炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【#DGEX】番外編IV:道具屋と錬金大実験

「うーん…」

おや、どうした隊長殿?地図を前にうんうん唸って。

「やあノアル。次のデモンがいる所を調べてるんだけど…どうにもこのあたりの廃墟は粗方探し尽くしちゃったよなぁって」

ふむ…そうだねぇ。

「赤の旧市街でマルスを、奴隷墓場でクロノス…」

星樹のとばりでヘルメスを倒して…コメットも含めて討伐数は四体だ。まだいる…のだろうねぇ?

「うん。でも何処にいるのか…」

確か、奴隷墓場と星樹のとばりにはまだ探索してない箇所があったね。

「そうなんだけど、どっちも扉が塞がっててどうやったら開くのかわかんないし」

 

「…もうひとつ、探索できるところを知っているよ」

ふと、ぼくたちの会話に道具屋のレゼルムが割り込んできた。

「赤の旧市街の先で、炎に包まれていないエリアがあったのを覚えているかい?もともとデモンの影響下で燃え盛っていた街並みが、一角だけ燃えていないどころか水浸しだったろう?」

そういえば…

「その理由は単純明快。その近くに、別の力を持つデモンが潜んでいるからさ。赤の旧市街を支配していたのは、火を司るマルス。そのマルスの力が及ばないとなれば…」

なるほど水のデモンか。

「ご明察だよノアル君」

隊長、確かあの先には湖があったね。よもやその中に…。

「水の中にデモンがいるって?だとしてもどうやって行くのさ。泳ぐのだって限界はあるし、そもそも水の中じゃ戦えないよ?」

「ふっふっふ…そこでボクが造り上げた護符の出番というわけさ」

レゼルム曰く、その“海竜の護符”は、水中で自在に呼吸ができるという代物らしい。

「…まぁ今は手元にないんだけれどね」

だめじゃないか薬屋。

「あれ?護符って…もしかしてこれのこと?」

「え?」

隊長が懐からヨレヨレのお札を見せる。

「あぁ、これだよこれ…恥知らずの賞金稼ぎに盗まれちゃってねえ…ときに、これを持っていたやつはどうしたんだい?」

「多分だけど、土左衛門に…」

 

「!!!?」

 

 ・

 ・

 ・

 

レゼルムがとんでもなく取り乱し始めたので、隊長と二人で道具屋へと押し込む。ひとしきり呻いた後、深呼吸を一つしてぼくたちに向き直った。

「護符の件は仕方がない。天才、レゼルム・ランティールにも失敗はままあることさ…」

「でもその護符がないと水中探索はできないよね…」

レゼルムは少し考え込んだ後、「アテがないわけじゃない」と呟いた。

「“息吹のヴェール”という魔法具がある。これはさっきの護符なんかよりずっと強力なアイテムなんだが…作るのがとても難しくてねぇ」

でも…とぼくと隊長の顔を交互に見て、大きく頷いた。

「うん。君たちの力があればきっとこれを作れると思うよ」

本当かい?

「ああ。この道具には高い錬金技術もさることながら…なによりデモンの力が必要なのさ」

この世界には大きく分けて火・水・土・風の力が働いている。件のアイテムは、水の中で息ができるように、水を避けるための結界を、他の属性で作るというわけだ。いうは易しだが、行うは難しだ。

…理解できてるかね、隊長?

「ちょっと怪しい…」

「まぁ単純な話、君の持っているデモンの力をちょっと借りたいのさ」

つまり、火…マルス、土…クロノス、風…ヘルメスの力が必要ということだね。

もちろん断る理由はない。隊長も二つ返事で頷いた。

「じゃ、決まりだね。フフフ…久しぶりの魔法実験だ。心が躍るねぇ…♪」

 

 

   −つづく−

 

 


まるっとクエストイベントだけで一本書いてしまった…

さすがに日数カウントするのもアレなので番外編扱いで。ノアルくん出番マシマシ。

次回からようやく青の旧市街入り。