ナッペ山はパルデア地方における文字通りの最高峰。そこには残る2か所のジムが存在するわけなんだけど…ベイクタウンから陸路で西回りで向かおうとすると、その前にアジトが立ちはだかる。
ぼくはスター団にカチこみをかけるスターダスト大作戦の実行メンバーとして面がているので、うかつに近づいたら目を付けられかねない。
「というわけで、先に終わらせてしまおうってことか?」
合流したネルケに渋い顔をされた。
「…ときに、ヒイロ。お前さん、カシオペアのことをどう思ってる?」
「どうって…悪い人じゃないとは思うけど、それ以上は…」
「だろうなァ。オレも、カシオペアがスター団を恨んだり憎んだりしてるとは思えなくてよ…お前さんも、悪人じゃないと思ったからこそ、こうやって手を貸してんだろう?」
その感覚、大事にしなさいね?とネルケが少しだけ素を見せた。
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アジトのゲート前では、前のどく組と同じように、スター団とは思えない人が門番となにやら会話をしていた。門番曰く、アカデミーの元校長で、今はこのアジトのボス・オルティガの教育係のようなものをしているらしい。…不良グループってなんだっけ?
『…細かいことは気にしないでくれ。スター団にもいろいろな人間が集まっているということさ』
門番が仲間たちに報告に向かったところで、カシオペアからの通信が入った。
『あらためて…今きみがいるのはスター団フェアリー組、チーム・ルクバーのアジトだ』
オルティガはボスメンバーでは最年少らしいが、かなりの腕利きらしい。はかないイメージのあるフェアリータイプのポケモンでトップに立てるのならそうなんだろう。こっちも気は抜けない。
さぁ、ゴングを鳴らしてカチコミ開始だ!
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最後の一匹を蹴散らしたのと同時に、スターモービルを動かすブロロロームの爆音がこだまする。なんかちょっと早い気もするけど…とにかく来た!
「へー…ふーん…オマエがヒイロなんだ…。ショージキ予想外だよ。もっとゴツいの期待してたのに」
予想外と言えば、ぼくの方もだったりはする。まさかぼくより年下のボスが出てくるとは思わなかったし。
「フン!見た目で侮ったら痛い目に合うんだ!それはフェアリータイプだって同じ!」
手の中で遊ばせたボールを握りしめ、不敵に笑って見せるオルティガ…くん。
「かわいがってやるから、吠え面かいて帰れよ!出てこいマリルリ!」
「水タイプか…ようし、行っておいで、ぴろ!」
くしくもキュートなポケモン同士のバトルが始まることとなった。
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「うっそだろ…見慣れないノーマルタイプで、なんでオレが追い詰められてんだよ!?」
「がんばって育ててるからね!でも、それは君だって一緒でしょ?」
「う、うるっさい!力の差を見せてやる!起きろブロロローム!フェアリータイプのかわいくないとこ、見せつけてやれ!!!」
スターモービルが生き物のように…いや実際生き物なんだけど…吠え猛り、ぴろをにらみつける。
「このままごり押しさせてもらうよ!まとえテラスタル!ぴろ、"ギガインパクト"!!!」
強烈な一撃が、車体を貫いた。
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「ちくしょう!負けて悔しいのに…オマエを認めてるオレもいる!」
天を仰いでいたオルティガくんが、どすどすと足を踏み鳴らしながらぼくに近づく。
「負けたらボスを降りる…掟を破るのは、団に対する裏切りだもんな…ほら、受け取れダンバッジ!」
それでも悔しさは抜けきらないのか、半ば投げつけるようにバッジをよこすオルティガくんだった。
「…オルティガぼっちゃま、おわったようですな」
「あ…爺や」
と、ゲートにいた老紳士がネルケとともにやってきた。
