「今日はボスに挑もうと思う」
朝イチのミーティングで、キリクが口を開く。
「…いいよな、アノン?」
「なんでオレに許可求めてんだよ」
「いや、だって…」
前にオレから色々言われたんがよっぽど堪えてんのかねぇ…
「ま、問題はねえさ。オレらの実力は確実に上がってる。てかこの隊のリーダーはお前だろ?もっと胸張れ胸!」
…張るほど無えけど。
「わ、わかった!ぃよーっし!キリク隊、気張って行くぜ!!!」
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次なるボスゴブリン・アカブの砦に突入する!
「ギギッ!ニンゲンドモ、ニゲズニ ヨクキタナ! コノ アカブノ ツルギヲ、ウケテミロ!!」
同族をやられた恨みで怒り心頭のアカブが躍り出た。
「アノン!」
「おう!まずはキリク、イヅナ!怪我とか気にせず突っ込め!ナナシは陰からの攻撃!」
「委細承知でござる!」
前衛組が武器を構えて迎え撃つ。
「ディーネは出し惜しみ抜きで魔法攻撃!ウールは前衛組がケガしたら速攻でフォローだ!」
「お姉さんに~、おまかせあれ~♪」
そしてオレはひたすら狙い撃ちしつつ、状況をつぶさに観察する。
「イッチョマエ ニ サクヲ ネルカ!ソノ サクゴト ジュウリン シテヤル!!」
戦端が開かれた。剣だけでなく、強烈な魔法による攻撃は容赦なく後衛陣にも襲い掛かる。言うだけのことはあるってわけだ。
「長期戦は不利だ!一気に畳み掛けろ!」
「んなくそぉっ!」
想定以上に岩の魔法が効いているのは僥倖だ。先に戦ったウカブが雷の魔力を纏っていたからもしやと思ったが、ドンピシャだったようだ。
「オノレ…!」
「余所見してる暇はねえぜ…狙い撃つ!」
魔力を帯びた銃弾が敵の額を穿ち…ボスゴブリンは自分がやられたことを理解する間も無く、断末魔すらなしに倒れ伏した。
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「いよっしゃ!倒した!よーし、このままもう一匹のボスも蹴散らして…」
「調子乗んな」デコピンッ
「あでっ」
ま、元気を取り戻したのはいいことだがな。
「前と違って余力もあるしな。ボスはともかく、この砦内の魔物は片付けとくか」
「ああ!」
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無事に帰還し、晩飯を食っていると上機嫌のキリクが声をかけてきた。
「よっ、オッサン」
「オッサンはやめろと言ったろーが」
吐息に酒精の匂いが混じる。呑んでやがるな…
「だーいじょーぶ。百鬼族はみんな酒つえーんだよ」
といいつつ若干呂律が回ってないようにも見える。
「はっは!気分良いぜ。ボスもぶっちめたし、アンタへの借りもこれでチャラだな!」
「…借り?」
「おう、ちょーっとダセエとこ見せちまったけど、その汚名も見事挽回できたからな!」
…汚名は挽回じゃなくて返上するもんだ。
「いんだよ、細けえことは…とにかく!これでアンタとアタシは対等だ。いつまでも調子になんか乗らせねーかんな!!」
…やれやれ、あのまま凹ませといた方が良かったかね?
「決めた!アタシは絶対アンタをホントの仲間にして、竜王の塔を制覇する!偉大なる真の勇者隊の一員になれるんだ、光栄に思いな!」
「…やだ」
「ばっ…そこは嘘でも『光栄です』くらい言いやがれよーっ!」
…嘘でいいんかい。
「おらー!契りの杯じゃー!飲めコラー!」
「お前酔ってんな…?」
「酔ってねー!!!」
うわ酔っぱらいの常套句だ。
「あらあら~仲良しさんでいいですね~」
「ホントにそう見えるんなら眼医者薦めるぞディーネェ…」
紅い肌をなお紅潮させたキリクの絡み酒は、夜が白むまで続いた。
…ちなみにほかのメンツはとっとと寝室に逃げてた。こんにゃろう。
-つづく-
最初のボスたるウカブとの戦いはある意味前哨戦ですかね。難易度は急激に跳ね上がった感ありました。速攻しなかったらイヅナがやばかった💧
これがデモンゲイズならレベルを上げて物理で磨り潰すんだけどなァ…(物騒!
他の作品以上に属性の相性を加味してスキルビルドをしないとですねー。
キリクはメインヒロイン枠なんですが、一応ツンデレ枠も兼ねてましてね。
ヒロインズではギリギリまでアノンに懐かないつもりで書いてたんですが、ちょっとしおらしくなっちゃって焦りました。今回強引に初期値へ。
鬼といえば酒ですが、呑めはするけどかなり弱い方なイメージですね、ウチのキリクは。
意図せず新たな属性が加わりましたが、どうかな?w