炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【#モン勇】16日目:ウールの毛並みとナイトルーティン

キリク「宝箱の質は悪くねえんだけどなぁ…あんまり強い武器って出てこねーのな」

 

「宝箱の質は悪くねえんだけどなぁ…あんまり強い武器って出てこねーのな」

今日も今日とてビスへイム。倒した魔物から回収した宝箱を開いたキリクの感想がコレである。

「肝心の宝箱抱えてんのがケダモノだからな…武器の価値とかわかってねえんじゃねえの?」

昨日の分を含めて、収穫と呼べそうなのは、前にチュッケが教えてくれたシリーズ装備と、少々質が向上した鎧の類くらいだ。

「硬い鎧は助かるけど、その分重たいのがネックだよな…身軽に動けねぇぜ」
「動きを阻害されるのは勘弁願いたいでござるな…それがしは基本的に鎧は好まんでござるよ」

まあキリクやイヅナ、ナナシは機動性重視のがいいわな。オレたちの隊にはいわゆる盾役が居ないから、敵の攻撃は避けなきゃやってられないのだ。

「シノビの技能(スキル)に、幻影を見せて攻撃を逸せるワザがあるけど…今のレベルじゃあまだ覚えられない…」

使えりゃ対フェンリルでもかなり役立ちそうなもんだが…まぁ無いものねだりをしてもしょうがない。使えるスキルをどうこなすか、が勇者とやらに求められてんだろう。知らんけど。

「そういえば〜、アノンちゃんは新しくライフルを手に入れてたわね〜」
「おう。2丁拳銃で撃つより威力は安定しそうで重宝してるぜ」

物が物だから両手が塞がっちまうが、その分両手で違う武器を扱う技量に意識を向けなくて済むから他の技術に注力(スキルポイントの振り分けが)できるのも大きい。

「ディーネは…妖精のリボンとローブが見つかったな。着けてみてどんな感じだ?」

 

ディーネ「なんとなくだけど〜ちょっと魔力が向上した〜かも〜?」

 

「なんとなくだけど〜ちょっと魔力が向上した〜かも〜?」
「なんとなくかよ…」

まぁ、劇的に変わるようなもんがそうそう出てくるもんでもないか。あとは地道に着“(こな)し”て馴染ませていく他ないだろう。

「ん、後はデクじいから頼まれてる“はぐれミミック”退治が残ってる。いこう、みんな」

 

イヅナ「あやつら魔物のくせして逃げ回るから面倒でござるよな…」

 

「あやつら魔物のくせして逃げ回るから面倒でござるよな…」

 

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今日のルーティンワークを無事終えて、勇者ギルドへ帰還する。周りを見ると他の勇者隊も思い思いに仕事終わりを過ごしているようだ。…なんとなく数が減ってるように見えるのはオレの気のせいだろうか?

「実際減ってるんだヨ」

とオレの疑問を見透かしたようにチュッケが呟く。

 

チュッケ「心が折れちゃって部屋に引き篭もっちゃった隊がいくつか…ネ」

 

「何度全滅しても先に進められなくて、心が折れちゃって部屋に引き篭もっちゃった隊がいくつか…ネ」

とはいえそんな彼らを元の世界に帰す手段はない。つーか、あるならとっととオレが帰る。

「仮にも女王サマの肝入りで呼ばれた人たちだし、ムゲにはしないけどね…いつかやる気を取り戻してくれるといいケド」

チュッケには悪いが、そんな奇特な奴はそういないと思う。人の心が折れるってのは、そういうことだ。
…とは口に出さず、残ったハンバーグの最後の一切れと一緒に飲み込んでおいた。

 

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勇者ギルドには、ファンタジーな見た目に反して大体のものが揃っている。
血と汗と埃まみれになる迷宮探索の強い味方である浴室ひとつとっても、サウナから露天風呂、休憩所にはマッサージチェアやらコーヒー牛乳まで至れり尽くせりだ。どうやらオレ達以前に喚ばれた勇者たちが提案してギルドで再現させたものらしいが…どう言う原理で動いてんだか。

「だーいーたーいーはー、魔法ーでー、動いてるーよー」
「マジかよなんでもありだな魔ほ…誰だお前!?」

聞き慣れた声に視線を向けると、見慣れないシルエット。ずぶ濡れの真っ白な毛の塊が動いてやがる…?勇者ギルドに雪男なんていたっけか。

「わ、わーたーしーだーよー!ほらー」

そう言って顔のあたりの毛をかき分けた先で、少し膨れっ面になったウールの黒い顔が覗けた。お前、毛濡れるとそんな感じになんのな…

「おーふーろーはー、好きなんだけどー…毛並み濡れちゃうーのはー、ちょっとだけー、めんどーかなー?」

そう言いながらウールが小ぶりな石ころを取り出した。風と火の魔法力を秘めた魔法石…ギルドの売店で売ってる奴より遥かに低威力らしいが、これでなにするんだ?

