「おつかれさん、ヒイロ~」
フリッジジムでのバトルを追えてオフィスに戻ると、四天王のチリさんがいた。
「いややなもー、チリちゃんでええって。それよっかジム巡り、調子ええみたいやん?」
「ええ、おかげさまで7つ目です」
「ほへー、ええペースやん。あと1個か!」
チリちゃんさんと雑談をしていると、足元から視線を感じた。小さな女の子がチリちゃんさんのスラックスを引いて、「この子だあれ?」と聞いている。
「ん?ああ、君ら初対面やな。このお兄ちゃんはヒイロ!トップもご執心の強い子さんやで~」
間違いではないとは思うけど、改めて言葉にされると照れくさいな…
「あーら、あらあら…!ポ、ポピーも、とても、つよいとおもいますけど…」
「せやねー。ポピーちゃん四天王やもんねぇ…でも、このお兄ちゃんもメキメキ強ぉなっとるからなぁ…今はポピーちゃんでも、いざ全部バッジ取って挑みに来たらどうなるやろ?」
…って、え?この子四天王なんですか!?
「アッハッハ!そうなんよ。ビックリしたやろ~?多分全世界のポケモンリーグで最年少やろなぁ」
「ポピーのポケモン、おにーちゃんにはやく見せたいです!」
ポケモンリーグでの再会を約束して、二人はジムオフィスを後にした。
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フリッジタウンからナッペ山を下り、北2番エリアへ。この先に最後のスター団アジトが…
『…最後のアジトがもうすぐだな』
カシオペアからの通信だ。スター団かくとう組、チーム・カーフ…ぼくが戦う最後の相手だ。
『よくここまで戦ってくれた。感謝する、ヒイロ。それからネルケにも…』
最初は彼のことを疑っていたらしい。まぁ気持ちはわかる。
『彼との付き合いは長いのか?』
「うーん…長いような短いような…」
『…よくわからないが、信頼関係はあるようだな』
まぁ、悪い人じゃないから…うん?
『どうした?』
「いや、ゲートでなんだかもめて…あれ?背の高い人が…」
『まさか…ヒイロ、ゲートへ急いでくれ!』
カシオペアにせかされて、ぼくはゲートにむけて走り出した。
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ゲートの前で、ネルケが誰かとポケモンバトルをしていたようだ。アイドルのような衣装を身にまとった…え、顔怖っ!背高っ!?
『バカな…ビワ姉!?』
カシオペアの声が驚愕に震える。え、じゃああの人がここのボス?いや、ボスって基本表に出て来ないんじゃ…
『いや…彼女の性質ならありえない話じゃあないが…ともかく、接触が可能ならここで終わらせてくれ!』
「わ、わかった!」
しかし、丁度出てきた団員が彼女を諭して、ゲートの中に押し込んでいってしまう。
「あんたたち!ここからはわたしが相手するわよ!」
タナカと呼ばれた女性団員がモンスターボールを構えた。
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タナカさんとのバトルを制し、いよいよゲートを開ける。
「…ヒイロさん、カシオペア。貴方がたのおかげで、スター団を少しずつ理解できました。私がなすべきこと、そして下すべき決断も…」
くれぐれもお気をつけろですよ!と珍妙な言い回しで背中を押された。さぁ…ゴングを鳴らそう!
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屈強なかくとうポケモンたちとの乱取りを終わらせると、いよいよ聞きなれたエンジンの爆音が響く。
「誰であれ何であれ、スター団を狙うというなら…砕くだけ!」
スターモービルの上に立つのは、遠目からでもはっきりとわかる長身…チーム・カーフがボス、ビワだ!
「ここはわたしたちの場所…これ以上荒らさせはしない!ドグロッグ、リングイン!」
「カナヤマヒメ、よろしくね!」
いま再び、ゴングが鳴る。
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巨大なハンマーとコノヨザルの拳がぶつかり合う。砕かれる前に圧し潰し、弾き飛ばしてノックアウトだ。タイプ相性の問題も多少はあるけれど、これくらいなら…まだ!
「まだ…タオルは投げられない…!力を…貸して!ブロロローム!!!」
最大にして最後の敵がリングに上がる。だったらこっちは…!
「カナヤマヒメに、羽撃く輝きを…テラスタル!」
「ひこうタイプのテラスタルだと!?そのためにここまで鋼タイプを温存していたのか!?」
「手持ちに鳥ポケモンがいなかったからね!このまま押し通るよ…"テラバースト"!!!」
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「…あなた、強いのね」
機能を停止したスターモービルから降りて、ビワさんが素直に握手を求める。かくとう使いゆえかスポーツマンシップの持ち主のようだ。ダンバッジも受け取って…ひとまずは任務完了ってところかな?
「終わったようだな」
ネルケがタナカさんを伴って戻ってきた。彼女はもともといじめっ子側の人間だったらしい。スポーツ特待生としてやって来て、人気をかっさらってしまったビワさんを疎ましく思った彼女は嫌がらせをしてきていたが、あるとき自分がいじめられる側に移ってしまった。そんな彼女を救ったのが…ほかならぬビワさんだったのだという。
「私たちの大切な宝物を…奪わないで」
緊張の糸が途切れ、静かに涙を流すビワさんの背を撫でながら、タナカさんの悲痛な声がいやに耳に残った。
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『これで、すべてのボスがその座を降り…そう遠くないうちに団を抜けるだろう』
アジトを出た先で、カシオペアと話す。じきにボスやしたっぱたちも不登校を辞めてアカデミーに帰ってくれるはずだ…たぶん。
「そういえば、そろそろボタンが報酬を届けに来る頃かな?」
「…いや、オレですまねえな」
「ネルケ?」
今回はネルケが補給班も兼ねているらしい。いつのまに受け取っていたんだろうか。
「それが、ネルケ宛に校長室に届けられ…い、いや寮のオレの部屋にだな…」
『さて、いよいよスターダスト大作戦も最終段階…残るターゲットはただ一人、マジボスだ』
トップであるマジボスを倒せば、スター団は完全に崩壊…解散させることができるだろう。でも、どこにいるんだろうか…?
『…安心してくれ。マジボスを探す必要はない。ヤツの正体は…この私だからだ』
カシオペアの無機質な声が、淡々と事実を告げた。
-つづく-
スターダスト★ストリート、いよいよ佳境。
マップで見た瞬間の感想はもう「やべーやつ」一択ですし、回想シーンで女性と判明して「どういうことなの…」ってなる子ですよね…💧
かくとうタイプの有利を獲れるのはエスパーやひこうですが、この時点でどちらも手持ちに居ないんですよね。キタカミの道中はファイアローがいましたが。
たまたまレイドでゲットしたカヌチャンがひこうテラスだったのはこれ幸い。テラバーストありきですがw
念のためにオーガポンにもエスパー技(しねんのずつき)を覚えさせてはいましたが、ブロロローム戦はデカヌチャンに譲る形に。見せ場を作るのもなかなか大変です。
次回以降はネタバレ注意!よろしくどうぞです。