炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【#モン勇】8日目:魔王との邂逅【リプレイ風】

デミヘイムの只中で、爆音と金属音がこだまする。

 

「今だ、ぶん回せキリクッ!」

「おおぉぉぉらあぁぁっ!!!」

 

鬼の腕力がもたらすフルスイングが、ボスゴブリンの側頭部にクリーンヒットし、綺麗な放物線を描いて吹っ飛んでいく。

 

「ギガグ…ッ!?バ、バカナ…ナゼ、オレ ノ タタカイ、コンナアツカイ…ッ!?」

 

悪いな、前の奴と同じような展開になったから端折らせてもらったぜ。

 

「メ、メタ、ァ…」

 

濃い魔力を撒き散らかしながら、3体目のボスゴブリンは消滅した。あれ、名前なんだっけ?

 

ナナシ「…アノンうじ、そんなことよりこれ」

「…アノンうじ、そんなことよりこれ」

 

しれっとひどいことをつぶやきながら、ナナシが袖を引っ張ってくる。どうした?

 

「なんか落ちてた」

「ん…こりゃ鍵だな」

 

そういえば、鍵がかかってて入れなかった扉があったな。まだ余力もあるし行ってみるか。

 

 

 ・

 

 ・

 

 ・

 

 

件の鍵…“獣人の鍵”とかなんとも大仰な名前の鍵で閉ざされた扉を開ける。扉がいくつも並ぶ回廊のような道をぐるっと周ると、いくつかこれまでの道すがらで見かけた宝箱をモノにすることができた。

 

「で、こいつが最後の扉か」

 

何と無く嫌な気配を感じて開けるのを後回しにしていたが、先へ進まねばならない。意を決して扉を開くと、その瞬間猛烈な気迫が俺たちを押し潰すように立ちはだかった。

 

「この感じ…こいつが…!」

「ああ、魔王…だ!」

 

大きな翼が風切り音を運び、上空からその気配の主が降り立つ。

 

 

「私は“獣人の王”フレイ。デミヘイムの魔物どもを統べるもの」

 

獣人の王を名乗るだけあり、姿だけ見れば超巨大なハーピーのようにも見える。脅威度は段違いだが。

 

「我が庭を踏み荒らすのは汝らか?ここは私の創りあげた豊穣の地。これ以上、汝ら害獣の好きにはさせぬ」

 

キリク「おーおー、言ってくれるじゃねえか手羽先野郎!言うに事欠いてアタシらを害獣呼ばわりとはな!」

 

「おーおー、言ってくれるじゃねえか手羽先野郎!言うに事欠いてアタシらを害獣呼ばわりとはな!ここは妖精の国だ、侵略者はキサマらの方だろうが、ああ?クソ魔王!」

 

棍棒を突きつけ、キリクが大見得を切り叫んだ。

 

「ほう…彼我の差も見極められず大口を叩くか。鬼風情が、我が勝利の双翼に指一本触れられぬと知るが良い!」

 

   ━━さあ、罰を与えよう!

 

猛烈な熱さを腹に感じる。と思った刹那、背中に激痛が走った。奴の足に蹴り飛ばされ壁にたたきつけられたと気づいた時には、口の中が鉄の味でいっぱいになっていた。

 

「アノンちゃん!?」

「だ…いじょうぶだ、ディーネ。まだギリ死んでねえ。ウール、回復頼む」

「わ、わかったー」

 

グズグズになった内臓が一瞬で元に戻る感覚。ある意味攻撃より気分悪くなりそうだが、なりふり構ってはいられない。

 

「お前ら聞け!残念だが今のオレたちじゃあこいつは倒せねえ」

「なっ…何言ってやがるバカアノン!」

「事実を述べてるだけだ、黙って聞けアホキリク」

 

もはや戦いは避けられない。このまま嬲り殺しにあうのが関の山だろう。

 

「だがオレたちには、あのクソ女王の加護ってやつがある。全滅させられるまでに、こいつの動きを見極めて…次に活かす!」

「お、お前…そんなもんにあぐらをかくなって…!」

「今はそれに賭けるしかねえ!どのみち魔王からは逃げられない!だったらギリギリまで…足掻いてみせるしかねえ」

 

…だろうがよ、勇者志望のキリクさんよ?

