【クロスオーバー】ダブル×ゼイラム
天井扇による緩やかな空気の流れしか存在しない探偵事務所。戦いのさなかに突然現れた闖入者を招き入れた翔太郎は、その口からもたらされた話を聞いて、大きくため息をついた。 「ふむ……<捜索者>に<ゾーン>……そんでもってあのバケモノ……<ゼイラム>ねぇ…
互いの拳が頬を掠め合い、鈍い音が地面と大気を擦る。飛び道具を失ったものの、怪人の動きは変わらず、敵と定めたであろう<ダブル>を執拗に攻撃する。 「……こいつ、強ぇ」 幾合もの打ち合いでその実力を察し、その言葉に焦燥が混じる。だがその身体に怯み…
「どわっ!」 強烈なマズルフラッシュとともに、重々しい金属音が地面を抉り取る。再びズレたソフトハットを直すのもそこそこに、翔太郎はフィリップの下に文字通り転がり込んだ。 「問答無用ってか……新手のドーパントか?」 「翔太郎っ」 フィリップが翔太…
―――突然、崩れ落ちるような感覚を憶えて、左翔太郎は目を覚ました。 未だぼんやりする意識の中、左手が妙に痺れているのがわかった。同時に自分のいる場所が、探偵事務所の自分のデスクだと気づく。どうやら頬杖をついたまま居眠りをしていたらしい。 「いけ…