炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【#DGEX】16日目II:管理人と平手打ち

「とりあえず…追い出されずには済んだよ」

戻ってきたリーダーは、部屋にわたしたちを集め…そう告げた。

「今まで通りの生活をしてほしいってさ」

「…随分と無茶を言うものだね、管理人殿は」

ノアルが腕組みをして大袈裟にため息をついた。

「まぁ、いきなり大将ともどもここを追い出されてもアテはないからのぉ…正直、助かったというべきじゃが」

「それは…まぁ」

オヤカタの呟きに、ビアンカも遠慮がちに相槌を打つ。

「とりあえず、それだけ」

まだフランからの用事があるからと、この場を解散させて、リーダーは階上へ向かった。

 

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…なんとなく、後をつけてしまった。隠行の法で悟られてはいないからって、多分わたしは随分と酷いことをしているのだろう。

流石に管理人室には入らず、悪いとは思いつつ壁越しに耳をそば立ててしまう。

 

…そこで聞いたのは、ローナさんのことと、それからリーダー…デモンゲイザーのこと。

 

“ヒト”元に生み出されたデモン…デモンとなるべく生み出された人間。

ローナさんは、彼との戦いの中で邪眼の力を使い果たし…今回の悲劇のきっかけとなった。

けれどそれは、決して悪いことだけじゃない。

彼女との出会いが、そのデモンに人間としての魂を芽生えさせた…それがリーダー。

 

「ローナを殺したのはあなたじゃない。デモンよ」

 

管理人さんは言う。

 

「デモンを狩り続けなさい。あなたをこの地上へと、導いてくれた人のために…」

 

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「…いつまでそこにいるつもりなのかしら?」

ふと響いた声が、自分に向けられたものだと気づいてハッとなる。いつの間にかリーダーは管理人室を出ていたらしい。

隠行の法は切れていない…リーダーですら気付かない気配遮断を見抜いた?驚きつつも、大人しく術を解き、彼女の前に姿を見せる。

 

「…盗み聞きとは、いい趣味ね」

──貴女よりはマシよ。

「どう言う意味?」

──デモンゲイザーは…うちのリーダーは貴女の道具じゃない。

「…!」

──貴女が何者で、誰に自分の力を示そうとしてるかなんて知らないし興味ない。けれど、その為にリーダーを利用するのはやめて。

「……」

──しかも、そのためにローナさんまで利用して…!

「…ちょっと待ってよ。どうしてローナのことがそこで出てくるの?」

 

──彼があの人のことを好きだったからに決まってるでしょうっ!!

 

「…っ!?」

どうやらこの女は気付いていなかったらしい。…まぁ、わたしだって気付いたのはつい昨夜のことだ。

考えてみればわかることだ。人としての意識が芽生え、初めて出会ったのはローナさんだったと聞いた。何も知らないまま、闇の中にいた彼を引き揚げたのは。彼を導き、時に助け、時に褒め、労い…

彼のたった数日の人生の中で、一番心を占めていたのは…紛れもなく彼女だったのだ。

 

──デモンを狩り続けることがローナさんのため?違うでしょう!貴女は自分の目的のために…誰かに力を示すためにデモンを狩りたい。そのためにデモンを狩ることができるデモンゲイザーを利用してるだけ!

「違…!」

 

言い訳をしようとする管理人の口が止まった。いや、自分が止めたのだ。

ひりつく手のひらが、わたしが彼女の頬を張ったのだと気付かせた。

 

「…なんと言おうと、彼はデモンを狩り続けるわ」

──ええ、そうね。何も知らないリーダーにとって、それは最後の生きる意味だもの。だけど…

 

カチリ、腰に帯びた刀を握る手が震える。

 

──これ以上リーダーを苦しめるなら…その首、叩き落とすから。

 

「……」

 

──たとえ貴女が、神様の類いだったとしても。

 

踵を返し、管理人室を後にする。

「…あなたも、そうなの?」

 

壊れるくらいの勢いで閉じられたの向こうで、管理人が何か聞いてきた気がした。

 

 

   −つづく−

 


この考え方は、マイコの立場としてフランの(この時点での)言動を踏まえた際に思いついたものであり、解釈はそれぞれにあるものです。

まぁ、こののちに主人公と◯◯する(一応ネタバレ回避)するとは、初見プレイじゃ間違いなく思わないのはそうですが(ぇ

 

次回からは冒険再開予定…