炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【#モン勇】8日目II:ディーネのひみつ

   ━━みなさんは、私たちの希望です。何度全滅しても、くじけないで…

 

「勝手なこと抜かしてんじゃねー!」

遠ざかった意識に語り掛けてくる女王にブチギレながら目を覚ます。どうやら無事(?)蘇ってこられたらしい。できればそう何度も味わいたい感覚じゃあないが、今後もこういうことがおきそうな気はする。

「起きたか、アノン」
「おう、お前らも無事だな」
「そ、それが…」

 

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「ディーネが起きてこねえ?」
「うん…わたしたちと同じで、ちゃんと復活してるのは間違いないんだけど」

様子を見るために、ディーネの自室へ赴く。勇者ギルドは召喚された勇者全員に個室があてがわれているのだ。

「悪いな、入るぜ」

一応にも女性の部屋に入るということで、ノックと詫びの言葉を入れながら戸を開く。中ではウールが彼女を診ていたが、入ってきた俺たちにフルフルと首を横に振ってみせた。

「体力はーちゃーんともどってるのー。私のーわかるかぎりー、身体にー異常はーなさそうーなんだけどー…」

ウールが習得している魔法では起きてこないようだ。近づいてみると、小さな唇から呼吸しているのが見聞きして取れた。死んではいないのは間違いないだろう。

「いったい何が…」

脈をとってみようとその手に触れてみる。人の身ならぬ身体で脈が測れるのかはわからないが…

「…うぉっ!?」
「ど、どうしたのーアノンくんー?」
「い、いやこいつに触れたら急に疲労感?が…」

ウールに曰く、俺に突然現れたのは急激な精神力の消耗による症状のようだった。

「アンタ、魔法でも使ったの?」
「ガンナーが魔法使えるかよ…っていうかこの感じは、魔法とかスキルを使ったってよりは、吸い取られたというか…?」

「っ!み、見るでござる! ディ、ディーネどのの身体が…!」

イヅナが指さした先で、ディーネの全身が光っている。いったい何が起きてんだ…?

「ふわ……?」

と、その輝きの中で彼女の唇が動き…

「あら~、みんなおそろいで~どうしちゃったの~?」

ぱちっと開いた目でオレたちを見たディーネが、相変わらずのぼんやり口調で笑いかけた。

 

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「ごめんなさいね~、ご迷惑をおかけしちゃって~」
「いや、それはいいけど…一体何があったんだ?」

場所を大広間に移し、ディーネから事情を聴くことに。

「わたくし…見ての通りのスライムでしょう~? だからこの身体は~、全身これ魔力の塊なわけで~」

ディーネの発言によると、あの時、フレイに対してオレの指示で魔法を放とうとした瞬間は、魔法として発動するための魔力が底をついており使えなかったのだが…

「自分の身体の魔力で~、足らない部分をフォローしようと思ったんだけど~、魔法を発動しかけた瞬間に…」

なるほど、彼女の身体を構成する魔力は、単に身体を形作っているだけでなく、彼女自身の自我をも内包していたのだろう。ゆえに、その魔力がほんのわずかでも削れたことで意識を保てなくなった。それは女王の力で復活しても削れたままだったのだが、あの時ディーネに触れたオレの精神エネルギー…要は魔力を取り込んだことで、自我を再構築できた…とういうのが事の真相のようだ。

「悪い。そんなことになってるとは…オレの采配ミスだ」
「あなたのせいじゃあないわ~。無理してでも魔法を遣おうと考えたのはわたくしだもの~。むしろそのせいでみんなを危険な目に合わせてしまって…本当にごめんなさいね」

いや、それこそ気にするな。フレイとの戦いは全滅前提だったからな。

「とにかく、原因が分かった以上は、今後同じようなことは二度とすんなよ?」

 

ディーネ「そうね~…アノンちゃんに心配かけさせるわけにもいかないし~?」

 

「そうね~…アノンちゃんに心配かけさせるわけにもいかないし~?」
「ばっ…心配したわけじゃねえ!戦場で意識を失うことが危ねぇから言ってるだけで…」

ころころと笑いながら、ディーネが「またまた~♪」とオレの頬をつついた。

 

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ディーネが無事復帰したので、今回の戦いを振り返る。

「とにかく相手がとんでもなくすばしっこい。そこへきて素早さを上昇させる魔法まで使ってくるから尚のことタチが悪いな」
「どんだけアタシらが攻撃力を上げたとしても、当たらなきゃどーってことはないもんなぁ…」
「ぎ、逆に言えば…きゃつの強みは、そ、その速さだけと言えるでござろうから…それを封じることができれば…」

となると、ディーネの遅延魔法が要になってくるか。

「そうねぇ…でも、わたくしの魔法だけだと限界がないかしら~?」
「アイテムも…一緒に使う。こういうの、あるし」

とナナシが取り出してきたのは嫌な気配を纏った石ころだ。

「“のろのろ石”って言うんだって。遅延魔法と同じ効果があるみたい。チュッケのお店でも扱ってたから、買っていくといいと思う」

そいつはいいな。女王から軍資金も貰ったし、いくつか買い込んでおこう。

「あとは…アタシら自身のパワーアップだな」

キリクの言うとおりだ。可能な限り魔物を狩り、武器を仕入れたり、あるいは使いこなしたり、スキルもこなせるようにしなければ。

 

ウール「つーまーりー、いーつーもーどーおーりー」

 

「つーまーりー、いーつーもーどーおーりー」

…いやそれはその通りなんだけど改めて言葉にするのやめてくれませんかねウールさんや。

「ま、まぁ方向性はひとまず決まったな。今日はもう遅い。一度死んだ後だし、まずは身体を休めとけ」

オレがそう締めて、メンバーは思い思いに頷いた。

 

   -つづく-

 

 


ディーネの「身体を構成する魔力を消費すると意識を失う」というのは、もはやレトロゲーに片足突っ込んでる「ギャラクシーエンジェルII」のとあるキャラクターの設定を参考に。

さすがにゲームで再現はされませんが(できてたまるかい)、もし足りないMPをHPで補う技能とかあったら…いやいや💧

 

10日目くらいをメドにフレイ落とせるといいけどなぁ…それだと強化に回せるのが実質1日分だけなんだけど。