炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【ラッシュSS】Episode RUSH_HUNTERS:01/シーン1【非公式ノベライズ】


 緑の一片も見当たらないむき出しの岩盤と、塔のようにそびえ立つ奇岩岩の群れだけが視界いっぱいに広がる荒野の惑星に、俺……と、あと二人はいた。

「来るぜぇ!」

 細長いテーブル状の奇岩石塔の上から様子を伺うマグマ星人の若者。そして、ガッツ星人の男が目を細めながらその先を見やった。

「狙い通りだ……!」

 我々の潜む岩塊を揺らしながら、巨大な足音が一歩一歩と近づいてくる。
 視界に入った巨躯の正体は……どくろ怪獣の異名を持つ、<レッドキング>だ。

 しかし、その容姿は一般に語られるそれと趣を異にしている。

 まずその大きさだ。もとより怪獣というものは巨大だが、今眼前にいるそれはその基準値をはるかに上回る。“一回り大きい”程度の言葉では語れない。
 そして、その巨躯の各所に露出する不思議な輝きを帯びた鉱石。

 これこそが、このレッドキングをここまで巨大化させたものであり……今回の俺たちのターゲットである、<プラズマソウル>だ。

 たったひとかけらで、小さな街なら1年、いや2年以上の生活を賄えるとも言われる超エネルギーを内包したその鉱石は、この宇宙のあらゆる惑星に存在し、ゆえにこの宇宙は<プラズマギャラクシー>と呼ばれている。
 しかし、その鉱石は滅多な事では手に入らない。鉱脈から直接採掘しても、ほぼ土塊同然の純度の低いものしか得られないうえに、鉱脈付近にはこのレッドキングのような<プラズマ怪獣>が出現するからだ。

 だが、プラズマ怪獣の存在は決してマイナスではない。奴らの体表から露出したそれは、超高純度のプラズマソウル。その一部でさえ高額で取引されるのだ。

 そこで必要とされるのが――俺たちをはじめとした、<怪獣ハンター>。プラズマ怪獣からプラズマソウルを狩り、駆逐する役割を担った者たちである。

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「さて……」

 口の中で呟く俺の背後で、レッドキングが地面を踏み砕く音が聞こえた。と同時に、その場に仕込まれた地雷が、怪獣の重量に反応して起動音を鳴らす。

 次の瞬間、仕掛けられた爆薬が一斉に炸裂し、プラズマ怪獣の巨躯が爆風に包まれた。

「倒れたところでプラズマソウルをゲット。取り分は俺が7。残りは、そっちの二人で適当に……」

 ガッツ星人の男が言い放つ。
 本来ハンティングで得た報酬(インセンティブ)は、チームを結成させた司令官・ハンターリーダーが一括で管理することになっている。
 しかし、俺たちを組ませた張本人であるハンターリーダー……ジェントとかいうあのうさん臭い男は、その権限をあっさりと蜂起していた。

 おかげでことあるごとにこのガッツ星人……ガルムとかいったか……は自らに有利なレートでの報酬獲得を主張してくる。もっとも、俺自身は報酬の分け前については興味はないのだが。

 傍らのマグマ星人……マグナと名乗った……も、今回は作戦の立案者がガルムということもあって異論をはさまない。

 と、不意に粉塵の向こうのシルエットが動いた。……と気づいた刹那、立っていた奇岩石の塔が突然揺らぎ、倒れだす。

「!?」

 視線を下に向ける。どうやら苦し紛れにか振るったらしいレッドキングの尾が、細長い岩塔を叩き崩したようだ。
 そのまま足場を失った俺たちは、重力の向くがままに落ちていく。