「ちょいといいかい?オルティガといったな…たしかアパレル会社の御曹司だったと聞くが…そんなあんたがなぜスター団に?」
「…初対面でいきなり失礼な質問ぶっこんでくるね、なにその時代遅れな髪型」
「時代遅れ…!?」
ネルケが目に見えて凹んだ。
「…そんなの、他の団員と…ボスたちと一緒さ。オレも、いじめられてたから…」
「でも、アカデミーでそんないじめみたいなの見たことないけど…」
「ヒイロは最近転入してきたんだろ?じゃあ知らないのも無理はないよ。今の学校は平和そのものだし」
オルティガくんの言葉に、「ここから先はわたしが」と爺やさん…ことイヌガヤさんが続いた。彼はネルケ…もといクラベル校長の前任の校長先生だった。
イヌガヤさんによると、スター団は1年半前に自分たちをいじめていた生徒を相手に騒動を起こしたのだという。その結果、いじめを行っていた生徒たちは全員学校を去っていったのだ。
「だが、そんな記録アカデミーには…!」
「ありませんでしょうね。記録は当時の教頭が全て処分してしまいましたので」
大事にこそならなかったものの、多くの生徒が退学することとなりその対処に頭を抱えていた当時のイヌガヤ校長は、ひとりの生徒に出会う。その生徒は、団の責任はすべて自分がとるとして…その引き換えに仲間たちの処分の免除を願ったのだという。
結果スター団の面々は処分を免れ、責任を負った生徒は退学…にはならず、イヌガヤさんの計らいで留学、という体でガラルの実家に戻っていたそうだ。
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『…しかし、当時の教頭は事件が明るみになることを恐れ事件の情報をすべて削除して隠ぺい。それを知ったイヌガヤ前校長は教頭を処分し、自らも校長を辞め、そして教師陣も一新させられたのだ』
オルティガくんたちと別れ、ゲートの外でその後の話をカシオペアから聞く。
『一方のスター団も、無事では済まなかった。いじめっこに立ち向かったという話は聞いたと思うが…実際のところ、連中は戦いすら放棄して逃げ出した。スター団を恐れた彼らは次々と学校を辞めていき…そのせいで団員たちは周囲に悪い影響を持たれてしまった、というわけだ』
「…つらいね」
『…ヒイロが気に病むことじゃあないさ』
そんなことがあってもなお、仲間たちは結束してマジボスを待ち続けていた。きっと、彼らの責任をとって一時学校を離れていた人物こそがマジボスなのだろう。そしてそんなマジボスや、仲間たちと過ごした日々が彼ら…オルティガくんたちにとって宝だったんだ。
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「へー…スター団、そんなことがあったん」
到着と同時にコライドンにしっちゃかめっちゃかにされたボタンだったが、もう慣れたもので(それでも文句は言っていたが)、報酬の素材を渡しながらここまでの情報を聞く。
「いじめをなくしたかったのに、今じゃ自分が恐怖される側とか…マジうける」
先生も生徒もバカばっか…とボタンが低くこぼす。その声は何かを押し殺してるようにも見えて。
「…スター団なんか作っちゃって、マジボスってのもきっとどうしようもないアホだね」
「…そうかな?」
ぼくの疑問に、ボタンは「…そうだよ」と絞り出すようにつぶやくのだった。
-つづく-
仕方ないと言えばそうなんだけど、オルティガくんの手持ちがスターモービル除けばフェアリー単なのパウッツェルだけなのよね…なので最初フェアリー対策でどくスタルのグラエナかはがね持ちのデカヌチャン出そうと思ったんだけど、初手がマリルリってのもあったのでそのままかみなりパンチのオオタチで攻め倒したという。
スター団は授業に出ていない関係上テラスタルオーブを持てなくてテラスタルはできないんだけど、実質最後に出すブロロロームがテラスタル枠なんだよね(ゲーム上の処理がそうらしい)。いずれ再戦時とかでオーブ貰ってテラスタル切るスター団ボスズを見てみたいんだけどなぁ…
ところでバウッツェル、ほのおとの複合でもよかったんじゃないすかね…?