「みーてーてー」

ウールがそれを握って魔力を込める。程なくして暖かな風が彼女を中心に広がり、濡れてへたっていた毛をふわふわのそれへと変えていった。なるほどドライヤーがわりか。

「いーいーでーしょー?」

なぜかちょっと得意げである。

「でーもーわたしー、毛が多いからー、これだとまだちょっとー、なまがわきーなのー…」

言われてみれば、なんとなくしっとりしてるような…?

「というわけでー、てつだってーアノンくーん」
「はぁ?なんでオレが」

こう言うのは同性にやらせるのが普通じゃあねえのか。っていうか普段はそうしてるだろうに。

「いーつーもーはー、ナナシちゃんがーてつだってーくれるんだけどー」

あー、不用品の下取りと消耗品の買い出し頼んだから風呂のタイミングがズレたのか。

 

ウール「いーいーでーしょー?ほらー、いまならーモフモフーしほーだいー」

 

「いーいーでーしょー?ほらー、いまならーモフモフーしほーだいー」
「いやお前そーいうの嫌がってなかったっけか?」
「が、がーまーんーすーるーかーらー」

我慢してまで触らせようとすんなよ…

「…くちゅんっ」

と、ウールが小さくくしゃみ。このまま押し問答してたら風邪ひくのも時間の問題か…しゃあねえなぁ。

「ほら、クシとその石貸せ」
「う、うんー!」

なんかやたら嬉しそうに、ウールが道具を手渡した。

「…で、どうやりゃいいんだ?」
「わたしの毛の中にー、手を入れてー、石にー力をー込めてー」
「こう…か?」

少し湿り気を帯びたウールの毛並みに手を突っ込み、握っていた魔法石を発動させる。こう言う使い方は魔法職じゃない奴の持つ弱い魔力がちょうどよく作用するらしい。さっきよりぬるめの風がオレの拳を中心に渦巻き、残った水分を飛ばしていく。浮き上がった毛をクシで受け止めて、ゆっくりと漉いていくと、元のふわっとした毛並みが手の中に戻ってきた。この間撫でた時の感触が蘇る。

「やわらけぇ…」
「ふふー、でーしょー?」

やはりというか本人からしても自慢なのだろう。風呂の時間の7割は毛並みの手入れに費やされるらしい。
右に、左に、温風を回しながらクシを動かす。暖かい空気を含んだ毛並みは、それだけで毛布みたいな感触で、なんならちょっといい匂いもして…

「なんか意外だ」
「どーゆーいーみー?」

おっと、うっかり声に出しちまった。

「んもー…」

呆れたようなウールの声だが、どこか優しさも帯びてるようで。

「乾くまでならー、ふわふわーもふもふーしててーいいよー。ナナシちゃんもー、よくやってるのー」

曰く、手伝ってくれるお礼らしい。要らん、と言いかけて…なんか抗えず、両手を突っ込む。

「ひゃ!」
「あ、わ、悪い…」
「ん、んーんー…ちょっとだけーびっくりしただけー…」

 

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ナナシ「…アノンうじ、ずるい」

 

「…アノンうじ、ずるい」

 

一足遅れて風呂から上がってきたナナシが、頬を膨らませていた。

 

 

   −つづく−

 

 


今回はリザルトと、二次創作パート。むしろ後者がメイン(笑

 

ビスヘイム編はほぼウール回になりそうだなーと思ってたのでここでちょっと攻めてみました。モフモフは魔性だぜ…!
最近ちょっと自律神経やられちゃってるんで、僕自身モフモフが恋しいのです…抗えずオオタチの新作ぬいぐるみ買っちゃったもんねw

リザルトとしては、文中の通り妖精シリーズがほぼ一揃い。ヒイラギシリーズはまだまだ遠い…というか、妖精のローブがダブったのでウールに着せてます。無いよりマシ。
後はガンナー装備で両手持ち武器が出てきたんで、思い切って二刀流スキルを外して他のスキルにポイントを振る作戦。多分これより強い武器はビスヘイムでは出てこないだろうしなぁ。ランクが高いのが出てくる可能性はあるけど。

いや、っていうかほんとに宝箱ランクに中身が見合ってないんすよ…デミへイムをSランククリアしたことで宝箱ランクが上がって、AランクがSランクに変わってくれるのはいいんだけど…ねぇ?
他のエクスペリエンス作品みたいに1回のアタックでガンガンハクスラできるわけじゃないから、こういうプレイの仕方してると集まりが悪いんだよ…デモゲ2のリプレイみたいに1日3回アタックできるようにしときゃ良かったかな?

まあアレはアレでプレイ時間間延びしちゃうって罠があるんだけども💧