ゼイユたちが帰ってから…昨日は一日、林間学校の仲間たちとオモテ祭りで遊び倒し…
「…そう、楽しかったのね。林間学校」
「うん!」
まだキタカミの里に残るという彼らと別れ、ぼくは一度パルデア…自分の家へと戻っていた。
「それにしても、最初に貰ったニャオハがもう進化しているなんて…子供もそうだけど、ポケモンの成長も目覚ましいわねぇ…」
「うかうかしてたら置いて行かれそうだよ」
母さんへのお土産話に花が咲く。
「そういえば、お父さんがキタカミ出身だって知ってびっくりしたよ!」
「あら、言ってなかったかしらねぇ?」
「聞いてない聞いてない…あっちに子供のころの父さんを知ってる人がいてね。よろしくって言われたけど…」
「いつ帰って来るのかしらねぇ…うちの放蕩パパさんは…」
盛大にため息をつく母さんであった。
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「アカデミーや林間学校で友達はできた?」
「うん。お向かいさんちのネモもそうだし、ペパーって先輩とか、あとあんまり話したことないけど、ボタンって子も。林間学校でも…」
結局、あの日以来顔を合わせることは無かった友達の顔を思い出す。ゼイユは気にしなくていいって言ってくれたけど、半ばケンカ別れ…とは言えないにしても、それに近い別れ方をしてしまったのは、ぼくの胸に少なくないしこりとして思い出の中に刺さっていた。
「…あらその反応は…林間学校で好きな子でもできたかしら?」
「うえっ!?」
母さんの一言で、一瞬ゼイユの顔が浮かぶ。
「い、いやゼイユとはそんなんじゃなくって…」
「へぇ、ゼイユっていう子なの?どんな子?写真ある?ねぇねぇ、ママに教えてよ〜♪」
「うあ…」
口が滑ったなんてもんじゃない。しばらく母さんにそのことで散々いじられるぼくなのであった…
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「ところで…いまアカデミーでは課外授業をやっているのよね?」
ひとしきり肴…もといお茶請けにされたあと、母さんが思い出したように言う。
「うん、宝探しっていうんだ」
「パルデア中を旅するなんて素敵ねぇ…ヒイロはもう、宝物見つかったの?」
「さすがにまだ始まったばかりだよ?まだ見つかってない…けど」
━━やりたいことは、見つかったかも。
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「…おや、どうしましたヒイロさん?」
アカデミーに戻り、校長と面談をする。しばしば生徒とのコミュニケーションをはかっている校長は、わりと簡単なアポですぐに会いに行けるのだ。
「宝探しのことで相談ですか?いくらでも乗りますよ、ええ」
「宝探し、といいますか…あの…"パルデアの大穴"って、どうやったら行けますか?」
ぼくの口から出てきた単語に、校長は一瞬驚いた顔をして…ズレた眼鏡を直してから大きく呼吸をした。
「冗談で言っているわけではなさそうですね」
こくりと頷く。
キタカミの里での、オーガポンとともっこにまつわる一連の出来事の中で、ぼくは歴史や伝承というものに強く興味を持ち始めていた。
この世界には、ポケモンという不思議な生き物がいて、彼らを主役とした伝説や伝承が数多く存在する。そしてそれらは、大概の場合事実なのだが…ときにキタカミの里での一件のように、大きく異なった伝わり方をすることもある。ぼくはそんな伝承や、その真実を突き止める人になりたいと思ったのだ。そしてパルデアには、これ以上なくうってつけのスポットがあるわけで…
ちなみにこの話を母さんにすると…「血は争えないわねぇ…」としみじみつぶやいていたっけ。
「…御存知の通り、アカデミーの校則によってパルデアの大穴への、あなたがた生徒の立ち入りは原則禁止となっています」
理由はしごく簡単。端的に言えば、非常に危険なのだ。
「なのでその行き来は、パルデアのポケモンリーグによって厳重に管理されています。つまり、ポケモンリーグからの許可が必要になるわけです」
そういえばブルーベリー学園のブライア先生もポケモンリーグに許可申請を取っていたという話を聞いたっけ。通ったかどうかまでは知らないけど。
「もちろんリーグが許可を出す以上、危険な大穴の出入りを可能とするほどの実力の持ち主であることが第一条件ですね」
つまり、ネモと同じチャンピオンランクまでは上がらないといけないだろう。
「当然、あなたがともに戦うポケモンたちも強くする必要があります。それはあなたが連れている子たちだけではなく…オーリム博士から託されているコライドンもそうです」
ただ、コライドンはまだ戦うことができるまでに回復していない。このあたりも課題の一つだ。
「まぁ、身も蓋もない言い方をすれば…誰にも文句を言わせないくらい強くなりましょう、ということですね」
「本当に身も蓋もありませんけどね…」
あはは…と苦笑するぼくに、校長はニヤリと笑って見せる。
「誰もが自分だけの宝物を目指す。…それが、私がみなさんに課した課外授業です。あなたの目指すあなただけの宝物が、もしも大穴にあるのなら…ぜひ目指してくださいね。きっと、あなたのお友達が、その道しるべになることでしょう」
はっと思い出す。ネモに誘われたジム巡りや、ペパーが求めるスパイス探しは、これからのぼくの力になる…のかもしれない。それは多分、スター団との戦いの中でだって…
「…私個人としては、大事な生徒にあんまり危険なことはやってほしくないんですけどねぇ」
ぼくの心を見透かしたかのように、校長が苦笑いした。
-つづく-
今回はDLC前半と本編を繋ぐ、インターミッション回ということで。ほぼ二次創作ですねー。登場人物がママと校長しかいないというバグw
とりあえず主人公の目標、というか夢?が少し出てきました。
ポケモンGOやってた時のアバターで思い描いていた、「ポケモン冒険家」というのをイメージしています。各地のポケモンにまつわる伝説や伝承を調べる考古学者みたいなもんですね。あ、シロナさんのご同業か。
実はもう一つ目標があるんですが、まぁその辺は追々。
さて、本作の重要ポイントである「パルデアの大穴」。
入るためには、メタ的には提示されている3ルートのクリアが必須ということで、その辺をちょっと物語に落とし込んでみました。対外的?には学生は大穴には入れない、程度の情報しかないですしね。少なくとも序盤では。
さて、まずはどこに行くかな~?