「あなたがデモンゲイザー?ふぅん、思ったより貧相ですのね」
ミュゼに呼ばれて支配人室を訪れたラッキーは、とげ付きの開口一番に迎えられた。
「まぁいいわ。私はカプリコーン…我が槍にかけ、勝利をお約束いたしますわ」
新たに仲間になったデモン・カプリコーンはひらひらとしたワンピースの裾を翻して自信満々な笑みをラッキーへと向けた。
「…あ、そういや昨日魂をミュゼに預けてたっけか」
「忘れてたんですの!?しっつれーな方ですわねまったく…」
「悪ぃ悪ぃ、あのあといろいろあってな」
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「さて…改めて自己紹介いたしますわ。私はカプリコーン。槍遣いとして、デモンゲイザーの力となりますわ」
2階の相部屋にて、カプリコーンを加えた面々でミーティングを行う。
「おう、よろしくな。えっと…リコ」
「リコ?」
「長くて呼ぶの不便だからな。カプ“リコ”ーンで、リコだ」
カプリコーンが、「リコ…」と反芻するように繰り返す。
「あー、ヤならちゃんと呼ぶけど」
「い、いえ!リコでいいですわ!」
食い気味に肯定を受け、ラッキーは思わず後ずさりながら頷いた。
「…むぅ」
「ん?どうした、ライブラ」
「…べ、別に…」
と言いながらも口を尖らせたままのライブラに、首をかしげるラッキーであった。
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ステラ座の西にある、大星堂。この近くにも禁域が存在するという。
「灯の霊廟…まぁ、いわばお墓ですわね」
かつての古代文明の王族の墓…とも言われているらしいが、詳しいことは不明だ。誰も調べていないから、だそうだが。
「ここを担当しているのはレオというデモンね。すばしっこくて相手の攻撃をひょいひょい避けて、逆にビシバシ当ててくる厄介な奴よ」
竜樹の夢について詳しかったライブラ同様に、カプリコーンが妙に詳しい。彼女もここの担当が良かった、とかなのだろうか。
「…別に、そういうわけじゃありませんけど。ただ、気高い王族の陵墓を守るのは、気高い騎士であってしかるべき…そう思いませんこと?」
「…ああ。やっぱここが良かったんだな」
「そーいうわけじゃありませんっ」
顔を真っ赤にして反論するカプリコーンをあしらいながら、ラッキーが歩を進める。
「って、足元ちゃんと見なさい!」
「あ?…うぉっと」
カプリコーンに襟元を掴まれ引き寄せられる。華奢な腕のわりにすげー怪力…と思いつつ言葉には出さないラッキーの足元で、熱せられた鉄の床がぐつぐつと湯気をたゆたわせていた。
「なんじゃあこりゃ…」
「灯の霊廟って言われているのは、こーやって熱せられた鉄の床から火の粉が上がっているからなの。下手に踏んだら大やけどよ。警戒なさい」
「お、おう…サンキュなリコ」
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「ああっ、クソ!攻撃の通りが悪すぎるッ!」
サークルを探しているうちに魔物に襲われ迎撃するが、手応えがどうにも弱い。
「この禁域には、不死者…つまりアンデッドが多くいるようですね。彼らは普通の武器では効果が薄いです。不死者に特化した武器を探さないとですね」
「あとは魔法も有効よ。ライブラ、見せ場作ってあげるから存分にやって見せなさい」
自信満々なカプリコーンだが、彼女も仲間になったばかりにライブラ同様、力は初期値に戻ってしまっている。カプリコーンの力を取り戻すのも、今回の探索の目的の一つだ。
「あなたも無理はしないようにね、カプリコーン」
「あらライブラ、せっかくリコって呼び名貰ったんだから、そう呼んで欲しいわね」
「…わかったわ、リコ」
ラッキーに付けてもらったあだ名を、カプリコーンは存外気に入っているらしい。ご機嫌な彼女に対して、やっぱりどこか不機嫌な表情を見せるライブラの温度差に、ラッキーは少し首を傾げた。
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「さて、これで5つ目のサークルか」
先んじてラッキーが魔眼で感知していたサークルは6つ。ここを制圧すればあと1つだ。
「ってことはそろそろ…むっ」
ジェムを仕掛け魔物をおびき寄せると、周囲の空気が変わった。デモンが出現する予兆だ!
「へっ、来やがったな!オレの名はレオ!」
出現したのは独特な着流しを纏った少女のデモンであった。頭にぴこぴこ揺れる獣の耳が印象的だ。トマと同じネイ族なのだろう。
「てめえらと話すことなんざねえ!いざ、尋常に勝負しやがれッ!!」
言うが早いか、一息にラッキーに肉薄し、抜き放った刀を素早く叩き込む。
「ンなろぉっ!」
ラッキーが即座に刀を抜き打ち、斬撃を阻んだ。
「…へえ!」
初撃を防がれたレオの表情が明るくなり、跳び退いて間合いを取りなおす。
「へへっ…アンタもカタナを使うのか。面白くなりそうだぜ…!」
「面白えかどうかは、てめえで確かめな…ライブラ!」
「承りましたっ!」
相手がラッキーに注目した隙を、ライブラがファイアボルトで射抜く。
「はあっ!」
しかし、レオの一刀のもとに火球は斬り払われてしまう。
「デタラメかよ…ライブラ、魔力は?」
「すみません、あと一発撃てるかどうか…魔力回復の技能は覚え直したんですが」
「アンデッド相手にバカスカ撃ったのがアダになったな…しゃあねえ、道具で俺たちのフォローに回ってくれ!」
そう言ってラッキーは魔眼の力を解き放つ。トランスデモンの発現だ。
「ペガッソ!リコ!あいつの相手は俺がする。どうにか縫い付けとくから、タイミングを見計らって突っ込んで来い」
「はーい!」
「わかったわ!」
星の力を刀身に纏い、ラッキーは新手のデモンを見据えた。
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「畜生!やるじゃねえか…!」
鍔迫り合いを崩されると同時に、ペガサスとカプリコーンからの突撃をまともに浴びせられ、レオがようやく膝をつく。
「だが、まだビビってんな…?どいつもこいつも万全じゃあねえ…そうだろ?」
ボロボロになりながらも優位は崩させないレオ。事実、4人がかりでようやく押し切れたようなものだ。いちばんレオと斬り結んでいたラッキーも、仲間のフォローがなければ数合で落ちていただろう。
「もっと奥まで来てみやがれ…そしたら今度は、骨ごとぶった斬ってやるからよ!」
ギラギラとしたレオの視線がラッキーの魔眼を捉える。
「特にてめえだ、カタナ使い!さっきよりつまんねー戦い方したら、素っ首叩き落としてやっからそう思いな!」
そう吐き捨てて、ネイ族のデモンは音もなく姿を消すのだった。
ーつづくー
ワンダーデモン戦は4ターンクリア。ここまでにカプリコーンのスキルが生えなかったのもちょっと苦戦要素ですな💧リバティスキルはパッシブの「反撃」にしちゃってたし。
メンバーのレベルアップと神器集め含めて、数日分ダンジョンアタックに費やす予定。
いままで番外編にしてた小ネタは、この合間に「◯日目」枠で書こうかなと。モン勇リプレイと同じノリで。