 

「…わかった、乗るぜ、そいつに!」

「それでこそだぜ」

 

口の中に溜まった血を吐き出し、銃を構え直す。今のオレらでどこまで通用するかはわからんが…

 

「奴の動きはオレが見取る!お前ら、悪いが…盾になってもらうぞ!」

「へっ、いっそ潔すぎるオーダーだ。よーしみんな、気張って行くぜ!!」

 

「死にゆく相談は終わったようだな。ならばキサマらを八つ裂きにし、その骸を我が(デミヘイム)の肥やしにしてくれようぞ!」

 

 

 ・

 

 ・

 

 ・

 

 

フレイが口笛を吹くと、どこからともなくハーピーが群れを成して飛んできた。まずはこいつらを片さなきゃ届かねえってことか。

 

「前衛はまずハーピーを落とせ!後衛はオレとフレイを攻撃!」

 

とりあえず支持は飛ばしたが…どう出る?

 

「遅い、遅いぞ地虫ども!」

 

とびかかってきたフレイが、足の爪をふるう。キリクを深くえぐりこむと同時に、陰に隠れていたナナシをも見つけ出し、爪をたたきこむ。

 

「あぐっ!」

「っ…!」

 

そこを逃さず、ハーピーがナナシにとどめの一撃を見舞う。もんどりうった忍びの少女が動かなくなるのに、さして時間はかからなかった。

 

「ナナシッ!」

「今は仲間に気を配るな!次が来る!」

 

フレイに向けて銃を撃つ。しかし、巨鳥はさも当然かのようにひらりと躱した。なんてスピードしてやがるんだこいつ…っ!

 

「フフフ…これが我の速さの底と思うなよ…!」

 

フレイは高らかに呪文を唱え、その身をさらに軽くしていく。くそっ、狙いが定まらねえッ!

 

「ディーネ!奴のスピードをどうにか落とせねえか?」

「ごめんなさい、魔力が~…」

 

ここに来るまでにも魔物との戦いがあったからな…しょうがねえ、とりあえず攻撃に回って…

 

ディーネ「いいえ…やるわぁ~!」

 

「いいえ…やるわぁ~!」

 

杖に魔力を込め、ディーネが呪文を唱えようとした瞬間、その身体が目に見えて硬直した。

 

「ディーネっ?」

「……」

「どうした魔法使い、カカシとなっているぞ!」

 

棒立ちになったディーネを、フレイがいともたやすく蹴り上げる。その身体は人の身体を保てずどろりと崩れ落ちた。

 

「これで二匹目…」

「ンなくそぉっ!」

 

キリクが我を忘れて怒り狂う。その隙は、ハーピー相手には致命的であった。反応がわずかに遅れ、斬り裂かれた傷をさらにえぐられたキリクは目を見開いたまま倒れ伏した。

 

「キリクどのーっ!ウールどの、回復をっ!」

「だめ…もう…間にあわ…」

 

首を振るウールの眼前で、キリクの回復を懇願したイヅナが魔法の炎に焼き尽くされた。

 

「ああっ…!」

 

普段のおっとり具合が嘘のように悲観にくれるウール。そのウール目掛けフレイの巨大な爪が降りかかり…

 

「動け―っ!」

 

咄嗟にかばうオレごと、腹を貫かれる。

 

「フフフ…脆い…!」

 

そのにやけた面構えと冷たい殺意に、オレはようやく気付く。

 

「てめえ、やっぱりあの時…の…!」

 

せめて一矢報いようと、銃を握りなおした刹那……オレの意識は途絶えた。

 

 

   -つづく-

 

 


とりあえず、初魔王戦。

難易度が序盤にしてデモンとかの比じゃねえ…いやまああれは少人数パーティでの戦闘ありきの難易度調整なんだろうけども。

あと、ボス戦経ての挑戦だったのでMP不足でスキルがほぼ使えなかったってのもありますが。

 

デクじいが言ってた通り(文中では出番ごと端折ってますが)、回避が半端ない奴ですね…これはディーネを攻撃に回すよりかスロー要員にした方がいいかも?

 

もう1日2日、強化に回してから再挑戦じゃーい!