないし。

 さて、今回は実際問題何シーンくらいで終わるのか皆目見当がつかない状態。原作がだいたい100分くらい。30分番組をイメージして描いてる「仮面ライダーBLOOD」なんかは5~6シーンを目安に書いてるので、15~6シーンくらいになるのかなーと今予想。最近この手の予想は本気で当てになってませんけどもw

 ところで、コレを考案中に、ゼイラム牙狼のコラボSSなんて案も出てまいりまして。
 まだストーリーラインは未定なんですが、組み立てれたらリハビリがてら書いてみようかなーなんて。