「っピンピンしてんじゃねえかよぉぉぉぉっ!!!」

 がなり立てるマグナの言葉通り、目を凝らしたその先で、無傷のレッドキングがこちらを睨んだように見えた。



     ULTRA FRONTIER MOVIE EDITION -Episode RUSH_HUNTERS-
     Target:01/REDKING_HUNTING



「トンだインチキ武器商人かよ……っ、カネゴン野郎!」

 悪態をつきながら着地したガルムが、自らの武器を手元に寄こす。即座に転送されてきた十字架を模したオリジナルのロングライフルを構え、一息にトリガーを引いた。

「“ホークアイ……ショット”!」

 直接レッドキングを狙うかと思ったが、しかし放たれた光線は大きく反れ、そびえ立つ奇岩石塔の一つを撃ち貫いた。細長くも巨大な岩塊が、ゆっくりとレッドキングの眼前を行き過ぎ、地面に落着する。こちらを追って進むレッドキングが、その衝撃に歩みを止めた。

 ――なるほど。まずは足止めか。

 ただでさえ巨大なプラズマ怪獣を相手取るのだ。動かさないに越したことは無い。
 そう感じた俺の呟きを、そばにいたマグナが耳ざとく聞いていた。

「っは! ……へへっ」

 嬉しそうに笑うマグナが、手をパン、と叩いて駆け出す。

「じゃあこっからは……俺の見せ場だぁっ!」

 奴の燃えるように鮮やかなオレンジの長髪と、背中に備わったマントが風に乗って翻る。素早くレッドキングの背後に回ったマグナは、一息に背中へと跳び、右腕に自分の武器を呼び出した。

「スティンガーサーベル!」

 “サーベル暴君”の異名を持つマグマ星人の最も得意とする武器を掲げ、プラズマ怪獣が背負うひときわ大きな鉱石の塊に、その切っ先を向ける。

「プラズマソウル……! うおおおおおおっ!!」

 ターゲットは逃がさないとばかりに吼え猛るマグナが、サーベルを突き出す。真紅のオーラを帯びた切っ先がプラズマソウルに触れた転瞬、プラズマソウルは微塵と砕け、それらは端からハンターズギルドへと転送されていく。

「スタンドプレーかよ……若造が」

 一部始終を眺めていたガルムが、吐き捨てるように毒づいた。

 そんなつぶやきを聞く由もないマグナが意気揚々とレッドキングの背中を滑り降りていく――

「……っな!?」

 そのマグナめがけ、レッドキングの巨大な拳が迫っていた。


   -つづく-



 
 ――おやおや、もうピンチですか……?
 マグナ、バレル、ガルム。私が選んだ<ラッシュハンターズ>!


 というわけで。
 大怪獣ラッシュ公式CGムービーの、非公式ノベライズだわーい(何

 等身大戦、巨大戦などいろいろ描写やってきた当方ですが、この作品のような、デカブツVS等身大というサイズ格差バトルってのはそうそうやってないのと、オリジナルキャラつかってのSS書くにあたっての世界観見直しも含めての……まぁいわば習作のようなものですな。

 ムービー版とゲーム版の世界観と設定の摺合せもやってみたり。劇中でやたらガルムがインセンティブインセンティブ言うてるけど、そもそも報酬はハンターリーダー(=プレイヤー)が一括管理してるやん。というツッコミを、「いやジェントなら丸投げるな」というやや失礼な返答でクリア(マテ

 まぁうまい具合に両者のいいとこどりができればいいかなーなどとなどと。

 さて、今回地の文を担当しているのはバレル。ムービーでの見せ場シーンはマグナ担当なので、順当にマグナにしゃべらそうかなーとも思ってたんですが、ソロシーンが多いと他のキャラクターのセリフが本人から聞こえないのに言わせられないということに気が付いたので急遽別キャラの視点からメインキャラの活躍を見て語ってもらおうとしております。
 幸いなことに、今回の「REDKING HUNTING」ではムービーは全3話となっており、ちょうど各話でそれぞれ一人ずつは見せ場あるのでやりやすいですしねー。

 可能ならPキラーザウルス編まで完走したいものですが……はてさて。