「クワガタオージャーの力が…奪われた…?」
床に転がったまま呆然となるギラだったが、はっと我に返り、同じく転がったままのオージャカリバーを拾い上げる。
「王鎧武装!」
今一度クワガタのレバースイッチを起動するが、乾いたギア音だけが耳朶を打った。
「王鎧武装できない…!?」
「ああ。この俺が奪ったからな。今やその剣は単なるハリボテだぜ?」
勝ち誇ったように、エクスギーツが嗤う。そのさまを睨みつけたギラは、一足跳びに駆けて真紅の鎧に斬りかかった。
「ああああっ!」
「っは!」
大きく振り下ろした一撃は、しかしエクスギーツが取り出したキングスウエポンに阻まれる。
「ほう…こりゃあいいな!」
「返…せっ!」
ガムシャラに剣を振るうギラ。そのすべての斬撃が防がれ、躱され、いなされていく。
「どうした?精彩を欠いているぞ?剣を振るうときは身体は熱くとも心はクールたれ…そこのドゥーガが教えてなかったのか?」
再び地面に転がるギラに、エクスギーツがキングスウエポンの必殺シーケンスを発動する。
-OHGER SLASH!-
斬撃がギラめがけて飛ぶ。とっさにオージャカリバーで受け止めるが、力及ばず剣圧に押されカリバーを弾き飛ばされてしまった。
「うわぁっ!?」
「さて…勝負あったかな…む?」
ギラの悲鳴と轟く衝撃を受け、群れる足音が謁見の間に向かっているのが聞き取れた。
「やれやれ…王様の危機だってぇのにようやく衛兵のお出ましか?ちと平和ボケし過ぎちゃあねえかい?」
果たして現れた数名の兵士は、地に伏せる王の姿と、王様戦隊の装備をまとった不審な仮面の男を見比べて絶句する。
「な…何をぼさっとしているか!早くギラ様を安全なところへお連れするのだ!」
我に返り前に出たドゥーガの檄に「は、はっ!」と応えた衛兵がギラの元に駆け寄ろうとしたその時…
──ガン!と床を鳴らす音が響く。いつの間にかギラが取り落としたオージャカリバーをエクスギーツが掴み、その切っ先が床を衝いたのだ。
「衛兵に告ぐ」
…と認識した瞬間、エクスギーツの声が謁見の間に響き渡る。
「その男は我がシュゴッタムに弓引く反逆者である。直ちに拘束せよ!」
凛とした声が兵たちの耳に届いた瞬間、雷に打たれたかのように震え上がった兵たちは、一斉にギラの方を向き、彼を取り囲んだ。
「えっ…ちょっ、なんで?」
「血迷ったか!?拘束すべきはそこの仮面の男だろう!」
ギラとドゥーガの呼びかけには一切反応せず、じりじりと間合いを詰めてくる。
「言ったろう? オマエの力と、王権を奪った…ってな。今やこの城の兵すべてが…俺の意のままだ」
「そんな…っ!?」
「さて…そこで元王様をかばってるドゥー坊…オマエも我が意に従え。その反逆者を捕らえろ」
ギラがドゥーガに視線を向ける。それに気づき、彼は小さく頷くと毅然と喝破した。
「断るッ!」
「…何?これは王命であるぞ?」
「私が使えるべき王はこのチキューにただ一人…ギラ様だけだ!」
言い放つドゥーガの姿にギラは目を輝かせ、他方エクスギーツは小首をかしげてみせた。
「ふぅん…王権を行使するにも限界があるのか。存外使えねえな…まぁいい」
そう言ってエクスギーツはさっと手を挙げる。
「そこの男もまとめて捕らえろ。抵抗するなら…腕の一本や二本落としたって構わん」
その“王命”に、取り囲んだ兵士たちが一斉に抜剣した。鈍く光る切っ先が、明らかに敵意を向けているものだとギラは察する。
「…ご安心をギラ様。いざとなればこの身を投げうってでもこの場から…」
「だめだよそんなこと言っちゃ!」
しかし、状況は誰の目にも明らかなほど悪い。王鎧武装できないとはいえ、唯一の武器であったオージャカリバーは今や賊の手の内にある。
(万事休す…どうすれば…?)
「おっとぉ…なにやらキナ臭い気配を感じて地上に来てみれば…取り込み中かい、ギラ?」
謁見の間に、少々間延びした声が響く。
「…何者だぁ?」
エクスギーツが視線を上に向けた次の瞬間、
「うわっ!?」
「なんだ!?」
突如ギラとドゥーガの二人を中心に白い煙が吹き上がった。
「煙幕!?姑息な…!」
エクスギーツは咄嗟にキングスウエポンを銃形態へと変形させて銃撃する。兵士たちの間を縫って撃ち込まれた銃弾は、しかし手応えも相手の悲鳴も呻きももたらさない。
-HAHAHAHA…FAKE!-
小馬鹿にしたような声とともに不意に煙が晴れる。エクスギーツが視界を取り戻したとき、ギラとドゥーガの姿はそれこそ煙のように掻き消えていた。
「逃がしたか…他の国に協力者でもいたのか?…まあいい、どうせ今のヤツに、この国を取り戻すことなどできはすまい。それより…おい!」
標的を見失い呆然と立ち尽くす兵の一人に声をかける。王命が更新されたからか再起動したように目を瞬かせた彼の襟を掴み、その階級章を読み取る。
「貴様兵士長だな?よし、今から他の兵士長とともに場内の兵士を全員集めろ。今から──」
──楽しい楽しい、軍略会議の時間だぜ…?
エクスギーツの高笑いが、キングコーカサス城の謁見の間にこだました。
→To Be Contend…→
プロローグはあと1回やります(プロローグとは
さて、今回のオリジナルライダー兼ヴィランの一人である仮面ライダーエクスギーツについて。
Twitt…もといXでもつぶや…いやポストしたとおり、ギーツの色違いさんですが、実は本作の執筆企画を出した最初期は、ギーツ顔にする予定はありませんでした。クロスオーバー先が昆虫をモチーフにしているキングオージャーなので、その昆虫を食べる天敵となる動物をセレクトしてたんですね。
というわけで白羽の矢が立ったのがカラス。クワガタムシとかカブトムシが、たまに頭だけで転がってるの見たことありません?あれカラスが腹だけ喰った残骸らしいです。
名前も「仮面ライダーグロウリー」に設定するなど、ギリギリまでこれにしてたんですが…映画「4人のエースと黒狐」に登場したクロスギーツ、そして放送終了後に情報が出たVシネクストでの敵がギーツ(もしくはギーツ顔?)らしいという話を聞いて「じゃあいっそのことこっちの敵もギーツにして英寿をうんざりさせてやろうか!」という悪魔のささやきを得た結果、こんな感じに…。まぁクワガタオージャーの装備をまとう関係上、カラスだと首から上が真っ黒でだせえな…とも思ったので、これはこれで結果オーライだったのかもしれませんね。別に絵を描くつもりはないんですが(ぇ
ちなみに英語表記だと「EX GEATS」になって、Xギーツとも少しカブる形になります。このへんはちょっと意図的。イクスかエクスかでちょっと迷ったくらい。
変身者についてはまた追々。ドゥーガさんと因縁?がありそうな人物としてはすでに出していますが、はてさて…?