――ガイソーチェンジ
重々しいソウルの声とともに、紫紺の甲冑がオレの身体を包む。
腕が、足が、鋼を纏うたびに、オレはあの日の……初めてガイソーグに出会った日のことを思い出す。
わずかな情報にすがり、名も知らない荒れ果てた星でそれを見つけ、得られたものは最強の力と……飢餓感と、虚無感。
鎧の内に宿った、憎悪。それに自分自身を嫌う心を震わされ、オレを仲間だと信じ切っていた男をこの手で斬ってしまった。
それでも……コウはオレを仲間だと信じ切り。やがてその心と絆に……オレは救われることになる。
だから今度は……
「“不屈の騎士”ガイソーグ！」
ああ、今度は！
「オレの騎士道……見せたるわいっ！」
オレが、お前の……お前らのために戦う番や！！！
騎士竜戦隊リュウソウジャー ＥＸＴＲＡ ＳＴＯＲＹＳ＜ＩＦ＞
Ｅｐｉｓｏｄｅ ｏｆ ＮＡＤＡ
オレたちの憩いの時を破ったのは、ドルイドンの新たなる刺客、ウデン。
トワとカナロを、そしてコウたちを取り込み、その技を繰り出す強敵だ。バンバとともに立ち向かうオレたちだったが、やがてバンバもやられ、囚われてしまう。
「その胸のヤツの中に……みんな閉じ込めてンのやろ？」
たった一人になってしまったオレは、剣を握りなおして自らを奮い立たせる。
待っとれ、今すぐ助けたる……っ！
・
・
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――結論から言えば、ウデンは強敵だった。
もとより腕が立つのに加え、コウたちの技もコピーして襲ってくる。
対してオレは、リュウソウジャーに選ばれんかった半端者……その差は、誰が見ても歴然だっただろう。
事実、幾度となくウデンの剣に、オレは倒れ伏すこととなった。
……それでも！
「立ち向かわんと……後悔するくらいなら……立ち向かって……後悔するほうがええ……っ！」
ヤツの中で……あいつらかて、戦うてるんや！
「オレはリュウソウジャー……不屈の騎士やぁっ！！！」
俺の咆哮にも何ら動じることなく、ウデンの一閃が迫る。
「……っ！」
その切っ先が急所に届く前に、ガイソーケンの刃が押しとどめた。
「！？」
なんや、今の……？
間合いを取り直し、再びウデンと対峙する。その構えに、オレは確かに見覚えがあった。
いや、正確にはガイソーグとしてのオレだ。
ガイソーグは知っとる……。
ウデンがこれから繰り出すであろう、太刀筋を。
だから……
「っは！」
それのさばき方も、いなし方もわかる！
「――！？」
初めて剣を取り落とし、ウデンの能面みたいなツラが初めて動揺したように見えた。
「……そう、か」
これは……お前が知っとるんやな、ガイソーグ！
コウたちリュウソウジャーの装備。そのプロトタイプとして生まれたガイソーグは、今までにそれを纏った騎士や戦士たちの記憶がそのまま残されとる。
それはとりもなおさず、ガイソーグとして対峙したドルイドンのことや、装着者本人の戦い方の記録も残ってるということ。
「……ヒエヒエソウル！」
コウの凍てつきを帯びた斬撃！ わかるで……これはマスターレッドの太刀筋と全く同じ！
バンバとなんて、何度斬り結んだか分からん！ 今更簡単に食らうかい！
この動き……トワやな。あんたの弟子や、わかるで……なぁ、マスターグリーン！
いつしか攻守は逆転していた。焦りだしたウデンの一瞬の隙……どてっ腹がガラ空きや！
「っしゃおらぁ！！！」
オレの拳がウデンの胸元のバックルを割り砕く。その手を誰かがつかんだ気がして……力いっぱい引き上げる。
「……よう、おかえり」
「ナダ！」
膝をついたコウを引っ張り起して、背を叩いてみせる。
「よっしゃ！お前が来りゃ、百人力やな」
「フフッ……一緒に戦おう、ナダ！」
おう！残りのみんなも早よ助けな、な！
――口の中に溢れた鉄の味は、バレないように飲み込んだ。
－つづく－
リュウソウ３３話。衝撃でした。仲間になったのもつかの間の、突然の別れ。
ずっと、彼が生き延びるルートを書きたくて悶々としてたんですが……
ようやく日の目を見たのが最終話も過ぎてキラメイジャー始まってからってのがまぁなんとも……( = =)
そういうわけで始めたナダ生存ルートなんですけども。
今回、彼を死なせないために何が必要かを色々と考察しまして。そのうちの一つが
「ガイソーグの本来のポテンシャルを引き出すこと」ということに思い当たった次第。
仮説の域を出ませんが、ガイソーグが装着者の記憶を継承するのは、呪いの作用ではなく、戦闘データの蓄積の為だったのではないか。それが時を経るにつれて（おそらくは元から有していたと思われるマイナス感情の増幅という副作用と結びついて）あんな感じになっちゃったんじゃないかな……などとなどと。
この機能を引き出せたことにより、何とか致命傷を避けて、コウと並び立つことができたナダではありますが、まだまだ予断は許さない状況……？
